真実に迫る旅
「うわー、でかいねー」
と、懐にいるユノーが呟く。今回彼女を介しバールクス王国側と連絡するということで、彼女は俺の懐に居座っている。俺としては「それで問題ないのか?」と疑問を呈したのだが、当の彼女は「何が?」と平然と聞き返す有様。この扱いについては一切気にしていないらしい。
まあ当人が問題ないなら良いとして……俺達はバールクス王国の西の果てに来ていた。そこにある港町……ここから船でリズファナ大陸へ向かうことになる。
季節は春を迎え、周囲は草花が芽吹き始めている。山の上とかはまだ白いけれど、寒さもずいぶん落ち着いて、過ごしやすい気候となり始めているくらい。このタイミングでの来訪は、おおよそ予定通りだ。
肝心のメンバーについてなのだが……俺とソフィアに加え、リーゼもまた帯同する形に……リーゼが今回の旅に加わるのは紆余曲折あったのだが……まあ、口をつぐむとしよう。で、その護衛としてエイナを含めた騎士団の者達。組織メンバーの代表者として、まず戦士としてフィリとシルヴィ。さらに魔法使いとしてラディとカティが控える。
人選の根拠としては、何かしら解析が必要である場合こちら側で作業ができるよう、カティとラディを選んだ。フィリとシルヴィはエイナを始めとした騎士が動けないという状況になった場合、身軽に動ける要員として採用した。護衛という意味合いも一応あるが……基本的には考案した策を実行する場合の要員としての意味合いが大きい。
他に選んだ理由としては、リーベイト聖王国側と顔を突き合わせた際、臨機応変に応対できる人物を選んだ。この辺りは人選を行った時に色々とテストしたのだが、人当たりが良かったのが今回選んだ四人だった。シルヴィとかは意外のようにも思えたが、本人いわく「偉い人と話すのは嫌いじゃない」とのこと。
残るメンバーは留守番……大陸を渡る人員が少ないようにも思えるが、騎士団が中心だし、組織のメンバーは最低限にした。あまり騎士以外の人員を多く配置しても変に思われるだけだし、このくらいの人数が適していると判断したわけだ。
というわけで、俺達は船に乗り込む。見送りには組織のメンバーが数人。それに手を振りながら出航し、いよいよ真実に迫る旅が始まった。
「航海途中で何も起きなければいいが」
離れていく陸地を見ながらシルヴィが呟く。
「縁起でもないこと言うなよ……」
「星神から妨害行為があってもおかしくはないだろ?」
「一応、対策はしているから……とりあえず打ち合わせは事前にやっているし、特段船の上で話をすることはないか。船酔いとかしたらすぐに言ってくれよ」
長旅になるし、ここは船上ではのんびりすることになるかな……と、ソフィアが海を眺めている。俺はそれに近寄り、
「ソフィア、何かあるか?」
「いえ、ただ海を眺めていただけです……ルオン様、お一つよろしいでしょうか?」
「構わないよ」
「いよいよ星神の正体などに迫る……ことができる状況です。その中でルオン様としては、自分自身のことをどうお考えなのかと」
「俺のこと?」
――星神と俺はどうやら無関係ではない。魔力の質などにより、それが徐々に判明しつつある。
人選をしている最中により詳しく解析したのだが、やっぱり俺は星神に何かしら関係があるという結論に至ったのだが……まあだからといって眷属という話でもない。星神の使徒との戦いを踏まえれば攻撃が通用しないなんてこともないし、戦闘をする際は問題にならないと思う。
「ソフィアは、俺がどんな風に考えているのかを知りたいと?」
「それを聞いて何をしようというわけではありませんよ。ただ、お考えが気になっただけでして」
……うーん、彼女としては懸念があるということか? と考えたところで何となく合点がいった。
まず、星神と関係し、俺はいずれこの存在が世界を無茶苦茶にすることがわかっている。だから俺自身、星神を討つということは自分の役目だと思っている。
それは絶対に果たさなければならない……というかそれをやらなければ、世界が破滅してしまうのだ。だから場合によっては命を賭して……そこを、ソフィアは気にしているというわけだ。
「あー、そうだな……俺は転生した人間という変わった境遇だ。似たような形でこの世界にやって来た人物もいる……アランのことだけど、彼についても救わなければならない」
「はい」
「俺自身、星神をどうするかこそが転生した最大の目的だと思っているし、また果たさなければならない役目だとは思う……なぜ俺が転生して、という最大の謎が残っているけれど、そこについてはこの旅を終えた時点で推測できているかもしれないし、まだ話し合うような段階ではないな」
「ご自身の転生について、情報を得ることができると?」
「あくまで可能性の話だけど。星神のことについてより知ることができるのなら、その関係者かもしれない俺のことだって何かしらわかるかもしれない……ま、あまり期待してはいないけど」
「ルオン様としては、転生したのは偶発的なものだと思いますか? それとも故意だと思いますか?」
「難しい質問だな……仮に故意だとしたらなぜ俺を選んだのか、という話になる」
ただ、別に根拠がないわけじゃない。
「俺がこの世界へ来るというのは……なんというか、縁に近いものなんじゃないかと思っている」
「縁?」
「この世界をゲーム……物語の上で知っていた。だからこそ、俺はこの世界に来ることができた……それはきっと間違いないと思う。アランだって物語として知っていた。ただ、知るだけで来ることができたなら、もっと転生する人物がいてもおかしくない。だから、何かしら他に条件がいるんだと思う……問題は、それを誰かの仕業としてやっているのか、それとも星神の活動による副産物……偶発的なものなのか」
「前者であれば誰がやったのか、ということですね」
「そこは繰り返しになるけど、今回の旅で明らかになるかもしれない……ある意味今回の旅は、俺自身のことを知るための旅でもある。だから絶対に、情報について得なければ」
「ならばそれを優先ですか」
「俺はそうだけど、建前上は国同士の交流の先だ。まずは俺達が敵として認定されないように立ち回る。相手の懐に潜り込んでからが勝負だ……ソフィア、頼むよ」
俺の言葉に彼女はしっかり頷く。彼女は改めて、この旅を成功させようと気合いを入れ直したようだった。




