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賢者の剣  作者: 陽山純樹
英雄の下に集う者達

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結集した力

 俺はレスベイルを砂浜に召喚して、魔法陣の上に立たせる。そこでまずはデヴァルスへ質問。


「この魔法陣にはどういう効果が?」

「既に魔法陣に様々な天使の魔力を注ぎ込んでいる……対象がルオンさんの使い魔だからな。だからこれを使って集めた天使達の力を収束させることにした」


 デヴァルスは手に持っている物を俺に見せる。それは一本の剣。彼の隣には側近のネルがいるのだが、彼女の手には同じような剣がいくつも握られていた。


「天使達が力を結集させた剣……といってもこれで直接斬ったはったするものではない。言ってみればこれは触媒だ。儀礼的な意味合いがあると思ってもらえればいい」


 ネルが作業を開始する。レスベイルが立つ魔法陣を中心にして砂浜に剣を突き立て始める。

 見ようによっては確かに儀式か何かである……と、ここでエーメルが近づいてきて。


「見てくれは悪いな」

「そうだな」


 デヴァルス、同意するのか。


「これについては申し訳ない。どこでも実行できる手法を考案したことで、見栄えが悪くなった」

「なんだか急ごしらえって感じにも聞こえるんだけど……」

「ああ、そこについては心配いらない。きちんと力は注ぐから」


 本当だろうか……と疑ってみたが、天使の仕事だから大丈夫だろうと思い直す。

 会話の間にもネルは淡々と仕事をこなしていく。突き立てた剣でどうやら陣のようなものを描いているのか、法則性はわからないが、他の剣の位置を確かめては剣を地面に刺している。


「どのくらい時間は掛かる?」

「剣を刺し終えたらすぐに実行する。ただそこからレスベイルの能力をテストしなければいけないからな」


 あ、そっか。その時間を考慮すると、結構時間を食うかもしれないな。俺はクロワへ首を向けると、彼は肩をすくめ、


「ここまできたんだ。少々時間が掛かるとしてもまったく問題はないぞ。むしろルオンさんがテストを終えるくらいまで待ってもいいだろう。それに」


 クロワは周囲を見回す。そこには騎士を始め精霊や天使など、様々な種族がいる。


「この場にいる面々についてきちんと把握しておかなければ、まとまるものもまとまらないだろう」


 そうだな。どういう面々が集ったかを確認しなければ、まずいよな。


「そういうわけで僕は部隊編成などをどうするか改めて考慮する。レスベイルの強化をする者以外は僕の所に来てもらえないだろうか。あ、ルオンさんは問題ない」


 ――よって、テントを設営してクロワを含め指揮官クラスの面々は話し合いを始めた。ちなみに天使の代表はリリト。デヴァルスとネルはレスベイルに力を注ぐとしてこちらにいる。


「確認作業だけで今日一日は潰れるだろうな」


 そうデヴァルスは見解を示す。


「時間はあるみたいだからゆっくりやろう」

「わかった……で、俺は何をすればいい?」

「ルオンさんはここで見てもらえればいいさ」


 ということは、暇になってしまった……ちなみにソフィアはテントへ向かってしまった。名目上バールクス王国側の騎士は彼女が率いているからな。


 結果、俺は砂浜に座り込んでデヴァルス達の作業を眺めるだけ……まさかここに来て何もしないということになるとは。


「休憩していればいいんじゃないか?」


 そんな俺に対し、デヴァルスはそう語る。


「魔界に入ったら嫌というほど動くことになるだろうから」

「……確かにそうだな」


 俺は同意しながら作業を黙って眺める。そうこうする内に剣を突き刺し終えたのか、ネルがレスベイルから離れた。


「よし、それじゃあ始めるとするか」


 デヴァルスは述べると、レスベイルと対峙するような形で砂浜に立ち、手をかざした。

 それでどうやら魔力をレスベイルへと流しているらしい……いや、ちょっと違うな。強いて言えばレスベイルだけでなく、周囲に突き立てた剣や魔法陣そのものにも流している。


 たぶんだけど、剣などに封じられた魔力をデヴァルスが操作して、レスベイルに力を入れ込むのだろう――その予想は当たりで、魔法陣や剣が少しずつ魔力を発露していく。


 次に魔力が次第にレスベイルを取り巻き始める。魔力の流れは穏やかで、見た目的に天使達の力を集結させた魔力を与えているようには見えないな。

 少しずつ魔力が高まりレスベイルにも魔力が注がれ始める。とはいえそれは言わば道筋を作っているようで、少しずつ天使の体の中へと入っていくのだろう。


 慎重にデヴァルスは作業を進めていることが俺の目にも理解できる……と、ふいに魔力の流れが止まった。どうしたんだ?


「よし、これで第一段階は終了……ルオンさん、ここからは一気にいくぞ」


 彼は額に浮かび上がった汗を拭う。どうやら天界の長にとっても重労働らしい目の前の作業。俺が小さく頷くと、彼は笑い、


「ネル、頼む」


 側近の名を呼ぶ。見れば彼女はレスベイルを挟んでデヴァルスの反対側にいた。

 そして同時に両手を鎧天使へとかざし、魔力を流す。同時、一気に魔力が膨らみそれが粒子となり、レスベイルの周囲に漂い始める。


 魔力の奔流――そう表現するものが目の前に現われ、それらが一気にレスベイルへと注がれていく。魔法陣と突き立てられた剣が共鳴し、レスベイルの体に力が注ぎ込まれていく。

 その量は、想像を絶するほどのもの……たぶん俺とレスベイルが魔力を共有していたとしたら、間違いなく抱えることができないほどのもの。そういえば俺はレスベイルを出し入れしているけど、その辺に問題はないのだろうか……いや、そこはさすがにデヴァルスも考慮はしているか。


 そうこうする内に魔力がやがて収まり始める。時間にして数分程度の出来事だろうか。なんだかあっという間であり、拍子抜けするくらいだった。


「よし、完了だ」


 デヴァルスが一息つく。それと共に、地面に刺さっていた剣が全て魔力を使い果たしたかボロボロと崩れ落ち始めた。


「それこそ、天使達の力を結集させたものを注いだから、頼もしい戦力となったはずだ。言ってくれれば調整もするし、さらに魔力を注ぎたければ請け負う」

「まだ強化できるのか?」

「武具などじゃないんだから、拡張性があってもいいだろ?」


 笑うデヴァルス。後のことまで考慮するとは、さすがだ。


「あ、作業を見て心配になったかもしれないが、出し入れは自由にできるから心配するな」

「それはありがたい……で、今から試した方がいいよな」

「そうだな。とはいえ今回真価を発揮する機会があるのかどうかわからないが」

「そういう可能性も危惧していたんだ。時間的に余裕があるのなら、しっかりやっておきたい」


 俺の言葉にデヴァルスは気になったか訝しげな目を示し……やがて理解したのか、


「ああ、そういうことか。確かに懸念される部分ではあるな。よし、そういうことなら早速試そうじゃないか!」


 気合いの入ったデヴァルスの声が砂浜に響く。俺はそれに苦笑しつつも、「頼む」と言い渡しレスベイルと向かい合い、動くよう命令を発した。


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