関与すべきか否か
連絡手段を確保した後、俺はリズファナ大陸について資料を漁ることにする。一応地図も発見したのだが、ずいぶんと古いものであって役に立たないだろうと判断した。
大規模な河川とか山脈とかの名前は載っているので、完全に無駄というわけではないのだけれど……地理的なものを知るのも重要だけど、それよりも必要なのはアンジェの予言によりどこを訪れればいいのか……それを考察することだ。ただそれは現地に赴かなければ推測するのは難しいだろう。
「うーん、交流はあるにしろ、詳細な資料というのはなさそうだな……」
バールクス王国ではなく他の国なら何かしら詳細はあるかもしれない……交易なども一応しているので、商人とかに話を聞くとか? けど、俺が求める内容とは離れているような気もするな。
「できる限り調べてみるけど、現地へ辿り着いてからが本番かな……」
一応地理とかは頭に入れつつ……リズファナ大陸で起きる事件のことを想像する。
わかる範囲では、リーベイト王国のお姫様が何かしら事件に巻き込まれるということだけ。それを支えるのは主に主人公……見習い騎士というわけだが、他にも登場人物はいる。クローズアップされていたのは、王女の従者。これは主人公とほぼ同年齢ながら騎士として務めを果たしているエリートだ。
年齢としては俺達とそう変わらない……多少年下くらいだろうか。だから王女付きの騎士というのは相当な実力者であることがわかる。まあゲームではたぶんレベルは主人公と同じくらいだと思うけど。メタな話になってしまうけど。
他にも登場人物はいたんだけど……仲間になるキャラクターとか、あるいは敵役っぽい見た目のキャラとかか。まあ完全に詳細が判明したわけではなかったし、仲間っぽいキャラクターが実は敵みたいな可能性もあるので、記憶にある人物を見かけたら注意するくらいにしておくべきか。
で、最大の問題として俺はこの物語にどこまで関与するべきだろうか、ということ。ストーリーの始まりは知っているので、干渉することは容易だろう。上手く言いくるめて彼らの旅に適当な理由で同行すると……彼らの信用を得るためにどうするとか方法論は考えないといけないけど……可能は可能だと思う。けれど、ゲーム通りのシナリオに沿っていったら星神が目覚めてしまうような展開に陥るのではないだろうか?
リズファナ大陸の物語……これは四作目から続く三部作の完結編であり、また同時に遠い未来である一作目と繋がるエピソードである。つまり最新作の物語がそのまま進んでしまったら、破滅の未来が待っているというわけだ。
しかし、だからといって主人公達の行動を妨害するというのもどうだろうか。例えば物語の首謀者が星神を復活させようとしており、それを主人公達が止めるという筋書きの場合は、下手に干渉すれば悪い方向へ話が進んでしまう危険性もある。
では、具体的にどうすればいいのか……物語の流れがわからない以上は軽率に主人公達と関わってはいけない。とはいえ、無視を決め込むのもまずいように思える。なぜなら英雄が来訪するということはゲームでは存在していない事象なわけで、仮にゲームと同じように物語が始まったとしても、本当にそのまま問題なく進むのか……これは最大の疑問なわけだ。
つまりやるべきこととしては、主人公達の動向を観察しながらリーベイト聖王国自体の動き方を注視。そこからどういう行動を取るべきなのかを考える……やることが多い。
「最優先は星神の情報を得ること、かな。その中で主人公達と顔を合わせる機会が生まれるかも」
あと星神に関することが生じたなら、場合によってはすぐさま動く必要性があるのを考えると、やっぱり現地へ赴いていた方がいいのは事実。課題が多いため苦労しそうだけど……まあ、シナリオを把握していたから今までは頭を悩ませなくて済んでいただけで、これが本来の冒険というか、戦いだろうな。
ひとまず頭の中はまとまった。大陸に関することはしっかり記憶しておいて、国との折衝で大陸のことを調べましたってアピールできれば、向こうの心象も良くなるだろ
うん、ひとまずやることは終了かな。資料にまとめておいて同行者に後で配ることにしよう。
作業に目処が付いたタイミングで俺は食堂を訪れる。時刻は昼過ぎで人の姿もまばら。遅めの昼食をとっている組織のメンバーもいれば、何やら打ち合わせみたいなことを行っている人もいる。
俺はお茶を注文して腰を落ち着ける。これからどうしようかと悩んでいると、近づいてくる人影が一つ。
「ルオン、少しいいか?」
シルヴィだった。何事かと言葉を待っていると彼女は、
「現在、リズファナ大陸へ向かうための人選を行っているのだが……」
「シルヴィが担当しているのか?」
「騎士側はエイナ。組織の構成員で冒険者上がりはボクの担当だ」
なんというか、まとめ役みたいな感じになっているな……アルトとかがやっている部分ではあるのだが、今回は別の仕事か?
「それで、肝心のメンバーなんだが……人数についてはどの程度だ?」
「んー、王女が同行する以上は警備も厳重にすべきだよな。この辺りについてはエイナとか城側と協議が必要だな。後で俺の方から城へ伝えておくよ」
「それは助かる」
「人数は……それほど多くはできないかな。表向きは国家間の顔合わせだから、組織メンバーよりも騎士を優先すべきだし」
「ソフィアの警護はエイナに任せるということで良いとは思うが……リーゼ辺りが同行する場合はどうする?」
「それも結論決まっていないけど、同行するという可能性を考慮して動くべきか……両方のケースを考慮して人選を行ってくれないか?」
「ボクの仕事量が増えるんだが」
「頑張ってくれ」
俺の言葉にシルヴィはこれ見よがしにため息を吐いた後、小さく「わかった」と答えてこの場を去った。
組織として動く以上、剣を握っていた者達も事務仕事が増えてきたな……まあこれも経験だと思ってもらうことにしよう。
次は何をするか考える。残る懸念はリーゼについてか……シルヴィの仕事量を減らす意味合いでも、一度彼女に尋ねておくか。
そういうわけでお茶を飲み終わった後、俺はリーゼを探すべく食堂を後にした。




