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賢者の剣  作者: 陽山純樹
英雄の下に集う者達

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王女の武器

 エーメルは模擬戦闘にすぐさま了承し、アルト達も魔王候補が相手ということで燃え始めた。ついでにリーゼにも連絡した結果、「やりましょう」とずいぶんとやる気を見せていた。

 で、ユスカやカトラについてもその旨を告げ、翌日には組織に参加するメンバーについてはデヴァルスが作った異空間に集まった。アナスタシアなんかは隅の方で待機し戦いの行く末を見守るような構え。


 そして、


「さあ! どこからでもかかってこい!」


 と、気合いを入れたエーメルの声が飛んできてなんだかげんなりとなる。


「エーメル……やる気があるのはいいけど、模擬戦闘だからな」

「そんなことはわかっている。例えそうだとしても全力を尽くすのが礼儀というものだろう」


 本当に、戦いのことになると変わるな……ともあれ段取りが整ったので、どう戦うかを検討してみる。


「で、誰が戦う……と、その前に」


 俺はメンバーの中にエイナがいることに注目。


「エイナは組織に入るってことでいいのか?」

「まだわからないが、ソフィア王女がいる以上はおそらく」

「私が進言したんです」


 当の本人であるソフィアが言及。ちなみに彼女は旅をしていた時と同じ格好となっている。この施設に入る場合、格好を変えるらしい。


「護衛は必要だろうという結論に達したので」

「場合によっては私とソフィアが組んでもいいんじゃない?」


 これはリーゼの発言。ちなみに彼女は初めて出会った時と同様完全武装で、やはり武器は持っていない。

 そして今の言及だが……正直、リーゼの方はリーゼの方で護衛すべきだと思うんだけど……ソフィアとリーゼを組ませたら、エイナの胃に穴が開きそうだな。


 彼女の言葉にエイナは小さく息をつく。なんとなくそういうことになりそうだと推測し、現段階であきらめているのかもしれない。

 リーゼやソフィアのことについては、ひとまず組織が設立しどのように動くのか固まってからでも遅くはないかな……というわけで話を戻す。


「それじゃあエイナもエーメルと手合わせするってことでいいんだな。問題はどう戦う? 徒党を組んで戦うか?」

「……ルオンさんとしては」


 ここでアルトが口を開いた。


「魔王候補という存在である魔族で勝てるくらいの実力はないと、厳しいと思っているんじゃないか?」

「うーん……エーメルは現在生きている魔族の中で実力的に最上位に位置するといっても過言じゃない。そこまで到達しなくとも――」

「そういう話じゃないと思うのよね」


 俺の言及に対し、リーゼが割って入る。


「エーメルの強さを基準に評価する、では駄目だと思うのよ」

「というと?」

「ルオン達の最終目標は『神』と呼ばれる存在でしょう?」


 ――現時点で俺の事情を含め、この場にいる面々には全て伝えてあるため、話は通じる。


「そこに到達するためには、エーメルを踏み台にするくらいの勢いじゃないと駄目……ではないの?」


 言わんとしていることは理解できるのだが……しかし踏み台扱いされたエーメルはどう思うのか。


「そのくらい意気のある方が、戦い抜けるかもしれないな」


 リーゼの言い方に対し、エーメルはそう応じた。怒っていない様子。


「今後同士となる者達が強くなるのは個人的には嬉しい。ついでに言えば対等に戦える存在が増えることは私としても良いな」


 戦闘狂的な言い分も含まれているなあ……エーメルはさらに不敵な笑みを浮かべ、


「それに言っておくが、私も現時点で立ち止まっているつもりはない。もし勝ったとしても、次勝った時私が上回っているかもしれない……私もまた成長することを忘れるなよ」

「その方が張り合いもあるわね。そうやって鍛錬を積み重ねていけば、少しずつでもソフィア達に認められる可能性が高まるかしら」

「だろうな。一つ言っておくが、現段階で私よりソフィアさんの方がずっと強い。そしてソフィアさんはルオンさんの方が圧倒的と語っているわけだ。私という存在は乗り越えなければならない障害だな」


 ……要約すると「認められたければ私の屍を越えていけ」みたいな感じだろうか。その発言によりこの場にいる面々に火が付いたらしく、士気も上がった……って、ちょっと待てよ。エイナやアルト達はともかく、リーゼはたきつけたらまずかったのではないか?


