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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魂の聖域

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幻獣との戦い

 俺はデヴァルスと話をした翌日、ユノーを呼んで事情説明をすることにした。一番の目的は、アンヴェレートについて伝えること。

 客室を一つ借りて俺はテーブルの上に乗る天使と話をする。面と向かって彼女と話をするのは俺とソフィアだけで、他にはいない。


「――そっかぁ」


 冷静に努め一通り語り終えると、ユノーはそんな感想を漏らした。


「堕天使になったというのがすごく驚きだけどさ。でもなんというか、マスターらしいなとは思う」

「マスター、らしい?」

「マスターはこうだと決めたら突っ走るような性格だったからねえ……たぶんそのロスタルド、という天使に勝つために、これしか方法がないってことで採用したんでしょ。マスターのことを知ってるあたしからしたら、確かにやりそうだなー、とは思う」


 ……ロスタルドと遭遇し、強引に叩き伏せようとしたこともあるからな。天使ユノーの言い分は、間違っていないのだろう。


「確かに最近まで生きていたのだから残念かなー、とは思うけど……でも、話ができるんでしょ?」

「正直そこは、迷っている部分でもある。相手は幻獣……今までとは違う戦いを要求されるからな」


 デヴァルスとの話で名前が出た幻獣テラを始め、厄介な能力を所持している……例えばの話、俺の場合ならたぶん倒すことはできると思う。

 そもそも攻撃力自体はさすがにガルクなどを下回るし、正攻法で戦っても俺についてはダメージがゼロだ。ソフィアは……微妙なところではあるが、確実にレベルアップはしているし、幻獣対策として鍛練を重ねれば、耐久することはできるだろう。


 問題は、これが素材集めということ……デヴァルスの語った幻獣テラの場合、外観はシカのような見た目だったはずで、その角をゲットできればいい。ただ俺が全力でやるとたぶん角ごと消し炭である。つまり幻獣が滅ばないくらいの出力か、あるいは角には一切ダメージを与えぬまま、仕留める必要がある。失敗はできないし、大変なのは間違いない。


「色々と考えたけど、面倒な要素満載だからな……ちなみにユノーは俺達がなぜ組織として動いているかは聞いたか?」

「うん、神様みたいな存在と戦うんだよね?」

「その通りだ。それに備えて今は力を付けることを優先しているんだけど――」

「ルオン様、実戦経験を積む、という意味合いでもいいのではないですか?」


 思わぬソフィアの言葉、見返すと彼女は視線を合わせ、


「幻獣の特性は様々ですが……そうした難敵に対し戦えるようになれば、組織の方々としても大きな経験になるでしょう」

「ああ、うん。確かにそうだけど……」

「それに、現時点で遺跡を巡っても成果が出ない可能性が高いようですし……ならば幻獣との戦いにシフトした方がいいと思います」


 ……ソフィアの言うことは一理あるか。


「そうだな……なら、やるか」

「マスターに会えるんだね?」

「そういうことになるな。ただデヴァルスさん自身、かなり大変であると語っていた以上、覚悟してやらないといけないな」

「ならばデヴァルスさんからさらに詳しく話を聞くことにしましょうか」


 ソフィアの提案に俺は頷き、この場の会話は終了。

 そして天界の長を呼んで作戦会議を始める。ユノーは専門的な話になるためか部屋を脱し、俺とソフィアで応対することに。


「やる、か……うん、幻獣に関する情報は近い内にまとめよう」

「得られた材料はどうすればいいんだ?」

「こちらに渡してもらえればいい。それを用いて魔法を使い、使い魔である天使とも引き合わせよう……で、だ」

「問題はどう戦うかだけど……」

「情報については渡すことができる……ただ俺を含め天界側は忙しいから手伝うのは厳しいが、任せてもいいか?」

「ああ、それでいいよ」


 例えば天使リリトなんかも厳しいかもしれないな。現在連絡役に回っているわけで、急にいなくなったら混乱する。

 それらを考慮に入れると、リーゼなどを始めとした戦闘員が今回戦うメンバーになりそうだな……ソフィアの言う通り『神』との戦い前にこうした実戦があってもいい。力を付けた成果を示すにはいい機会かもしれない。


「よし、ルオンさん……他に手に入れたい鉱石などについてもこちらから提示する。これなら戦闘員じゃなくても回収できるかもしれないな。それと残る遺跡探索についてもこちらで対応する……まあそれで情報が得られる可能性は相当低いから、ルオンさん達に頑張ってもらわないと」

「そうだな……どのくらい時間が掛かるだろうか?」

「大陸外に生息する幻獣もいるからなそれらの所へ赴き、撃破……ということをやっていると、下手すれば春を迎えるかもしれない」

「春、か。急いでいないとはいえ、そのくらいである程度決着をつけたいな」


 情報収集は欠かさず行い、もし異変があったら都度対応する……こんな感じでいいだろう。


「それに、俺としては興味もある」


 さらにデヴァルスが口を開く。


「幻獣という存在は、天使にとっても興味はあるが害はないしあまり近づこうとしなかった……これを機に生態などを調べるのも悪くないかな」

「世の学者なんかも多数参加したがりそうな話だよな」

「そうだが、この辺りも協議した方がいいのか……ま、組織単位で動く以上は国側もどうするか考えるか。さて、話は決まった以上さっさと動くことにしよう。ルオンさん、そちらはどうする?」

「幻獣についての調査はさすがに無理だろうから、俺は仕事を処理しながら仲間のレベルアップに努めるよ」

「それがいいか……で、幻獣狩りの日取りについてだが」

「それはそっちの調査などによって変わるだろ?」

「なら段取りができたら連絡するってことで」


 打ち合わせ終了。新たな戦いの始まりのようだ。


「ちなみにだが、ソフィアはどうする?」


 と、尋ねてはみたけど当然同行するのは無理だろうな。


「私は、戦いたいのですが……」


 ソフィアならそう返答するよなあ。さて、どうしたものか。


「……ひとまず、提案すればいいんじゃないか?」


 そんなデヴァルスの提案。たぶん天使からも「ソフィアの力が必要だ」と提言するつもりなのだろう。


「ソフィア、どうするかは俺の一存で決められないから、そこは協議の上でってことで」

「……わかりました」


 どこか不服そうではあったが彼女は同意――ともあれ次の目的が定まった。幻獣相手となるわけだが、


「俺が早急にやることは一つだな」

「何だ?」


 デヴァルスの疑問にこちらは笑みを示し、


「仲間達の実力を改めて確認しておく……幻獣という存在に立ち向かえるかどうかを。その間に、デヴァルスさんはできる限り幻獣に関して情報を集めておいてくれ――」


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