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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星神の使徒

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最速攻略へ向けて

 俺達が戻ると海岸付近では既に野営の準備が整っていた。アルトに声を掛けると彼は威勢良く、


「お、ルオンさん。こっちは準備できたぞ」

「ありがとう。魔物の気配とかはあったか?」

「いや、まったく。迷宮の入口は見つかったのか?」

「ああ、俺の記憶通りの姿だった。とりあえず魔降も実在しているという解釈でよさそうだな」

「で、森の中に魔物は?」

「まったくいなかった。外に出ているような気配もないな」


 ということは、ここは魔物すらいない島ということ。植物などが存在しているので微生物とか昆虫とかはいると思うけど、動物などもいない。

 単純に島にそうした生物が上陸することもなかったというのが理由かもしれないが……ふむ、植物学者とかをこの島へ案内したら、始めて発見されるような植物ばかり、とかだろうか?


 まあそんなことを検証している暇はないので、淡々と攻略準備を進めよう……魔物がいないことは確認したが、俺達が迷宮に入り込んでどうなるかはわからない。よってイグノスが遠見の魔法で迷宮の入口を観察して、出現した場合に備えてもらうことにした。


「魔物の能力はアルト達でも迎撃できると思うけど、数が多ければ厄介だ。野営地を守るような戦いだと人数的にも大変だろうし、最悪竜で空中に逃げて他の島へ避難してもらえればいい」

「そうならないよう頑張るさ……しかし、他の島へ避難ってどうすれば? 方角とかわからないぞ」

「そこは私達が」


 と、ネレイドが発言した。


「私達なら人が住む島へ案内できます」

「わかった。ならそれでいこう……ただ、ルオンさん達にその状況を連絡しないといけないよな?」

「使い魔を残しておく。迷宮内は魔力を断絶されるわけでもないからたぶん問題はないはずだ。もし連絡不能になったら、警戒度を上げて安全第一に行動すること。いいね」

「はーい」


 キャルンが手を上げて賛同。そんな様子を見ていたコーリとかは軽い返事だったためか笑い始めた。


「よし、それじゃあ行こうか……突入組、荷物の確認をしてくれ」


 それから俺達は迷宮へ持ち込む荷物のチェックを行う。さすがに深い迷宮かつ、場合によっては分かれて行動しなければならない以上は、単独行動になってもどうにかできるような準備をしてきた。全員が革製のウエストポーチを携帯し、その中には薬やら携帯食料やらが詰め込まれている。

 あまりに多すぎてもかさばるだけなのだが、少なければそれはそれでキツイ。それに短期間で攻略するからといって最低限というのもまずい。俺の知識があるとはいえ、数日入り込んでも対応できるような準備が必要。


 そういうわけで限られた時間で試行錯誤した結果、ウエストポーチの中身がある。それを再度確認して、不安があれば待機組の所にある物資から補充しておく。


「準備はいいか?」


 問い掛けに突入メンバーは全員一様に頷いた。では、攻略開始だ。

 俺達は再び森の中へ。獣道を進み入口へ辿り着くと、今度は迷いなく中へと入り込む。


 明かりを照らすと奥へと続く道があった。光量を上げて歩を進め、やがて全員が左腕に腕輪を装着した。

 それはすぐさま効果を発揮する。腕輪が突如発光したかと思うと、自分周囲を照らす明かりとなる。


「調整はできるな?」


 全員頷く――これは魔力に反応して明かりを発する道具。効果はそれだけなのだが、基本暗闇に包まれた迷宮をクリアするのに、何もせず周囲を照らす道具が必要だったのだ。


 俺が生み出した明かりについては光量があるため大きな範囲を照らすことができる。だから魔物との戦いについてはこれを用いる方が良いのだが、例えば仲間達とはぐれてしまった場合……俺の明かりの範囲から脱してしまうと突然暗闇に放り投げられるわけだ。それは危険だし、何より咄嗟の対応ができない。分断された結果どのような場所に辿り着くのかもわからない以上、しっかりと備えをしておく必要があった……その答えが、腕輪の明かりだ。


「ただ、微量ではあるけど魔力を消費していく。だから魔力が少し危ないと思ったらすぐに薬を飲んで補給すること」


 魔力を回復する薬、というのは確かに存在するのだが、ゲームのように飲んであっさりと回復、というのは相当高価なものでないと難しい。ソフィアの尽力によりそれらを揃えることはできたのだが、飲んで体に浸透するまで魔力回復のタイムラグはある。この辺りの見極めは個人個人でやってもらわないといけないので、気掛かりではあるのだが……仲間に任せるしかない。


「本当なら罠にはまらず、薬を飲む機会はない間に攻略したいところだけど、な」

「ルオン様、それと連絡手段ですが」

「ああ、そうだった。右腕にも腕輪を」


 今度は反対側に別の腕輪を装着。それは通信機のようなもので、微弱な魔力を発してはぐれた場合に連絡をとれる。


「腕輪を装備している者同士で魔力を探知できるらしいから、もし何かあった場合はすぐに連絡して合流することを優先する……この迷宮内であれば通用するはずだ」


 まあ、さすがに道具の検証などを完全にできなかったので、どこまで範囲があるのかは不明な点も多いのだが……ちなみにこれらの道具は便利なのだが今まで使用しなかったのは、余計な物を装備することで魔力が乱され戦闘能力が多少なりとも落ちてしまうことを危惧してだ。実際腕輪の魔力が少しばかり気になるのだが、これはその内慣れるだろう。ただ戦闘面については、結構注意しなければならない。


「全員、装備品の特性を理解しながら動いてくれ。違和感があるのは仕方がないから、それを戦いながら修正するように。迷宮の敵については……視認できたら極力アドバイスをするつもりだ……もし強敵だった場合どうするかは適宜決める。それと」


 と、俺は仲間達を一瞥。


「明かりを絶えず発している以上、確実に敵が寄ってくる。こればかりはどうしようもないため、戦闘は避けられない。ただ、その間も罠などの感知については細心の注意を向けること。敵を倒すより罠に掛かる方が面倒だからな」

「時間的な制約がある以上、ですね」


 ソフィアの言葉。俺は「そうだ」と返事をした。

 のんびり攻略するのならそれほど難しくないが、最速攻略を目指すなら、集中力を切らしたら終わりだ。


「それでは――行くぞ」


 号令と共に、俺達は動き始める。RTAのスタートであった。


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