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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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残された謎

 野営地ではのんびりと過ごしていたアルト達と合流。トラブルの類いは一切なく、俺達が迷宮に入って以降も特段変化はなかったとのことだった。


「魔物が外に出てくるくらいはあってもおかしくなかったのにな」

「迷宮の趣旨を考慮すれば、余計な被害を出さないようにするくらいは処置するだろうな。ともかく、無事で良かった」


 そこから撤収準備に入る。それ自体はスムーズにいき、ネレイドの力を借りて俺達は再び海中へと潜り込んだ。


「さて、武具は得た……が、ここからが本番だ」


 ペンダントを手で転がしながら俺は仲間達へ語る。


「星神の使徒に対する検証を、今から全力でやらなければならない。時間にして十日を切っているわけだが……ガルク、現状でバールクス王国にどのくらいの面子が集まっているか、わかるか?」

『まだ距離があるため本体と接続できん。大陸に近づけばすぐに報告できる』

「わかった。城に戻ったら各々どうするか考えながら可能性を探っていくことになるだろう。この移動中が一番まとまった休憩時間かもしれないから、よーく休んでくれ」

「……少し、疲労もあるからね」


 リーゼが肩を回しながら俺へ告げる。


「迷宮内であまり感じなかったけれど、外に出てこうして体を確認していると……疲労していたのがよくわかるわ。もっと精進しないといけないわね」

「あれだけ無茶苦茶な迷宮は後にも先にもなさそうだし、そもそも最速攻略なんてことも二度とないだろうから、考えなくていいとは思うけどな」

「そうかしら?」


 小首を傾げるリーゼ。その態度からは「組織で戦っていく上で、必要になってくるかもしれないのでは?」と語っているように思えた。


「結局、魔降については謎ばかり残りましたね」


 ソフィアが座り込み、俺へ言う。


「終始私達に語りかけていましたが、思うように情報を伝えてはもらえませんでした」

「少なくとも、あの迷宮構造から考えて映像全てのセリフが嘘だとは思えない。実際に何かを予見してああした場所を残したと考えるのが妥当なんだろうけど」

「ルオン様と同じ、転生者と考えるのが理に適っていますが」

「うーん……それにしてはやり方が回りくどい気もするな」


 魔降という存在である以上、力もあったはず。星神の出現を予期していたのだとしたら、あんな手の込んだ迷宮を作るよりももっと良い方法があったはず。


「一番気になったのは、俺があの迷宮について情報を持っていた、という事実を理解しながら喋っていたことだな」

「ルオン様がこの世界に現われることを予期していた?」

「予期、とまではいかないんじゃないかな。精々この世界の情報を知りうる存在がいることを理解していたくらいだな……俺や、アランのように」


 うん、これならなんだか納得がいくかな? 俺のような転生者がこの世界には度々現われる。しかもその存在はこの世界にまつわる知識を保有している。その知識を持っていることを前提として、試練の迷宮を作った……これならまあ、なんとなく迷宮を作った動機にはなる。


 でも、問題はなぜ転生者の存在を知り得ることができたのか……というかこれは、俺やアランという転生者という存在そのものに関連することだ。今まで得た情報を考えると、どうやら俺は偶然というよりは故意に近い形でこの世界へ転生した可能性がある。俺は事故死してしまったわけだけど、その意識はこの世界へ向かうようにできていた、とか……無理矢理な理屈ではあるが、そんな風にしか考えられなくなってきている。


「……俺は」


 そこで目を細め、俺は言う。


「たぶん、この世界に誰かの手によって転生した。仮にそれが星神そのものであったのなら……俺やアランに干渉してきたのも理由にはなるけど」

「自分を滅ぼそうとしている存在を、呼び寄せるのは変じゃないか?」


 疑問を寄せたのはオルディア。俺は小さく頷き、


「星神と俺は幾度となく戦っている……アランについては最終的に星神に飲み込まれてしまったわけだが……俺を取り込もうとするために星神が動いているという見方もできるけど、それだったらこの世界へ転生した時点でやるべきだよな」

「星神がわざわざ行動を起こすにしては、回りくどいのは確かね」


 カティが述べる。彼女は口元に手を当て、


「そうね、これが物語だったら……星神自身、こちらにちょっかいを掛けて世界を破滅させようとしているけれど、内心では滅ぼして欲しいと願っている、とか」

「ベタだなあ……ただ、その着眼点は良いかもしれない」


 俺の言及にカティは眉をひそめ、


「どういうこと?」

「例えば星神という存在はあまりに巨大なわけだが……その中に、破滅を願う人格とか、世界を守る人格とか、そういうのに分かれていてもおかしくはないだろ?」

「ああ、なるほど」

「星神に関連する戦いの中で、俺に対し呼び掛ける存在もいるにはいた」


 竜の国における、ネフメイザとの戦い……あの時、俺は敵意を向けてくる存在とは異なる何かに触れたのだ。


「だから、星神の中にも滅びを止めようとする何かがいる可能性がある……あるいは単純に、星神に対抗するための勢力が世界のどこかにいる。星神による世界の崩壊を予知していて、それを止めるために策を講じている」


 それがなぜ転生、という形なのか疑問はあるけれど……ただ確実に言えるのは、きっと俺は星神と戦うために、この世界へやってきたのではないか。

 そして俺は、戦えるだけの資格がある……のかもしれない。


「帰ってからはひたすら検証か……大変そうだな」


 頭をかきながらアルトが呟く。そんな彼に俺は、


「そっちは暇していただろ? なら、これから気合いを入れて働いてくれよ」

「それを言われたらなあ……確かに何もしなかったわけだし、頑張りたいところではあるが……果たして出番はあるのか?」

「あるさ、絶対に」


 確信を伴った言葉。それだけは強く断言できた。

 集った全員が一丸となってこそ、おそらく打倒できる存在……それが星神という存在であるのは間違いない。使徒との戦いはその前哨戦であり、来たるべき決戦の前にここでまずは成果を出さなければならない。


 星神としては、使徒を出現させて俺達をあざ笑っているのか、それとも他に意図でもあるのか……それはわからないが、俺達に星神打倒のヒントを与えたのは事実。

 侮っているのなら、後悔させてやる……そう心の中で思う間に、俺達は海の中を走り続けた――


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