 まあでも今更言っても遅いか……。


「それで話を戻すけど、どう戦う? 俺としては数人で連携して、とかでもいいと思ったんだけど」

「単独の戦力分析をする必要はあるでしょう?」


 そう言って前に出たのはリーゼ。彼女が先んじて戦う気か。


「まずは私からでいいかしら?」

「こちらは誰でも構わないぞ」


 大剣を軽く素振りしながらエーメルは応じる。

 ……あの大剣に真正面から応じることができるのは現段階ではアルトくらいだろうな。エイナやキャルン、ユスカなんかは攻撃を受け流すなどの対処をしなければ難しそうな雰囲気。


 単純な力押しではまあ通用しない相手なわけだが……リーゼはどう出るのか。


「ところで王女様」

「リーゼでいいわ」

「そうか。武器はどうしたんだ? まさか素手というわけでもないだろ?」

「素手でも戦えるようにはしてあるけど、鎧を身につけているしあまり有用ではないわね」


 戦えるのかよ。ソフィアに視線を投げると答えが返ってきた。


「その、武術全般を習得していまして」

「魔法とかは使えないのか?」

「魔力を用いた技術は一通り扱えますが、武術関係が主です」


 なるほど……考える間にリーゼがエーメルへ返答する。


「基本、かさばるから魔法で武器を作っているのよ」

「そうなのか。魔法なら強度なども設定できるため、上手いことすれば良い武具になりそうだが……『神』との戦いで力不足にならないか?」

「どうするかは今後考えればいいと思うわ」


 答えながらリーゼは魔法で武器を生み出す――ただそれは、彼女の体格とはあまりに不釣り合いな武器……ハルバードだった。


「またずいぶんと凶悪な武器だな……」


 感想を漏らしながら思考する。ゲームでハルバードというのは存在していて、斧技と槍技の両方が使える特殊武器だった。

 ただその特殊性のためか、ハルバードそのものに強力な武器は存在せず、後半以降は槍か斧、どちらで戦うか選択に迫られる。ハルバードそのものを強化すれば後半でも使えるけど、ものになるまで相当大変だし、だったらより有用な武具に素材を活用した方がいいので、やっぱり使われることはなかったように思う。


 しかし魔法で作るなら、切れ味なども調整はできるし有用と言えば有用か……ただもし『神』に挑むとなれば、相応の武器を開発しなければならないかもしれないな。


「ほう、武器だけなら私に対抗できそうだが」

「もちろん、普通に戦うだけならすぐに終わってしまう」


 リーゼは応じる。自分の実力を理解した上での発言。


「けど、私が保有している技術を用いれば……通用するかもしれない」

「かもしれない、か」

「一騎打ちを挑むのは、この技法が通用するかどうかを見極めたいというのもあるのよ」

「なるほど、理解した。存分にやるといい」


 エーメルの言葉にリーゼは頷き――魔力を活性化させる。

 さすがに魔族が発する身体強化と比べれば威圧感はない。けれど大気がギシリと音を上げそうな雰囲気を発しているのは事実。


 傍目からは単なる身体強化に見えるのだが……リーゼが言うからには特別製なんだろうな。

 しかし、なんでそんなものを編み出していたのか……その辺疑問なんだけど、後で訊けばいいか。


「それじゃあ始めましょうか」

「ああ、いつでもいいぞ」


 両者は会話を成し――双方武器を構えた。


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