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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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適任者

 何はともあれ、いち早くやるべき事は連絡手段の確保……リズファナ大陸については人間種族しか存在していないので、精霊達などを利用するというのは変に目立つ。リーベイト王国側としても、そうした者達がゾロゾロやってくるのは警戒するかもしれない。ガルクの存在については公に出さなければ問題ないにしても、分体で魔力量もそれほど多くない彼が連絡を受け持つというのは難しいのではと思う。


「というわけで、相談をしに来たわけだが」


 組織の建物へ戻り、俺は子ガルクへ尋ねる。ちなみに王との話し合いの際は婚約とかの話もあるかも、ということでいなかった。


『うむ、その辺りについては既に準備を行っている。星神との戦いに備えて、というのもあるが』

「星神との戦いでも使うのか?」

『仲間達がバラバラになってしまったら、連絡手段は必要だろう?』


 個人的にはそういう状況に持ち込まれた時点でまずいと思うんだけど、緊急時の対策を講じておくのは当然の話か。


『よって、色々と作業をしているわけだが……ひとまず目処が立ったという段階か』

「決戦までそれほど猶予がない状況だし、今の段階で目処が立ったというのは、かなり危ない気もするけど」

『理論構築さえ確固たるものにできれば、それほど時間は必要としないから心配しないでも大丈夫だ。そして具体的な方法だが……我らの分体……というより、魔力をほんのわずかに付与しておく』

「その魔力を用いて連絡をすると?」

『そうだ。ここまでは難しくないのだが、星神との戦いで魔力が消されてしまうなどの可能性を考慮し、一工夫加える。魔力を使用者と強く結びつけ強固にしていかなる状況でも連絡手段を喪失しないように……加え、魔界や天界といった次元を越えた場合にでも使用できるように処置をする』

「無茶苦茶だな……連絡手段喪失の対処についてはいいとして、次元を越えても使用可能というのはどういうやり方だ?」

『その魔力は、魔界や天界と同じように異なる次元へ繋がるように処置を行う。例えば天界や魔界は特定の場所でなければ赴くことができなかったわけだが、この規制を取っ払い、どこでもその次元へ繋がるようにする。言わばそういう魔法を魔力に封じ込めておく』

「理屈はわかるけど……」

『異なる次元といっても、人が出入りできるようなものではない。言わば魔力同士が交信できる程度のものだ。規模が小さい代わりにどこでも入口をつなげることができる……まあそういう形だ』

「それができたなら、いつでもどこでも連絡ができる、と?」

『そうだ。とはいえ異界を創造するのはかなりの難事であるため……というかそこが最大の障害だ。既に構築はしているのだが、不安定で完成には時間が掛かる』


 逆に言えば、時間さえ掛けて安定させればいいってことか。


『そこで、リズファナ大陸に赴く際に実験を行う。異界同士をつなげて連絡を取り合うため、バールクス王国側とも話ができる。しかし小さな魔力ではまだ安定していないため、ある程度魔力を保有しておく必要がある。精霊が同行するのが一番なのだが』

「精霊か……リズファナ大陸には人間種族以外にはいないし、来訪者の中にそういう存在がいるとわかれば、何かしら警戒される可能性もあるんだよな」

『ふむ、そうなると少しまずいか……表向きは大陸間の交流だ。国同士が接するのであれば繊細な対応が求められるからな』

「もし同行するにしても、精霊のように力を持つ者ではなく、戦闘能力が皆無の存在が望ましいよな」

『うむ、そういうことになりそうか』

「でも、それでいて魔力を抱えられる……条件に適合する存在っているのか?」


 ガルクは無言となる。難しい、という感じだろうか。


「いっそのこと、精霊と契約するか?」

『いや、契約はそもそもまずい。ルオン殿の能力を阻害する可能性があることに加え、今回の技法は契約などをしない前提で使用する予定だからな』

「あ、そうか。天使とか多種族にもやらなきゃいけないものだから、そういうやり方はまずいのか」


 ということは同行は必須……うーん、どうするべきだ?


「今から探すのもリスクがあるよな」


『うむ。これについては相談するしかないか。大変ではあるが、天使や魔族を含め採用できるかどうかを考慮できる者を探すしか――』


 その時、俺の視界にふよふよと空中を移動する存在が目に入った。視線を転じるとそこには、


「今日は何をしようかなー」


 などと呟く天使ユノーの姿があった。


「…………」

「……ん?」


 こちらの注目に気付いたか、天使は首を向け、


「どしたの?」

「……ガルク、すっかり忘れてたけど、適任なのがいたぞ」

『だな。うむ、小さな天使であれば、相手も警戒度合いを薄くするだろうな』

「え、え? 何の話?」


 戸惑うユノーに対し俺とガルクは視線を合わせ、


「具体的にはどうするんだ?」

『連絡役はルオン殿にしよう。そうであれば彼女には常にルオン殿の近くにいてもらう必要がある』

「ん? なんか作戦の話? あたしが同行するの?」


 ……とりあえず、彼女に用件を伝えるべきか。

 俺は彼女に一連の説明を施す。天使ユノーは「ふんふん」と話を聞いて興味を示したのか、


「あたしはやってもいいけど、何をすればいいの?」

『こちらが付与する魔力を維持してもらうだけでいい。それ以外のことは必要ない』

「ふーん、いるだけで効果が発揮するってことかあ……実を言うとリズファナ大陸には興味あるし、一緒に行ってもいいよー」

「ということは、これになりそうだな……ひとまず目処は立ったのか?」

『うむ、天使ユノーに合わせて少し調整するが、有効なのかテストをするには良い条件が整いそうだ』


 通信については解消したかな。ガルクが言う通りこれが機能すれば、大陸間であろうが連絡がとれる。突然俺やソフィアがいなくなってもまあどうにかなる……そういう展開がないのが望ましいわけだけど。

 細かい調整とかはガルクに丸投げすることにして、俺は次の課題へとりかかることにする。次は現状でリズファナ大陸について調べられることをまとめることにするのだった。


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