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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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プログラム

 剣に魔力を収束させると同時、俺は自分の偽物に対し接近戦を仕掛けた。相手はそれに応じる構えであり、剣を数度打ち合い――鍔迫り合いとなる。

 目の前の偽物は無表情。例えば笑顔になるとか、感情を表現する機能についてはまったくないようだ。表情からどういう状況なのか読むことは難しいので、そこの辺りも考慮してこういう処置にしたのか。


 膂力が互角なのでこのまま拮抗していても勝敗は決まらない。ただ、長期戦になったら魔力の消耗は偽物の方が早いだろう。粘って勝つのが堅実的だが、俺はそうしなかった。

 瞬間的に力を高めて偽物の剣を押し返す。魔力制御についても互角のはずだが、俺の思考パターンを完全に真似ているわけではないためか、こちらの挙動に偽物は対応に一歩遅れた。


 剣が入る余地はあるか――と思ったが、追撃の一閃を偽物はすぐさま防御した。甘くはないか。


「ただ、付け入る隙はありそうだな」


 どうやら目の前の偽物はコンピュータのプログラムに近い形で動いている。計算などは瞬時にできるだろうし魔法や技の取得選択は常に最善だろう。

 剣を振ることによる癖などは確かに真似できているのだが、一つ言うなら俺が思考し続け瞬間的に判断した物事に対し、一瞬ではあるが対応が遅れる。偽物はきっとこちらの出方を窺い、カウンターをとることをメインにしているのかもしれない。たぶん製作者の魔降がそういう風にプログラムした、と解釈できる。


 人間らしい動きを排除して徹底的に最善手を取り続ける……脅威的であり、また俺には実現が難しい立ち回りだが、先ほどのように俺が突発的に何かをしたら一瞬だけ対応が遅れることもあるようだ。

 ただ、それは決定的なものではない。よって、相手を崩すための手法が必須なのだが……どうやって打ち崩すか鍔迫り合いの中で思考し、結論を頭の中でまとめる。


 足を前に出す。剣を薙ぎ偽物がそれを弾く。ど派手な魔法を使わない肉弾戦であり、地味に思えるのだが……もし手を抜けば間違いなく偽物から刃が飛んでくる。相手の剣が入っても、一撃で致命的な事態に陥る可能性は低いのだが……それをきっかけにしてこちらの牙城を崩してくるかもしれない。できる限り食らわない方がいいだろう。


 で、肝心の偽物を倒す手法だが……能力が一緒ということは、当然防御能力だって完全再現されているはず。つまり生半可な一撃は絶対に通用しない。

 なら、俺に手立てはあるのか……候補はあった。開発中の、あらゆる敵を特攻対象へと変化する魔力解析の剣戟。


 偽物はそれを使用してくる気配はない。というか俺の能力を把握しているのなら、最初の段階から使用してもおかしくはない。ただし、それをしないのは……おそらく技法そのものが開発途上であるからだ。

 最適解を導き続ける偽物からすれば、未完成の技はおそらく不明瞭であり技や魔法の取得選択に置いて対象外ということだろう。なら、俺がとれる方法は一つ。


 即ち――この場でその技法を利用し、打ち破る。ただしそれだけでは足らないだろう。確実に偽物へこの技が決まれば倒せるかもしれないが、プラスアルファがなければ当てるのは厳しいはず。なら――


 俺は呼吸を整え、刀身に特攻の刃を収束させる。持っている剣に集まった魔力を見据え、偽物はどうやら警戒を露わにした。

 どういった技法なのかは認識しているようだ。そしてわずかながら目を細めた。基本的に無表情なのでどう思ったかはわからない……そもそも思考があるのかもわからないが、その挙動は「なぜその技を使うのか」という疑問に近いものだったかもしれない。


 効率性を重視するプログラムであれば、未完成の品物を出そうとは考えないわけだ……俺は走る。再度剣を合わせた直後、わずかながら偽物の持つ魔力剣が欠けた。

 それは小さなものであり、決定打となるようなものではないが……偽物は後退。変化に一度距離を置いて様子を見るという選択らしい。


 無論、俺は追撃する。再び剣同士がぶつかり合うと、金属音と共にまたも偽物の剣に刃こぼれが発生する。

 直後、偽物は剣に魔力を集めて刃こぼれを消した。実際の剣ではないのでそのようなこともできる。もし相手がこの技を使用してきてこっちの剣が損傷したらまずいことになるのだが……それでも偽物は特攻能力を使わない。


 相手からすれば不完全な行為であり、無謀な作戦だと思っていることだろうか……なら、


「もう一つ、無謀なことをやってみようか」


 頭の中でもう一つの技法を思い浮かべる。ただこれは、使用するのに色々と問題がある。使ったら短時間で勝負を決めなければいけないため、もう少し偽物の出方を窺う必要がある。

 よって、探りを入れるべく前に出る。接近し剣を合わせると同時、偽物との剣のさばき合いが始まった。


 ガガガガ、と剣同士がぶつかる度に魔力が弾け、周囲に風圧と共に拡散していく。俺が攻勢に出て偽物がそれを弾くような形だが、時折こちらの隙を突いて反撃が飛んでくる。だが俺はそれを冷静に見極めて対処。事なきを得る。


 ただこっちは集中を維持して相手の攻撃を防がなければならないのに対し、偽物はプログラムによる無慈悲な防御である。魔力の消耗はあっちが早いにしろ、こちらは迷宮に潜り続けその果ての戦いだ。体力などにはまだ余裕はあるけれど、どこかで集中の糸がプツンと切れてしまう可能性も否定できない。俺自身自覚できていない疲労が溜まっている、などということもあるからな……よって、どちらが優位なのかは不明だ。


 もっとも、俺としてはこんな戦いをずっと続けるつもりはない……確認したかったのは俺が攻勢に出ている時の挙動だ。おそらく俺が逃げれば魔法で追撃を掛けるが、接近戦に持ち込んだ場合はどうなのか……魔法を使うのであれば背後――仲間達にも被害が及ぶ可能性がある。これから使う技法はレスベイルの力を借りるため、なおさら危なくなる。ソフィア達だってきちんと防御するのはわかっているが、それでも怪我人が出るリスクは避けたいので、魔法を使わせないようにしたい。


 俺は接近戦でも魔法を使うケースがあるのだが、偽物の場合は……これだけ打ち合っても魔法を使う気配がない。たぶんその余裕を俺の攻撃を防御するか反撃するために残しているということなのだろう。

 うん、この様子なら魔法は来ない……そう確信を抱いた俺は、剣を振りながらレスベイルへ指示。技法を――発動させた。


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