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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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共鳴増幅

 試す、という名目で放たれた俺の魔法だが――その軌道が、徐々に変わっていくのがわかった。

 使徒も魔法の動きを捉えることができるのか、再生しながら魔法を捉える。とはいえ消耗し始めたためか、動作はすれど抵抗することはできなかった。


「どうにか曲げられる……が」


 と、デヴァルスは呟きながら苦笑する。


「さすがにあの質量の魔法を操作するのはかなり難しいな……俊敏に使徒が動き始めたら、あまり期待しないでくれ」

「それまでに決着を付けないといけない、と」


 俺の言葉にデヴァルスは頷く……が、現状でやれるだけのことはやっている。


 『共鳴』状態を維持することは可能だが、出力を上げて一気に決着に持って行くのは厳しい……『共鳴』による魔法の威力を上げるには俺の魔法威力を上げるか、現状注いでいる魔力をさらに高める必要性があるわけだが、俺の方は現状で限界に近い。加え、仲間達についても下手に出力を上げれば均衡が崩れ『共鳴』状態が解除されてしまう。


 これは『共鳴』状態が出力を急速に出せない……という問題もあるのだが、一番はまだまだ練り上げるのが不足していたということだろう。十日間で使徒を大きく傷つけるだけの力を得たのは間違いない。しかし、あと一歩……使徒を完全に消滅させるだけの力にはまだほんのわずかに届かない。


 とはいえ現状ある手札でどうにかしなければならない――俺はさらに魔法を放つ。光が途切れさらに小さくなった使徒へ向け、間髪入れずに魔法を決める――!

 幾度の轟音が鳴り響き、俺達の体を打つ。少しばかり距離も近くなっているため、その音も心なしか最初と比べ大きくなっているように感じられた。


「ここが正念場だな」


 そうデヴァルスは俺達へ告げる。


「ここで踏ん張らなければ、負ける……それも、悪い負け方だ。できれば退却する場合なら、犠牲者なんて出さずに対応したいところだが」

「一つお伺いしますが」


 と、魔力を維持しながらソフィアが問う。


「もう少し時間があれば、倒せるだけの力を得ることは可能なのでしょうか?」

「星神の使徒は相当損傷している。元の姿まで回復するには相当な時間が必要だ。幻獣の猛攻でさらに傷を負わせることは可能だろうし、例え島を喰らったとしても……以前のような巨体になることはない。そしてこちらはもう十日あれば、さらに力を増幅できる……おそらく、勝てるとは思うぞ」

「しかし、この島が犠牲になる」

「そうだ。ただサイズがずいぶんと小さくなっているからな。島一つを食い尽くすまでに時間は掛かるかもしれない」

「ただ、あの高速再生能力を勘案すると……」


 ソフィアの口が止まる。魔力を大きく削られても、再生能力は維持している。幻獣達が肥大化を防ぐために戦うとはいえ、最悪元の姿に戻ってしまう可能性だって、十分あり得る。


 本当ならそんな最悪のケースなど想定せず、このまま押し切れと言われそうなのだが……デヴァルスが退却を考慮に入れ始めたのは、使徒が接近してからでは遅いからだ。幻獣達とは違い、仲間達は使徒の攻撃をどうにかできるかは不透明。もし敵から攻撃を受け犠牲者が出れば……そういう最悪の事態を想定し、デヴァルスは全員が無事に生還できる退却のタイミングを見計らっているというわけだ。


「デヴァルスさん、後どのくらい余裕はありそうだ?」


 退却できるタイミングは……という意味合いを込めた質問に対しデヴァルスは、


「正直、あまり時間はないな。もう少しばかり近づいてしまうと、危険ラインに差し掛かるかもしれない」


 そうした会話をする間にも俺は魔法を放つ。気付けば想定以上に魔法を連発しているのだが、それでもまだ余裕がある。魔力消費が思いの外少ないのは、外部から魔力を供給されているためだろう。

 使徒は少しずつ削れてきている。だが言わば先ほどの巨体を構成する中でもっとも大事な中核……その部分は魔力も濃密で、再生能力も一際高い様子。それを突破するのに俺達は四苦八苦していると考えていい。


 確実に削ってはいるので、このまま猛攻を仕掛け続ければ破綻するのは確実だ。しかし、そのタイミングが退却できるラインを超えるか否か……もし超えてしまったら――


「まだ攻撃するのは余裕がある」


 俺はそう言いながら光に飲まれる使徒を見据える。


「ギリギリまで攻撃は仕掛けたいが……」

「こちらも、さらに魔力を高めることができないか試してみるか」


 デヴァルスはそう告げる。現在は出力を一定にして『共鳴』状態を維持しているが、それを一度崩しても、出力を高めるべきという判断か。


「とはいえ、今の均衡状態が解除されては元も子もない。とにかく重要なのは一番魔力量が少ない人間達の力だ。『共鳴』状態を維持しながら出力を上げるのは、コツもつかんでいるからそれほど難しい話じゃない。問題は、力を底上げするために人間達がいかに頑張れるか、だ」

「責任重大ね」


 リーゼは俺達へ告げる。


「そうね、安定性を求めるなら、必要なかったのだけれど……出力を上げる方策は一応存在する。けれど、リスクとして『共鳴』状態が揺らぐかもしれないわ」

「そこは、他の者達でカバーしましょう」


 ソフィアが述べる。他の種族達もそれで良いとして頷いたため、カティも覚悟を決めた。


「なら、やるわ……三十秒だけ頂戴」

「そのくらいなら、なんとかなる」


 俺はさらに魔法を行使。再び使徒の体へ直撃する光の剣。


「全員、人間側の出力が上がってもすぐに合わせることができるように態勢を整えてくれ」


 デヴァルスからはそういう指示が飛んだ。いよいよ戦いも終盤に差し掛かっている。現状、使徒を大きく傷つけてはいるが、正直内容的には紙一重だ。このままの状況を維持してもまずいという公算が立った以上、俺達にできることは一つしかない。

 リーゼ達の準備が終わる。もし『共鳴』状態から外れてしまえば、俺の魔法も使徒を砕くことはできなくなる。一発勝負……果たして、


「出力を少しずつ上げてくれ」


 デヴァルスはリーゼ達へそう指示を飛ばした。


「それにより、こちらも出力を都度変えていく」


 リーゼは頷くと、他のメンバーと共に力を増幅し始めた。


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