闇の中
『天使がこのような武具を作成した理由として可能性だが……まずこの武具は遺跡から掘り出されたものだろう。つまり古の天使が作った武具だ』
「そこは疑いようがないな」
同意するとガルクは、
『ならば彼らは人間を含め多種族を巻き込むことで、戦おうとしていたのかもしれない』
誰と――とは語らなかった。ここまで言えば俺にも理解できたためだ。
「……星神と、か?」
『あくまで可能性の話だが』
なるほど、古の天使が星神に対抗するために……アンヴェレートの話によれば古の天使にとって星神は大きな研究テーマだった。その中で打倒しようとする勢力が存在し、対抗手段として武具を作成……うん、一応筋は通る。
「しかし、天使だけではなく人間達を巻き込んで、というのはずいぶんと壮大な話ですね」
ソフィアが口を開くと、ガルクは同意するように首肯し、
『天使アンヴェレートの口からその辺りのことが語られなかった以上、彼女は深く関わっていなかったが、もしかすると星神を研究において中心にいた者達にとっては、逼迫した状況だったのかもしれん』
「天使が活動していた頃に、何かがあった……と」
『うむ。もっともそれは推測でしかないが。結果として懸念していたことが起こったのかもわからないし、真相は闇の中だな』
「ただ武器を製造していたことを考えても、良い状況だとは思えませんね」
ソフィアの言葉に一同頷く。ただ、
『我が述べたのはあくまで推測だ。天使同士の戦いに人間を利用する……というのは少々考えにくかったため、このように言及したが、星神と関係していると断言できるわけではないからな』
「そうだな。でもまあ、可能性としては高そうだ……で、問題はこれを魔物に持たせて何かをしようとしている輩なんだけど……」
『ルオン殿が戦った魔物そのものはこれまでと同じような能力だったと考えて良い。単純に武具の能力が高かったために思わぬ攻撃を行った……というくらいだろう』
ガルクはまずそのように補足する。
『問題は人間か、魔族か……正直、人間であるならばルオン殿が恨まれる理由がない。可能性として考えられるのは、魔王を信奉する人間だが……そんな風に考えるより魔王は滅んでしまったが、配下が生き残っていたと考える方が妥当だろうな』
「そこは私も同意するわ」
リーゼが肩をすくめながらガルクに同調する。
「迷惑極まりないけれど……問題は明日以降、どのように戦いを仕掛けてくるか、だけど」
「さすがにしばらく引っ込むとは思うけど、な」
「こちらの戦力は分析できたわけですし、しばらく警戒するのは当然だと思いますが」
これはソフィアの言。まあ二度も敗北している以上、下手に仕掛けてくる可能性は低いとは思う。
警戒する必要はあるし、他の村とか町を守るために動き回る必要性は出てくるけど……攻め手としては相手の尻尾をつかむところから、だな。
『援軍が来るまでに調査はするのか?』
「多少なりとも山の情勢を窺うことはするけど、現地へ赴いて調べるかどうかはわからないな」
「せめて魔物の出現場所について、あたりはつけたいですね」
これはソフィアの言葉。確かに。場所を特定するとかではなく、大ざっぱにでも推測できれば村の防衛などもやりやすくなる。
「ひとまず明日は情報収集ですね」
エイナが述べる。他の町や村に魔物が来ていないか……だな。
もし襲撃されていたら――不安は拭えなかったがさすがに夜の内に行動を起こすのはさすがに危険か。俺が動いても良かったが、道に迷ったりするとそれはそれで面倒なことになるし、この村へ再度襲撃してくる可能性も否定できない。
「村の護衛は徹夜になりそうだが、大丈夫か?」
俺の質問にエイナは頷く……騎士達のことも心配だが、体調管理まで面倒は見れないので、彼らに任せよう。
「ソフィア様達はお休みください」
最後にエイナはそう述べた。不安もなくはなかったが、当のソフィアはそれに従うようだったので、俺とリーゼも同意。間借りしていた民家へ戻ることにした。
結局以降は襲撃もなく、夜が明ける。騎士達はそれなりに疲労しているようだったが、休む者と動く者にわかれて情報収集を行う。それには俺も参加し、霊峰周辺に存在する村や町を見て回ったのだが……結論から言えば、被害はなかった。
俺達の動向をどこからか観察していて、夜襲をしたという解釈でよさそうだ。問題はここからどう動くべきなのか。援軍が来るまではまだ日数があるので山狩りをするには人数は足りない。それに再び襲撃が発生する可能性もあるため、迂闊に行動するのもまずい。
俺やソフィアは狙われても容易に対処できるけど、村や町に被害が出てしまうのは避けたいからな……色々と悩んだ結果、騎士達を伝令役として魔物が現われても対処できるようなネットワークを構築することに。エイナを含め騎士達には重労働になるが、数日の間我慢してもらおう。
無論、近隣に存在する町から兵士なども派遣してもらって……その日の夕刻には体裁が整い、ひとまず何かあっても対処できるような形にはなった。
そして情報収集をした結果なのだが、武器を持った魔物の目撃例については霊峰の周辺であちこちに存在していた。発見場所に規則性などがあれば敵の居所について推測ができたかもしれないけど、残念ながらそれもない。よってしらみつぶしに、という形になりそうだ。
あと一番の問題なのだが……俺やソフィアが残るかどうか。元々竜鳴花という花を摘みにここまで来ただけなので、援軍が来れば調査をそちらへ任せてもいい。
魔物の強さについて懸念があるので残るべきなのでは……と思っていたのだが、城側も引き続き調査続行という形になった。どうやら俺の攻撃が弾かれた、という事実がよほど効いているらしい。
そもそも相手が魔族である可能性を考慮すれば、野放しにはできないからな……ということで、調査は続行。ソフィアやリーゼももちろん残ることにして、援軍を待つ。
敵側も俺達の能力を把握したためか、ひとまず動かなくなったのだが……膠着状態をいつまでも続けるわけにはいかない。俺達は魔物の出没地点などを考慮し敵の居所について予想しながら待ち……数日後、援軍が到着した。




