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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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幻獣の結束

 意識が戻った時、真正面には何も残っていなかった。魔法を連発したことで海がずいぶんと波立っているが、目を見張るところはそれくらいだ。


「ルオン様?」


 ソフィアが声を掛けてくる。意識を飛ばし無言になっていたので不安になったのだろう。


「ああ、ごめん。大丈夫……終わった、よな?」

「魔力反応を確かめている最中だが」


 デヴァルスが配下の天使を集め作業を行っている。


「姿は消えた……加え、魔力反応もない。こちらの勝利だな」


 その瞬間、仲間達が歓声を上げた。十日間という短い時間ではあったが、死線をくぐるような戦いだったことは間違いなく、濃密な……それこそ魔王との決戦みたいに緊張感のある十日間だった。


『ともあれ、これで星神に対抗する目処が立ったな』


 ガルクは俺の頭の中で呟いた。共鳴のことを言っているのだろう。


『星神はこちらに対し刺客を放ったわけだが、こちらはそれをはね除ける術を手に入れた』

「そうだな……相手としては、こちらを強くしただけだ。結果だけを見れば」


 島を食い尽くされるという幻獣にとって甚大な被害が出たし、使徒の元となってしまった幻獣の島にいた者達は消え失せてしまった……けれど他の幻獣達に犠牲はなく、なおかつ俺達についても犠牲者はおろか怪我人もゼロだった。あれだけの存在を倒した結果としては、最高の形だろう。

 とはいえ紙一重だったことは間違いない……俺達の猛攻が無理矢理突破されてしまっていたら、勝ったとしても被害は出てしまっていただろう。


「……ひとまず、どうする?」


 ここでジンが問う。全員疲労しているのか表情が硬い。


「拠点になっている島へ戻ることにしようか。一両日くらいは、星神の使徒について……観察しなければいけないだろうし」

「そうだな。では、一度戻り監視することにしよう」


 ジンがそう結論を述べ、俺達は島へ戻ることとなった。






 以降、拠点に戻り俺達は星神の使徒が再び顕現するようなことがないか確認することになった。

 まあ俺の意識の中に星神が潜り込んでくるくらいなので、大丈夫だとは思うけど……そこからおよそ三日ほど。じっくり確認したことで時間を要したため、そのくらいの期間滞在することになった。


 その間、俺達は今後の相談を行うことに。ひとまず幻獣達も星神との戦いに際し手を貸してくれることは確定した。手伝い方などは今後要相談ということになったのだが……まあ、幻獣側もやる気を見せているので、この辺りについては早々に話し合いを行いまとまるだろう。

 加え、これからの方針としては新たに見つかった『共鳴』について調べ、これを確固たるものにしていくと決めた。現状で間違いなく最強の攻撃方法であり、もしこれを武具などに付与することができたなら――確実に切り札になる。


 デヴァルスやガルクもそう断定するほどであり、今後も各種族が技術を高め、武具などを考案していくことになった。今回作戦に出なかった者達にも技術提供し、広めていくことも決まった。そうなると『共鳴』を用いて悪巧みする者だって現われそうだが……そこについては俺達の管理次第だし、各種族の代表者が集って構築した技術だ。監視の目も相当強くなるし、たぶん大丈夫だろう。


 ということで、三日ほど経過し俺達はようやく幻獣達の領域からおさらば……ということなのだが、最後の最後にもう一つイベントがあった。


「これは……すごいな……」


 そんな言葉しか漏らせないような光景が、目前に広がっていた。

 幻獣達が星神の使徒を打倒したということで、俺達を宴でもてなしてくれた。幻獣ジンやテラに加え、他の幻獣達も集まり大騒ぎをしている。人間のように歌い騒ぐようなことも幻獣達はできるんだな……と妙なところで感心していると、テラが近寄ってきた。


『ルオン殿、此度の戦い、ご苦労だった』

「テラも……幻獣達をとりまとめてくれたんだろ?」

『うむ。最終決戦についても幻獣達の動向を観察し避難指示をしなければならなかったため、出番がなかった……これについては謝罪したい』

「テラのような役回りだって必要だったから、仕方がないさ。何か後ろめたさがあるのなら、今後貢献してくれればいいよ」

『うむ、そうだな……今回の戦い、多くの幻獣達が星神の恐ろしさを実感し、手を貸してくれることになった。目の前の光景は、その結果と言うべきものだ』


 俺は視線を巡らせる。仲間達と談笑する幻獣は、様々な見た目を持っている。組織の面々が特段気にする様子もなく応じていることも驚きだが、幻獣が一堂に会する光景……これもまた、ひたすら驚く。


『皮肉な話だが、使徒が現われたことによって幻獣同士結束した。星神を信奉する者達もいるにはいるが、決して前には出ていないし、その辺りのことは幻獣種族がどうにかする』

「何かあれば相談してくれ……しかし最終的には良い形になったな」


 そもそも俺達は幻獣に挑もうとしていたはずだったのだが……まあなんというか、結果オーライかな?


『問題は、どこまで余裕があるのか……だな』

「ああ。これについては俺にもわからないため、とにかく急ぐべきとしか言いようがない。ただ俺達にやれることは今回手に入れた『共鳴』をより強力にするため研鑽を積む……地味だけど、これしかない。時間的に余裕がなくとも、一歩ずつ着実に進んでいくしかない」

『そうだな』


 テラも同意する。そこで彼は俺から離れていった。

 城に戻れば、組織方針も色々と変えなければならない……これまでの手法とは大きく異なるやり方になるため、仲間達もついていくのが大変かもしれないが……とにかく、やるしかない。


 空を見上げる。星空が見え、一時の平穏がこの島に訪れていた。俺は周囲を見回し、リーゼやエイナと談笑するソフィアの姿を見つけた。すると彼女も気付き、手招きする。

 俺はそれに応じる形で歩み寄っていく……十日間を全力で走り抜けた先に得た平穏。けれどこれから別の意味で忙しくなりそうだという予感を抱きながら、今だけはこの安らぎを享受するべく、ソフィア達と会話をすることにしたのだった。


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