手がかり
翌日以降、ソフィアとリーゼは国側と話し合いを行うことに……交渉については主に帯同した政府高官がやるわけだが、代表者である彼女達もまた参加というわけだ。
ただまあジイルダイン側については、リーゼはいるけど他に人員もいないため詳細な協議は難しく、基本的にバールクス王国とリーベイト聖王国が交渉を行っているわけだけど。
ジイルダインとしてはまずは足がかり、といった感じで終わるかな……さすがに二国間交渉ではなく三国間の交渉ともなれば、混乱するだろうしまとまるものもまとまらなくなる。よって、リーゼはあくまで脇役。主役はあくまでソフィアという形みたいだ。
で、俺の方だが……ひとまず城に滞在して、まずは案内を受ける。城の構造も頭に入り、なおかつエメナ王女から、情報として資料をもらった。昨日のうちに既にとりまとめており、まさに有言実行した形だ。
エメナ王女は旅の準備に入っており、会うことはできないのだが……資料の量はかなりのもの。下手すると一睡もしていないのではと思うくらいの作業量なのだが……そもそも王城内で誰が敵かもわからない状況で人手を募るのは難しいだろう。ましてや夜の内にとなればなおさらだ。従者のジャックの手を借りたにしても、相当厳しいと思うのだが……彼女は見事にやりきっている。ここは感服する他ない。
あるいは、自分の命が危ないということで、必死になったか……そういった部分も、大きいだろうな。
「さて、と」
俺は部屋に戻り、資料を精査することにする。まずはこのリズファナ大陸の地図から。バールクス王国にあった物よりも遙かに精査で、地形などの詳細がわかるようになったものだ。
「すごいな、他国の地形についても、情報がある……これは互いの国同士が協力したのか、あるいは他に何か理由があるのか……」
前世には世界地図はあったし、他国の都市名くらいはわかるのだが……基本的に地図というのは軍事機密に該当する。国内の地形などについては当然知っていなければならないので、各国は正確な地図を作成するわけだが……それが外部に漏れてしまったらまずいことになるわけで……けれどこの地図はリズファナ大陸内に存在する全ての国……その地形が記されている。
それに加え、数々の地理情報など……観光ガイドとかではわからないような点も記載された資料についても存在している。
「ありがたいけど……うん、調べるには十分な情報か」
あとメモ書きが残されており、資料については頃合いを見計らって回収するとのことだった。侍女とかが部屋には入るので、その対処法なども細かく記されている。なんというか、頭の下がる思いだ。
まあ彼女としても必死なのだと理解できるけど……地図を手に取る。潜伏できそうな場所とかを探すには打って付けだが……俺達が本来求める目的に沿う資料かどうかは、精査しないといけないな。
「星神のことを知るため……例えばどこかの大図書館に情報があるとかなら、まだわかりやすいのかもしれないけど」
とりあえず、候補となる場所を調べていくことにするか。資料とにらめっこになるけど、デスクワークは覚悟していたし、嫌いじゃないから今日一日は部屋の中で作業になりそうだ。
資料を漁り始める。ユノーについては暇だったら外に出ていて構わないと言ったのだが、地図に興味を示したか、テーブルに広げた地図を見下ろしてふよふよと漂っている。
「ねえルオン」
「どうした?」
「改めて疑問だけど、星神についての情報……それを知るためにここを訪れたんだよね?」
「そうだな。ソフィアやリーゼとしてはこの大陸にある技術についても興味を示しているけど……そこはあくまで副次的なもの。本題は星神に関する情報と、後は今から始まる騒動についてのことだ」
「で、肝心の情報源については見つかっていない」
「エメナ王女から借り受けた資料を基にして、それらしい候補を選び、片っ端から調べていくしかないな。それでも見つからない場合、エメナ王女の旅路を観察するしかない」
「……王女の一件が、星神とつながっているってことだよね?」
「ゲーム……この大陸で紡がれる物語は、星神に関することで間違いない。だから王女の旅路がそのまま星神の解明につながっていく……どういう経緯かはわからないが、この大陸の騒動を放置していれば崩壊の未来が待っているわけで、だからこそそれを防ぐか、あるいは対策を立てるために俺達がここにいるわけだ」
「うんうん、なるほど……で、もし先回りできるようなら、それをしたいってことだよね?」
「まあな。星神との戦いは差し迫っているのかどうか……リズファナ大陸の騒動が終わった時、崩壊まであと数日なんてことになったら目も当てられないだろ?」
「確かに……で、その候補は?」
「たぶんだけど、王女はこの大陸中を旅することになる……と、俺は推測している。だからまあ、候補となる場所は大陸全てってことになるんだけど……怪しそうな場所があったら言ってくれ」
「怪しそうな場所って……そもそもあたしは地図を見ても知識がないからなあ」
そんな風にユノーとやり取りをしながら作業を進める。ひとまず情報を得られそうな場所……特に、星神のことが調べられる場所について、候補をいくつか絞った。
当然ながら、それは国立の図書館とか、そういう所になるわけだが……大陸中で探すとなると、やっぱり多いな。
ただ、歴史の浅い国とかに星神の情報が眠っているかと言われると……? などと思っていたところ、
「ねえねえ、ルオン」
地図を見ていたユノーが何かに気付いたのか、呼び掛けてきた。
「面白い所があるよ。ほら」
地図に近寄ってみると、彼女は地図の一点を指差していた。その先にあったのは、
「……自由都市、か?」
そこはリーベイト王国を含め、複数の国の国境が交わっている場所。名前はトルバス。資料で調べてみると、ずいぶんと歴史のある都市国家らしい。
「重要な交易路になっているな……俺達が探す星神への手がかりがどのようなものかわからないけど、情報集めにはよさそうだな」
「行ってみるの?」
「候補には挙げていいな。」
例えば隠れ里とか、地図の上には載っていないような土地についても、情報を得られるかもしれない……俺はメモに都市国家について記述に、さらに作業を進めることにした。




