組織作り
「そして、ルオン殿はやることがある……それは人選だ」
「組織に誰を入れるか、ですか」
クローディウス王の言葉に答えると、彼はゆっくりと首肯した。
「うむ。城内の外れに研究施設がある。規模はそれなりで魔法の研究なども可能な場所だ。そこを拠点にして動いてもらえればいいし、人を入れればいい」
「研究施設……使っていないんですか?」
「魔王との戦いで人も少なくなってしまったからな。現在は使われていない」
戦争の爪痕……か。
「そして、人選についてだが……さすがに城に入れるとなると、信頼における人物が望ましい」
「信頼……」
「戦力的な意味合いでは……クロワ殿には悪いが、それを見極める意味でこの戦いを使ってみてもいいかもしれない」
つまり……組織に誰を入れるか、戦いなどを考慮して判断すべきではないか、と。
「例えば魔族とつながっているかなどの身体検査に加え、信頼が置ける人物なのかなどの判断は我らや精霊の力を使えば難しくない。そうした上で『神』との戦いに加わる意思を持つ者……研究面、戦闘面含め、人を募るべきだろう。ルオン殿としても勝手に選ばれるよりはいいはずだ」
確かにそうだな……ふむ、この城の敷地内に『神』に挑む組織を立ち上げる、か。
魔界における戦いが終わって以降、俺は間違いなくこの城の中で過ごすことになる。当然迂闊に旅などできなくなるし、ならばいっそのこと城内にそういう組織を設立させ、精霊や天使などと連携して準備を進めるという手法はありかもしれない。
俺としては城の中に入ったら身動きがとれなくなるし、だからこそ不安もあったわけだけど……クローディウス王の提案ならば俺もすんなりと受け入れることができるな。
なおかつソフィアに関する問題もこれで解決する。城内に組織があれば彼女が出る出ない云々の話もなくなるわけだから。そういう意味で、この提案は願ったり叶ったりと言える。
問題は、人材についてだけど……。
「……まず、天使や精霊の協力を得ることは確実ですし、彼らもまたこの城にいてくれる可能性がありますが」
「そこは重臣と相談する必要はあるが、彼らがいることで政治的なメリットもある。悪い顔はしないだろう」
「わかりました。なら人材について……これは身辺調査などを終えれば、どのような人でもいいんですか?」
「例えば犯罪を行ったことがある、といった素行の者を採用するのは厳しいかもしれないが、ルオン殿はそういう人物を引き入れたいわけではないだろう?」
王の問いに俺は頷く。
「そうだな、例えば精霊や天使、あるいはアナスタシア侯爵を含めた信頼における面々からの推薦、あるいはルオン殿がこれまで旅をし続けて出会った者達。そういう面々であればそう問題にはならないだろう。もっとも、だからといって身辺調査を怠るわけではないが」
……クローディウス王はこちらの考えを読んだ上で語っているな。俺として最初に浮かんだのは、旅を通じて知り合ってきた者達だ。
堕天使との戦いまでついてきてくれたリチャルなんかは研究分野で色々と協力してくれるだろう。他には天使や精霊も、さすがに長とか神霊とかが常駐するのは難しいだろうけど、誰か派遣してもらえると大変ありがたい。
他に考えられるとすれば、王が語ったようにこれまで出会って共に戦った面々か。例えばアルトやキャルン。彼らは魔王との戦いだけでなく堕天使との戦いにも参戦した。その事実を踏まえれば城側も実績として評価してくれるだろうし、なおかつ彼らも協力してくれる可能性は高い。
さらに言えば魔王との戦いで本来主役を担ったはずの面々も……そういえばオルディアとかどうしているんだろうか。探せば協力してくれるかな?
「こちらも、信頼できる面々を集めてみようとは思う」
そうクローディウス王は続ける。
「ただ、ルオン殿が事情を話しても良いと納得できる面々となれば、審査基準は高い壁となるだろう」
「ああ、そうですね。『神』のことを話す必要がある……加え、俺の素性についても話さなければならない」
事情を説明している人もいるし、そういう人を優先するべきか? 色々と考えてはみたがすぐに結論は出ないな。
「……もし、魔界の戦いで協力が欲しいと思う者がいたら、私に言ってくれ」
さらに王は述べる。こちらは頷き、
「魔界へ向かう人選についてはどうなっていますか?」
「事情を話せる者となるとこちらも難易度が高い……しかしルオン殿やソフィアの考えをくみ取って理解する者もいる。規模はそう大きくはならないかもしれないが、兵器を破壊するという目的ならば達成できるかもしれん」
「わかりました。クロワが一番の懸念としている兵器破壊……人間側はそれを優先としましょう。そしてビゼルとの決戦において、魔族達で足りない部分は天使や精霊、竜が補うということで」
特に天使や精霊の方が事情を話せるという意味合いでは人数が集まりそうだよな。
「そうだな……天使を始めとした力を持つ種族が参戦する以上、人間の出番はないかもしれないとも思ったが……」
「いえ、今後のことを考えれば必要だと思います」
「政治的な意味合いで、か」
コクリと頷く。大陸を蹂躙した人間達が手を貸した。この事実は良くも悪くも魔族達にとっては衝撃だろう。
後世、ともに歩んでいく関係を作っていくのならば、こうした意味で第一歩を刻むべきだとは思う……人間側はともかく、魔族側の心象に大きく影響するだろう。反発だってあるだろうけど……少なくとも俺達は魔界を我が物としようとしている勢力を潰すために動いているわけだ。クロワ次第だが、悪くは語られないはず。
「うむ、わかった……それと、ソフィアが戻ってきたことを含め、各国へ通達しておいた。加えて協力も願ったが、正直戦力が来るかどうかは未知数だな」
「そこは仕方がないと思います……と、クローディウス王、俺とソフィアが行方不明となったことは、公にはしていませんが各国には連絡したんですか?」
「秘密を守れる範囲で、な。これは国同士というより、王族として親交のある者達に言ったというのが正確か」
なるほど、例えば友人とか、そういう人にか。
「アラスティン王国のカナン王などは、ずいぶんと心を痛めていた……もしかすると今回協力してくれるかもしれん」
「さすがにカナン王が直接赴くとは思えませんが、下手するとボスロ将軍とか出てきそうですね」
「かもしれん」
まああの人なら魔界へ行くとしても節度ある行動をしてくれるだろう。
「他にも、王族同士で繋がりのある者達がくるかもしれん」
「それは例えば、クローディウス王の知り合いですか?」
「私よりはソフィアの方かもな」
ソフィアの友人、ねえ。そういえば俺ってソフィアの人間関係とかあまり知らないんだよな。
旅の中でチラッと話をしたことはあるけど、深くは尋ねていない……深入りしない理由は特にないんだけど。
「ソフィアの知り合いならば、信頼できるか?」
王の問いに俺は頷き、
「そうですね……ソフィアとしてもそうした人物がいてくれた方が良いかもしれません」
「うむ、事情は伝えたから場合によってはこちらに来るかもしれん。それと平行して、ルオン殿もまた戦いに必要な人材を考えてもらい、招集しよう」
「わかりました」
俺は幾人かを頭の中でリストアップし、返事をする。組織作り……大変そうだが、やりがいもありそうだ。




