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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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平和を乱す者

 さて、援軍も来たしいよいよ反撃開始、なのだが――


「それじゃあ始めるとしようか」

「……何でエーメルがいるんだよ」


 援軍は組織のメンバー……ただその中にエーメルが混ざっていた。


「何で、とは心外だな。魔族が相手である可能性があるのなら、来るのは至極当然の話だろう?」

「ああ、まあ。それなら理解できるか……こんなことをやらかす心当たりとかはあるのか?」

「さすがに魔王軍で誰が生き残っているとかは知識にないな。ただ、一応領地を持っていた身だから、見覚えがあるかもしれない。それに」


 エーメルはここで怪しげに笑みを浮かべる。


「魔族が相手なら、私のことを知っている可能性は高い……なぜ人間に味方をする、ということで反応があるかもしれない」

「なるほど」


 村に来た時点で相手が察知しているのなら、良くも悪くも現状を変化させる効果があるだろうな。それが良い方向に傾くことを祈りつつ、


「それじゃあ、山狩りを始める……周辺を使い魔とかで探ってみたけど魔物の配置とかはバラバラで、統一感のある動きじゃない。対処はそう難しくないはずだ」

「油断しなければ、だな」


 援軍としてやってきたアルトが言う。他にもキャルンやイグノスといった彼の仲間に加え、魔王と戦ってきた賢者の血筋とその仲間がここに集っている。

 これは魔王軍と戦った経験を考慮してのものだろう。まあ魔界に踏み込んだ経緯もあるから魔族や魔物との戦闘経験は組織の面々なら誰でも持ってはいるのだけど。


 その他に村や町の護衛役として魔力を持った武具を持つ騎士達。相手が魔族であることを考慮しての編成だ。霊峰周辺を警備するためにそれなりの人数が必要だったため、結構大規模になっている。

 傍から見れば物々しいが、犠牲者をゼロにするためにはこのくらいやらないといけないわけだ……というわけで、


「よし、動くとしようか」


 俺達は山へと向かう。その道中でいくつかに分かれる。

 今回エイナは騎士の指揮を執る必要があるため警備側。そして俺と共に行動するのはフィリとその仲間であるカティとコーリ。


 一方でソフィアとリーゼにはアルト達がくっつく。他のメンバーとしてはシルヴィやクウザはオルディアやラディに加えエーメルと組んで行動している。三手に分かれ行動することで、敵の居所を探る。俺の使い魔を介して常に連絡がとれるようにして……何かトラブルがあれば都度対応すればいい。

 俺達の班は真っ直ぐ霊峰へと近づいていく。前回山へ向かおうとした時には道中で襲撃されたわけだが、


「俺たちが動き出したのを感づいたか……気配がないな」

「結構不気味ね」


 俺の呟きにカティが続ける。


「相手側もさすがに警戒しているといったところかしら……ルオン、私達が来る前に魔法で首謀者の居所はつかめなかったのよね?」

「村や町の警備態勢をしっかりする方を優先にしていたというのもあるけど……とはいえガルクとかレスベイルとかで探りはしたよ。けど、見つからなかった」

「天使様に加えて神霊様でも見つからなかったというのは怖いわね」

「天使の武具を活用しているのだろうとガルクは言っていたよ」


 俺は告げながら腕を組む。


「魔物が所持していた武具はかなり強力だった。それを利用して拠点を隠蔽しているのではないかと」

「なるほど……でもそうなると、敵は相当武具の研究を進めているわね」

「ああ。だからこそ放置できないわけだが――」


 真正面を見据える。道に魔力がないかを探ってみるのだが、反応はなし。


「……このまま今回襲撃してきた存在を放置すれば、面倒事になるのは確定的だ。さすがに魔物まで作成して攻撃している以上、友好的ではないからな」

「ようやく大陸も落ち着き始めたというのに、水を差すような真似はして欲しくないですね」


 フィリが憤りを隠すことなく述べる。怒るのもわかる。俺達には色々と騒動もあったし、星神の使徒なんて厄介な存在も出たわけだが……少なくともシェルジア大陸においてはひとまず平和だったし、魔王との戦いから多少時間も経過して爪痕が回復し始めた段階だった。

 今回の敵はそれを崩そうとしている……この場所を根城にしている以上は狙いはやっぱりバールクス王国か。この国は魔族に支配されてしまった経緯もあるし、相応に傷も深い。取り戻した平和を破壊されるのは――絶対に阻止しなければ。


「でも、敵も気の毒よね」


 と、コーリが俺を見ながら告げる。


「相手は魔王を倒した英雄だし」

「……心情がどんなものかわからないけど、臆しているわけではないだろうな。何せ相手は天使の武具なんて物まで引っ張り出して戦っているんだ。覚悟を決めているのは間違いない」

「この武具について、出所はわかるのかしら?」


 カティがもっともな疑問をぶつけてくる。それに俺は、


「推測の域を出ないけど……敵が魔族であれば五大魔族の一角だったグディースが天使の遺跡について研究していたからな。その調査の一環で武具を手に入れていてもおかしくはない。もし人間であれば……そうして遺跡から出てきた武具をどこかで入手したか」

「今回の事件で日の目を見た天使の武具は魔族でも扱えるのよね? だとしたらなぜ、この大陸へ侵攻した際に魔王は使わなかったのかしら?」

「まだ研究途中だったから、と理由付けすることは可能だけど……」


 武具は手に持った瞬間、馴染むような感じだった。もし魔族も同じような効果だとしたら、使ってもおかしくはない。


「まあ、確かに矛盾とまではいかないけど不可解だな……とすると、今回の敵は魔族じゃなくて人間だと?」

「断定するのもまずいとは思うけどね……ただ、何かしら事情があるかもしれないし、首謀者については絶対に捕まえたいところよね」


 それは同意する……カティへ返答しようとした矢先、左右から気配を感じ取った。どうやらお出ましらしい。


「来ましたね」


 フィリも気付く。全員が戦闘態勢に入ったと同時、魔物が出現。

 見た目は以前戦った個体と同じようなウェアウルフ。画一的なのは魔物を作成する場合、能力などを同じにする方が作成速度なども上げることができるためなのだが……今回の敵は、これまでと少し違っていた。


「……これは」


 俺は小さく呟いた矢先、魔物達が吠える。同時に敵が握る武具が魔力を発し、周辺を一気に満たした――


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