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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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黒き魔神

 闇がロスタルドの周囲に発した直後、これまでと明らかに違うものだと気付く。

 それは攻撃するようなものではない。ロスタルドの体を取り巻き、腕や足へ巻き付いていく。


「いよいよ、ってところかしら」


 アンヴェレートが言う……俺はそんな彼女を見据え、小さく息をついた。


(もしエイナさん達に狙いを定めたら、敵の戦法も大きく変わるはずよ。広範囲攻撃を封じるのならば、やり方はある程度限られてくる)


 訓練途中、アンヴェレートはそう語っていた。


(ま、多少なりとも手傷を負わせた以降は、エイナさん達の攻撃を効かないような対策と、さらなる攻撃力の強化……この二点を合わせて実行できるとしたら、ロスタルドそのものが変化するような形が望ましいかしら)


 闇が膨らむ。言ってみればそれは、黒き魔神……体が一回り大きくなり、さらに闇そのものが形を成したかのような見た目。


『始めるか』


 そしてこもるような声――刹那、ロスタルドが足を前に出した。

 刹那、魔神がアルトの眼前へ辿り着く。これにはアルトも反応できず、瞠目することしか――


「このっ!」


 いち早く動いたのはディーチェ。剣を差し向けロスタルドが振りかざした拳を弾いた。

 しかし、それで軌道はほとんど変わらない……が、動きが鈍りアルトが対処できる時間を稼いだ。結果、回避行動に移ったアルトは紙一重でよけることに成功する。


『分の悪い勝負だな』


 ロスタルドが声を発する。


『こちらは人間の誰かに拳を叩き込めば、それで勝負は決する。さすがにこの私を見て手を抜くことはできまい? その状態で一人でも欠けたら――』

「無論、理解しているさ」


 エイナの声。彼女は走り、アルトに変わり前に出る。


「ならば簡単な話だ。誰も戦闘不能になることなく、貴様を倒す」

『愚かだな』


 エイナの剣が放たれる。彼女が持つ武器は単純な能力強化だが――力を大いに乗せた彼女の剣戟は、それで十分すぎるものだった。

 刃が闇に食い込んだ瞬間、縦に振り下ろされる。ザアアアア、と砂をかむような音が響いたかと思うと、闇が大きくはがれ落ちた。


 それなりに魔神の体に傷はつけれた。しかしロスタルドは斬撃の痕跡を一瞬のうちに塞ぎ、元に戻してしまう。再生能力――


「セルガ!」


 エイナが叫ぶ。同時、彼の両手がまばゆく輝き、光を放つ準備を整える。


 彼の武器は、首に掛けられたペンダント――セルガ自身の魔力を仕込む技法を、大量の魔力を吸収できる天使の武具で用いることで、擬似的ながら本来と同じような技法を行使できるというわけだ。

 もっとも、本来の技法と比べれば威力は落ちるけれど……セルガは光を放つ。ロスタルドが回避に移るよりも早く、光がその体を駆け抜けた。


「来るぞ!」


 エイナがさらに叫ぶ。同時、光を平然と押しのけながら魔神が突っ込んでくる――!!

 それを阻むように対抗するのは、エイナとアルトの両名。二人は身体強化を施し、限界ギリギリまで出力を上げ、魔神の突撃に対応しようとする。


 無駄だ――そんな風にロスタルドは言いたかったかもしれないが、それより先に両者が激突した。途端、エイナの体がわずかにのけぞった――が、アルトの勢いが功を奏し、踏み留まることに成功する。

 とはいえ、瞬間的な力で押さえただけで均衡が破られるのは時間の問題――そこで援護に入ったのは、ロミルダだった。


「いけ――!!」


 声と共に発した光。それはエイナ達を無理矢理突破しようとするロスタルドの横から、入った。


 その威力は、間違いなくロスタルドの想定を上回っていた――衝撃により体が傾き、大きく体勢を崩す魔神の姿。好機だと悟ったか、セルガが追撃の光を放つ。

 バランスを崩した魔神は、その魔法を回避できず直撃。先ほどよりも威力は低いはずだが、それでも吹き飛ばすことに成功する。


 よし、と心の中で思わず呟いた。猪突猛進な戦法に助けられているところもあるが、仲間達は対抗できている。

 魔神が床へたたきつけられる。そこへアルトが前に出て、斬撃を繰り出した。


 振り下ろされた刃を、魔神は倒れながら腕でガードする。直後、衝撃波が炸裂し、その体を覆った。

 ダメージはそれほどないと思うが……と、ここでロスタルドは大剣を弾くと素早く起き上がった。エイナ達はそれを見て追撃を止める。


『……来ないのか?』


 先ほどと異なる声音。やや怒気を含んでいるそれは、明らかにこれまでとは違う雰囲気。


「さすがにそろそろヤバいと思ったか?」


 クオトが問う。俺とソフィアの魔法については、着実に準備が進んでいる。

 しかも仲間達の奮闘を見て、気持ちが高ぶったか少々収束が早い。このままいけば、想定していたよりも――


『挑発には乗らないぞ』


 ロスタルドが答える。ただしやはり怒気のようなものが混ざっているな。


『なるほど、これでも突破するのは難しいと』

「あなたが人間に対し、そんな風に発言する時が来るとは、ね」


 アンヴェレートが言う。その顔には満面の笑み。


「彼らと手を組んで正解だったわ」

『……ならば、後悔させてやろう』


 右腕に魔力。とはいえそれはどうも接近戦に用いるようなものではない。


『この戦いは絶妙なバランスで成り立っている。広範囲の攻撃を使えば貴様が止め、接近戦を人間共が封殺する。どれか一つでも欠ければそれで終わりにもかかわらず、突破できない』

「ならば、どうするのかしら?」

『――こうするのだよ』


 腕をかざした。次の瞬間、右手から黒い魔力が生じ、俺達へ真っ直ぐ――向かってくる!

 するとそれに対抗したのがアンヴェレート。彼女は即座に腕を振り、迫り来る闇へ対抗するように自身もまた闇を放った。


 結果、両者の中間地点で激突する。闇が舞い、仲間達が退避する中で、どこまでもせめぎ合う。


『人間共を始末するより、お前をどうにかする方が早いかもしれないな』

「見くびられたものね」


 笑みを絶やさずアンヴェレートは力を行使し続ける――とはいえこのままの状態ではロスタルド自身隙が生じる。

 当然アルトやエイナは走る。しかしロスタルドはもう片方の腕を振ることにより対処した。


 刹那、地面から棘のような闇が生じる。それに進路を塞がれたアルト達は、動きを止めた。


『床にも仕込みはしておいたが、アンヴェレートが見えないながら防いでいた。しかしヤツが動けない今ならば、どうとでもなる』


 床に生える闇が広がる。ロスタルドを中心に徐々に床を侵食していくが……例えば俺やソフィアの足下に突然出現するわけではない。この辺りもアンヴェレートが対処しているのか。

 だがこれではアルト達も対処は難しい……が、それを打破するのはセルガとロミルダか。


 二人はそれを理解しているのか、同時に闇へ向け魔法を放った。すると棘は魔法に弾かれ消えていく……が、すぐにまた再生。

 ならばと、両者はアンヴェレートの援護すべき魔法を放つ。光と闇が、ロスタルドの力へ差し向けられる――


 直後、ロスタルドの闇が一気に押され始める。勝ったかと思った矢先、ロスタルドは左手をかざした。

 まさか、三人まとめて吹き飛ばそうというのか――


『終わりだ』


 闇が勢いを増す。だが次の瞬間、一際魔法の光が輝き、闇へ対抗すべく力を発揮する光景が映った。


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