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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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小さな異変

 敵が現われた直後、即座に魔力を探る。天使の武具……ではあるが、それはどうやらレプリカらしい。


「本物を持参するのは避けた形だな」

「……今度は、数で押し込もうって雰囲気らしいぞ」


 シルヴィが呟く。見れば最初に見えた魔物の後方からさらなる魔物が。

 それは列を成していると表現しても良かった。地上であんな隊列を組んでいれば魔法によって一網打尽なのだが、洞窟内だと少々話が異なる。


 さすがに広範囲系の魔法をぶっ放すのは、洞窟の崩落を招く危険性がある。生き埋めになるのは避けたいし、何より天使の遺跡の場所だって埋まってしまうので当たり前だがやってはいけない。よって、小規模な魔法などを使うわけだが……それだと一気に倒すことは難しい。

 まあやりようはあるのだが……あの感じだと魔物は突き進んできそうだな。魔物が散開して混戦となれば味方を撃ってしまう可能性もあるので、範囲系の魔法は危ないことに……外とは状況が違うので、普通に戦うのが無難だろう。


「少なくとも、手強い敵はいない……いや、中には天使の武具……本物を所持している個体が混ざっているかもしれない。注意しながら戦ってくれ」


 その指示に仲間達は相次いで返事をした後、交戦を開始した。魔物達は俺達が近づいてくると一挙にばらけた。首謀者は俺の懸念していた展開に持ち込むつもりらしい。

 レプリカではあるが、可能な限りこちらの能力を削っておきたいはずなのだが……ただ、本物の武具ならまだしも、あくまで偽物……これでこちらを止めるのは、さすがに無理があるな。


 俺は剣を構え、接近してきた魔物と剣を合わせる……が、即座に力を入れてレプリカの剣ごと両断する。武具の特性などはわからないが、ある程度力を入れれば余裕で倒せることは村への襲撃でわかっている。よって容赦なくやらせてもらう。

 続けざまに手近にいた魔物へ斬撃を叩き込む。相手は反応することすらできずあっさりと消滅。俺については問題ない。


 仲間はどうか……シルヴィは俺よりも前に立って剣を振るっている。その鋭さと速度は魔物に対応する手段すらとらせず、次々と数を減らしていく。

 彼女以外のメンバーも、魔物と相対してからほんの数秒で滅している。レプリカを装備する魔物では相手にならないか。村などでは防衛に注力する必要があったので相応の対策が必要だったわけだが、今回は俺達が攻めでなおかつ援軍まで来ている。相手は地の利があるとはいえ、戦力差は縮まるどころか広がっている。敵にとってこれは想定内か、それとも予想以上か――


「ふっ!」


 隊とも呼べる魔物達の襲撃であったが、わずかな時間であっという間に数を減らしていく。どうやら天使の武具……本物を所持している個体はいない様子。前回の襲撃で使用してしまったのが痛手になっているのか。

 であれば、俺達にとっては好機……やがて魔物達を全て倒しきる。こちらに怪我人などもいない。まさしく完全勝利だった。


「レプリカ持ちの魔物については、相手にならないか」

「普通の魔物と違うとはいえ」


 アルトが大剣を軽く素振りして、述べる。


「魔王との戦い……星神との戦いによって経験を積んだ俺達にとっては、問題ないな」

「アルト、油断はしないでよ」

「わかってるさ」


 キャルンの言葉に返事をした後、アルトは俺へ首を向ける。


「この調子で魔物を倒しながら遺跡のありかを探す……だな?」

「そうだ。先ほどの魔物について、どこから来たのかはわからなかったが……交戦を繰り返せば自ずと魔物が隠れる場所がわかるはずだ。それにより、首謀者の居場所を絞り込んでいく」

「魔物がいる場所と、首謀者がいる場所が同じとは限らないだろ?」

「確かにそうだが……さすがに首謀者だって魔物を手元に置きたいだろ? 護衛という意味合いでも」

「まあ、確かに……ということは魔物が多く出現する場所などを探していけば、必然的に首謀者に辿り着くかもしれない、と」

「あくまで予想だけどな……まあ仮に首謀者が見当違いの場所にいるとしても、魔物の数を減らすことはできる……俺達にとっては悪くない展開だ」


 ただ相手の居所がつかめていない以上、長期戦も視野に入れなければいけないため、そこが懸念と言えば懸念である。町や村の不安を早く解消しないとまずいだろうから、それには俺達がいかに素早く拠点を見つけ出すかにかかっている。


「魔物が散発的に仕掛けてくる可能性もあるし、それを利用して居所を調べるというやり方のあるにはあるけど……まあ、能動的に動いた方がいいよな」

「魔物が進んできた道を逆走かしら」


 カティの言。ま、魔物のいた方向へ進むのが無難だろうな。

 この洞窟は迷路のようになっているので、迂回などをして居場所を悟られないようにしているかもしれないけど……とにかく手がかりになりそうな情報を基にして進んでいくしかない。


「よし、それじゃあ先へ――」


 そう俺が仲間達へ呼び掛けた時だった。

 パキン、と乾いた音が聞こえてきた。それは氷が割れた音とか、そういうものだと考えてもおかしくなかったのだが……俺は違った。その音は、魔力と共に発生した。


「……何だ?」

「今、変な魔力が生まれたわね」


 カティが同調する。視線を転じればクウザやイグノスについても頷いている。

 俺達が侵入したことで何かが起こった? あるいは、首謀者が俺達の能力を目の当たりにして何かを仕掛けた? 色々と疑問はあったが、それを確認するには先へ進むしかない。


 聞こえた方向は魔物が進んできた道。ただ魔力は音と共に一瞬発生しただけで、以降に変化はない。


「……洞窟が崩れるとか、そういうわけじゃないよね?」


 なんとなく不安に思ったかキャルンが声を上げる。あり得ない話ではないが、そういう仕掛けが作動したなら音だけでなく地鳴りなどが発生するはず。

 洞窟内に変化はないため、おそらくそうではない……と思う。俺は仲間達へ先へ進むよう指示を出して歩き始める。


 どうやら戦いは次のフェーズへ向かうらしい……先ほどの音、なんだか嫌な予感を抱きながら、俺達は洞窟の奥へと進んだ。


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