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賢者の剣  作者: 陽山純樹
英雄の下に集う者達

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両輪の人材

 エーメルとの模擬戦闘を見守っていたアナスタシアは、戦闘結果を見てどうするか思いついたようで、ユスカとカトラを残し国へ戻ることとなった。

 で、エーメルは組織で戦闘員となる面々を集め模擬戦闘を再開した。扉を開ければ気合いの入った声とエイナ達が剣を振り、それに応じ大剣を構えるエーメルの姿が映る……その中にはもちろんリーゼもいた。なんというか、やっぱりここに居座るようだ。


 ソフィアもあきらめていたし、「思うがままやらせてあげましょう」とのことだったので、俺もこれ以上言及はせず、訓練場を後にする。

 そして広間に新たな来訪者の姿が……今度はクウザだった。


「久しぶりだなルオンさん、元気にしていたか?」

「そっちはどうだ?」

「まあまあかな。事情については聞いたよ。まったく、魔王との戦いでも相当だったのに、それよりも強い存在と戦うとは」


 苦笑するクウザ。そんな顔をするのは無理もない。


「……この場に来てもらっておいて、言及するのもアレかと思うが、良かったのか?」

「無論だよ。ここに呼んでもらえて光栄だと思っているくらいだ」


 クウザはにこやかに返答。そしてすぐさま不安そうな表情となり、


「問題はこちらが役に立てるかどうかだが……」

「正直、俺も敵である『神』についてはわからないことも多い。だからどういう形でも手助けが欲しいし、またその中でクウザについては頼りにしてる――戦闘研究両方で」

「そういう人材は少ないか」

「旅で出会った人間を採用すれば、そういう人間も必然的に増えてくるとは思うけど、やっぱり少ないとは思う」


 両輪で活躍できる人材もいると思っている。研究を戦闘に生かすために両方の立ち位置の人物がいた方が良い結果を生むと考えたからだ。


「正直、期待されて不安が大きいのも事実」


 そこでクウザが語り出す。


「けど、ルオンさんの頼みなら頑張ってみるさ」

「頼む。あ、現在のところ動いている研究者がリチャルしかいないし、当面は研究準備という形になると思うけど」

「わかった。なら彼と一緒に動くとしよう。魔界の戦いについてはどうするんだ?」

「それにでもできれば参加してほしい。忙しくなると思うけど」

「構わないさ。よろしくルオンさん」

「こちらこそ」


 というわけでクウザとリチャルを引き合わせて、今後どうするかを決めてもらう……ひとまずすぐに来れそうな人は集まったかな。

 戦力面は以降も集められるとは思うけど、研究面が難しいかなあ……なおかつクウザ以外にも両輪で動ける人員を増やしておいた方がいい。そうなると――


「……組織作りだからな。そう慌てなくてもいいか」


 俺はそう呟き、一度思考を切り替える。今はやる気を見せている戦闘メンバーが魔界での戦いに参戦するのかどうか。

 デヴァルスが作成した異空間――訓練場を訪れると、エーメルにやられたアルト達が倒れる光景があった。


「強いぞ……こいつ……」

「そりゃあ仮にも魔王候補だからな」


 と、胸を張るエーメルに対し、アルトはゆっくりと起き上がる。


「堕天使との戦いでちょっとは自信がついたんだが……な」

「能力に対する相性の問題とかもあるからな。一概に言えないのは確かだぞ」

「だが例えばルオンさんやソフィアさんなら、相性もほとんど関係なく倒してしまうだろう?」

「否定はしないな」


 ……堕天使との戦いについては、俺なんかは攻撃が通用しにくかったからソフィアと融合魔法を使うことにしたわけだが、それは確実に仕留めるためという見方もできる。逃げられる可能性を考慮し、相手に対策がありとしてああいう手法をとったわけだが、俺は堕天使相手に単独で戦い抜ける実力を所持していることは間違いないと思う。


 アルトはそうした強大な存在と真正面から打ち合いをしたわけだが、それでも魔王候補のエーメルの前には手も足も出ない。あの戦いでは仲間が一致団結して戦っていたことに加え、味方になった堕天使アンヴェレートからの援護もあった。言わばチームプレイの勝利ということで、今回の模擬戦では考慮に入れない方がいいのかもしれない。


 ではもしチームプレイで仕掛けたとしたなら結果はどうなるのか……と一瞬考えたが、肝心のアルト達がそういうことを一切やらなさそうな雰囲気なので、結局この疑問が解決することはなさそうだった。


「……さて、私は休憩しよう」


 エーメルはそう述べて大剣をしまうと歩き始める。


「次の訓練は昼からにしよう。その間に次はどうするかきちんと決めておく」


 言い残してして彼女は異空間を出た。それを見送った俺は、アルトへ問い掛けた。


「大変そうだな」

「まあな。けど自分の弱い部分なんかが明確になったし、さらに強くなることのできる方針については見出した」

「そうか……ただ『神』の前に魔界へ赴き、エーメルと同じ魔王候補であるビゼルの打倒が待っている。そちらの作戦に参加する上では十分な戦力だと思うんだが――」

「それで満足しているわけにはいかないわ」


 と、これはリーゼの言。彼女は倒れ伏していたのだが、言葉と共に起き上がった。


「魔界の戦いはあくまで通過点だからね」

「通過点、か……ただ現状を見るに目標達成には相当時間が掛かりそうだな」

「さすがに一日二日では成果もないわよ。けど戦いを通して学ぶべき点はたくさんあった。その課題に取り組んでいくことが大切ね」


 真面目である。彼女としては今後の戦いで貢献したいから必死なんだろうけど、なぜそこまでという疑問はつきまとう。

 その辺り、いずれ親交が深まったら話を聞くことができるのだろうか……単純に「ソフィアの友人だから」という理由だけではないだろうとは思うし。


「俺達も休憩するか」


 アルトの提案に訓練に参加していた者達は一様に頷き、部屋を出るべく動き始めた。


「そういえばルオンさんはどうしてここに?」


 アルトからの疑問。そこで俺は肩をすくめ、


「ひとまずすぐに来る人は集まったから、様子を見に来ただけだ」

「ああそうなのか……魔界で戦う際の作戦なんかについては――」

「現在クロワが戦略を立てている。地理などは彼の方が詳しいし、ひとまずあちらに任せることにしている」


 というわけで、暇なわけだが……そこでリーゼが一言。


「ルオンも訓練に参加する?」

「……ひとまず今日は遠慮しておくよ」


 いずれ俺が剣を振る時がくるかもしれないな……そんなことを思いながら俺は仲間達と共に部屋を出る。

 それと同時に俺はなおも思考する。そう遠くない内に戦略が決まり、どうするかは明確となる。その時、この場にいる面々はどう戦うべきなのか。


 改めて、考えることが多い。魔界を攻略するという複雑さに加え、組織作り的な観点で物事を見ているためだろうか。


「ま、この辺りは……頑張るしかないな」


 そんな結論を導き出し――ひとまず思考を打ち切り、彼らの休憩に付き合うことにした。


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