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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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炎と剣

 俺はデヴァルスの様子からして、試練の真意についておぼろげに理解し始める。単純に力ある者が選ばれる……というわけではなさそうだ。

 ガルクはカティ達の魔法準備について、反応を示さない。彼らの攻撃より前方にいるアルト達の攻勢に対し防御を行う。幾度となく真正面から斬撃を防ぎ続け……今のところ破壊される兆候はない。


 そもそも障壁を砕いたとしてもガルクはすぐさま再構成できる。そのため仲間達が一撃当てるためには障壁を砕いて即座に追撃するか、障壁ごと貫くかしかない。魔法の場合は障壁を砕いた勢いで当てることも可能だと思うけど、エイナ達の集中攻撃でも砕けなかったところを見ると、魔法で破壊というのは困難であるように思える。


 しかし、それでもカティ達は――魔法を一斉に放った。全員が示し合わせたかのような炎の魔法。業火が彼らの真正面に生み出されると同時、合図もなく一斉に放たれた。

 それは先ほどエイナ達が繰り出したのと同じように、一点に集中させ突破するような軌道だった。ガルクはなお動かず、あえて受ける――直後、ガルクの真正面に炎の嵐が吹き荒れた。


 視界を覆う赤、赤、赤……とはいえ魔力を感じ取って誰がどこにいるかくらいはわかるので、ガルクも仲間達の挙動は把握していることだろう。

 炎を目くらましにして、攻撃を仕掛けるつもりだろうか……業火はガルクを中心にして渦を巻く。ただ肝心のガルク自身には届いていない。


 これではエイナ達も近寄れないのでは……と思ったのだが、それでも前に進む人物が。それはリーゼであり、ハルバードが炎の中でかざされ、障壁へと突き刺さる……!

 途端、業火による轟音の中で金属音めいたものが聞こえた。その刃には先ほどと同様に全力の魔力が込められているはず。この時点でガルクの障壁はビクともしないのだが……アルトとエイナが続き、剣を決める。さらに今度こそ後れを取ることがないようにと、フィリに加えシルヴィも前に出た。


 二人もまた障壁を砕くべく、斬撃を放つ――カティ達の魔法に加えての攻撃。炎が生じる中でどのような技を放ったのか、確認することは難しいが……それでもそれぞれが渾身の一撃を放ったことだけは、しかと理解できる。

 刹那、炎が一気に膨らんだ。リーゼ達の魔力に反応し、魔法にさらに勢いがついた……これが狙いか。火薬のように爆発的にさらに魔力が膨らみ、炎が拡散。こちらへと近づいてくる……!


「退避!」


 デヴァルスが叫んだ時点で全員が既に行動を開始していた。魔力障壁を展開し、俺は数歩分後退する。直後、炎の勢いがさらに増すと……視界が赤色で塗りつぶされた――






「……また、ずいぶんと派手にやったもんだな」


 炎が収まり始め、それでもくすぶり続ける中で俺は呟いた。ガルクを中心に床面は焦げているし……天井にも影響が及んでいる。


「ソフィア、大丈夫か?」


 審判をしていた彼女へ呼び掛けると、彼女はガルクから距離を置いて小さく手を挙げた。


「問題ありません……が、もはや審判どころではありませんね」

「まったくだ。しかし、無茶な攻撃だったな。室内でやるような技法じゃない……天井とか、修理できるのか?」

「こちらが責任を持って対処するから心配しないでくれ」


 デヴァルスが述べる。まあそれなら、と思いながら状況を確認。まず肝心のガルクは相も変わらず同じ所に佇んでいる。そして仲間達は距離を置いていた。あの業火の中をかいくぐって斬り込んだメンバーもとりあえず無傷。ただ「死ぬほど熱かった」と漏らすアルトの姿もあるので、結構ギリギリだった模様。


 そして、攻撃についてだが……、


「神霊ガルク、どうだ?」


 緊張の一瞬。ガルクは少し首を振った後、


『うむ、障壁が一瞬砕け、こちらを貫く刃の感触があった。その時点で肝心の刃に魔力が残っていなかったため、我は無傷ではあるが』

「けど、攻撃は通ったわけだ」


 問題は、誰がやったのか、だよな。というか全員が一丸となった結果なわけで、誰を合格とするのか。


「……ルオンさんは、この強固な障壁を一人でたたき壊したんだろ?」


 ふいにクウザから質問が飛んできた。魔王との戦いの最中、ガルクと遭遇してしまった時の話である。


『いや、あの時と状況も違う。戦った時の魔法では破壊できないくらいにはなっている』


 と、俺ではなくガルクが補足した。


『最初にルオン殿と戦った時と比べて、障壁も厚くしているからな』


 それはつまり、もし俺が午前中に戦っていたらその耐久性能がいかんなく発揮されていた、ということなんだろうな。


「それはそうか……で、デヴァルスさん、結果はどうなんだ? これ、誰が合格なのかわからないんじゃ?」


 もっともなクウザの疑問に対しデヴァルスは、


「勘違いしていないか?」

「……ん?」

「神霊ガルクに一撃食らわせたら終了……ルールがシンプルで試練を始める前に色々質問もあったわけだが、肝心の部分をあえて語っていなかったな。それは、人数だ」

「……枠は二つ。二人じゃないのか?」

「中継者が一人、というのが当然のように思っているが、やり方次第では複数人でやる、というのも可能だ。この場合はバランス調整に苦戦するかもしれないが、それでも中継者がゼロよりはずっとやりやすい」


 ……なるほど、そうきたか。


 単独でガルクに一撃与えられる人物がいたら無条件でその人を採用したが、そういう形にはならなかった。となれば当然連携で対処するしかないわけだが……これでは誰がやったのかわからない可能性が高かったし、実際にそういう形になった。


 けれどデヴァルスにとってみれば、誰がやったのかはあまり関心がない。必要なのはどういう形であれガルクの障壁を突破できるだけの力を持っているか、という事実。

 複数人で中継者の役割を兼ねることができるのであれば、今回採用できる、というわけか。


 中継者をやるためにふさわしい形を模索し、こういう試練で試すことに行き着いたのだろう。デヴァルスの目論見としては上々な結果かな?


「やり方はさらに複雑になってしまうが……ま、今回の結果は想定内だし、問題はない。ということで、この場にいる全員が合格扱いとする。おそらく二組に分かれ、中継者が一人ずつに補助が数名という形になると思う。詳しいやり方はすぐにでも教える。ここからそちらは長い時間拘束されるだろうけど、我慢してくれ」


 全員が頷いた。この結果に納得しているかどうかはわからないけど、協力できるということで従うようだ。


「それじゃあ、早速移動しようか。あ、ルオンさん達はここに残ってくれ。試練を受けた面々に説明を終えた後、ここに戻ってくるから――」


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