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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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危機の対策

 勢いを増したロスタルドに対し、最初に動いたのは――ロミルダだった。

 彼女が発する紫の光が勢いを増した――刹那、ロスタルドの闇が次第に崩れていく。


『何……?』


 これはロスタルドも予想外だったらしい。呟いた瞬間、ロミルダの力がさらに増した。

 それは――紛れもなく彼女が所持する武器『皇竜玉』の力を発揮したもの。ロスタルドもまさか、これほどの力を発揮するとは、と予想外だろう。


 俺としても、ここで力を発揮するとは……そういう心境があった。けれど横にいるソフィアは冷静。いつかこういう時が来ると、確信していたようだ。

 ロミルダの力が真正面から、ロスタルドの闇を打ち破る。アンヴェレートやセルガの魔法も重ねているとはいえ、ロミルダの力が決定打となったのは間違いない。


 彼女の光はそれだけに留まらず、ロスタルドの体を捉える――!


『ぐ、お……!』


 呻いた。これは確実に効いている……!


『準備を進める二人以外にも、まだ切り札はいたか』


 納得したようなロスタルドの言葉。もし矛先がロミルダに向けられたなら……そういう懸念はあったが、そこでエイナやアルトが迫った。

 同時に煌めく剣閃。双方の一撃は光に包まれる魔神を捉え、確実に抉っていく。


 ロスタルドはそれに声は発しなかったが、たじろいだのは事実。そこへ畳み掛けるようにセルガとロミルダが、追撃の魔法を構築した。

 両者共に、全力――それがどれほどの威力になるのかと目を見張った矢先、白と紫が放たれ、真っ直ぐ魔神へと突き刺さった。


『があ……!』


 声と同時、その体が一時見えなくなる。エイナ達は後退し、ディーチェやクオトはいつ来てもいいように構え直す。

 そうした中でロミルダとセルガの魔法がどこまでも輝き続ける……やがて光が途切れると、片膝立ちとなるロスタルド――闇がはがれ、堕天使の姿の彼が現れた。


「……なるほど、な」


 何かを納得したような所作。


「アンヴェレートの策略なのかは知らないが、少なくとも俺を欺きうるだけの攻撃手法を、多数確立したわけか」

「それがわかったとしても、その手法を覆すだけの力がなければ意味がないわね」


 アンヴェレートの手痛い言葉。するとロスタルドは――笑った。


「ああ、わかっているさ」


 走る。即座にアルトが間合いを詰め、剣を一閃する。

 それを真正面から受けるロスタルド。当然アルトは衝撃波をお見舞いし、その動きを大いに鈍らせる。


「アンヴェレート、お前はわかっていたのだろう。こちらには多少なりともプライドがあった。堕天使となったこの私が、人間などに後れを取るなどとはあり得ないと」


 その言葉、俺はまずいと悟る。


「だがそんなものを捨て……どちらが上かを証明するだけなら、方法はいくらでもあるぞ」


 闇が膨れあがる。アルトは即座に後退しようとしたが、なおも執拗に闇が彼へと迫る。

 そこへ援護に入ったのはセルガ。光が闇を貫き、間近に迫った闇を大いに消し飛ばす。


 だがそれで終わらない。まるで触手のように――ロスタルドの中心に闇が拡散し、仲間達は全員迎撃を開始する。

 これは……アンヴェレートが動くかと思ったが、彼女は静観の構え。理由はわかっている。ロスタルドはまだ余力を残している。アンヴェレートが下手に手出しすると、この状況下でさらなる攻撃が来てもおかしくない。


 ただ、この無茶なやり方は――


「そちらも理解できているはずだな」

「ええそうね。ずいぶんとまあ捨て身の戦法ね」


 ――明らかに、大量の魔力を消費している。


「魔力を凄まじい速度で消費しているわね。ここまでの攻防でずいぶんと減っているはず。どれだけもつのかしら?」

「人間を軽く始末できればここまでする必要はなかったが、な。貴様や横にいる人間に対し十分な力を残しておきたかったが、仕方があるまい」


 ロスタルドが応じる――触手の一本一本も仲間達の保有する天使の防具を突き破るだけの威力を持たせなければならない。よって必然的にロスタルドは相当の魔力を送り込んで闇を操作している。

 堕天使となって魔力量が天使と比べても増大した……とはいえ無限ではない。このままの調子では、アンヴェレートの発言通りどれだけもつのか疑問ではある。


 しかし、お構いなしにロスタルドは闇を操作する――その時だった。


「っ……!」


 声。見れば闇がディーチェの脇腹を掠めていた。


「ディーチェ!」


 クオトが叫ぶ。当の彼女は応じることができず、大きく後退していた。

 とはいえ安全な場所はない……するとディーチェは俺達のいる地点まで下がってきた。


「戦力激減だな」


 ロスタルドが宣告。無論、こうなった場合の手はあるし、アンヴェレートの想定内ではある。


「行くぞ!」


 アルトが叫ぶ。それと同時に突撃を開始し、エイナが追随する。


 その間に、ディーチェへ魔法を掛けるイグノス。支援役及び回復役の彼に治療をしてもらう……が、一人欠けただけで演習においてかなり不利になった。彼女が治療する時間については、どうしても耐えなければならない。

 ロスタルドにしてみれば間違いなく勝機。一度触手を解除し、もちうる力で押し込もうとする。


 アルトとエイナが迫る。両者が同時に放った剣戟に対しロスタルドは真正面から迎え撃ち――激突する。

 二人の剣が、勢いの増したロスタルドをどうにか押し留める。本来ならここでキャルンと合わせディーチェが牽制をするはずだが、さすがにキャルン単独ではキツいため、横からの援護はない。


 セルガやロミルダは……魔法を放とうと構える。それにロスタルドはさらに出力を上げた。魔法を放つ前に勝負を決める気か!


 その目論見は――こちらの策がなければおそらく成功した。アルトとエイナは押され始め、キャルンは動けない。クオトについては背後から斬りかかることもできるだろうけど、最初のような奇襲に成功しても、ロスタルドはダメージ覚悟で彼に仕掛けるだろう。間違いなくクオトを仕留められるだけの余力は残しているはず。


 だから、この攻防は――刹那、アルトとエイナの足下に変化が起きた。

 敵が何かしたのではない。二人の影が、突然隆起し始めた。


 ロスタルドもそれに気付いた。何事かと思いながらも押し込む勢いは変わっていない……だが影から出現した存在は、そこを狙い仕掛ける。

 堕天使へ向け放たれたのは、爪。見た目漆黒かつ鬼のような形をしているそれは、鋭利に伸びた爪でロスタルドの体を打つ。


 これはリチャルの魔物……アンヴェレートが思いついた策の一つ。影に魔物を忍ばせ、誰かが怪我をしてしまった場合などに備え、講じた対策だ。

 結果、ロスタルドの勢いが――確実に鈍った。思わぬ攻撃に堕天使も逡巡する。


 そこで、セルガの魔法が届き、ロスタルドへ直撃した。


「ぐっ……!」


 呻いた後、白い火柱に包まれる。危機を脱したアルトとエイナは引き下がり、剣を構え直した。


「終わりました」


 イグノスの言葉。それと共にディーチェが前に出る。


「怪我による違和感もない。いける」


 頼もしい言葉。それと同時、ロスタルドを取り巻いていた白い火柱が、消えた。


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