表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

478/1082

天界への帰還

 デヴァルスから到着地点に戻れば天界へ帰還できると言われていたので、急行。その場には魔法陣が淡い光を伴っていた。

 ただ地面に抉られたような跡がある。アランが破壊しようとやったのだろう。しかしこの魔法陣は天界側の魔法陣を破壊しない限り壊せず、あきらめたといったところか。


 転移魔法陣を介し俺は天界へと戻る。そこで待っていたのは、


「ルオンさん、無事だったか」


 デヴァルスの声。見ればネルに治療してもらっている彼がいた。加えもう一人の側近であるリリトは会議室内を動き回っている。


 室内の状況は散々だった。テーブルや椅子は吹き飛び床面も黒く焦げたような跡が見受けられる。どうやらリリトは魔法を行使して後片付けをしており、その一方でネルはデヴァルスを治療中。またソフィアは傍らでそうした光景を眺め、隣にロミルダがいる。彼女は無事のようだ。


 加えネルやリリトも無傷なのだが……ふむ、状況から察するに、


「デヴァルスさん、自分が身を挺してネルさんとかを守ったな?」

「お、よくわかったな」

「無茶苦茶です」


 治療をしているネルが抗議の声を上げる。


「本来は私やリリトがお守りしなければならないのに――」

「といってもアランに対抗できたのは俺だけだからな。むざむざネル達がやられるのを見るというのは、俺もさすがに無理だ」

「しかし……」

「結果的に犠牲者は出なかったんだ。それでよしとしよう」


 ネルはなおも不満げではあったが、それ以上問答する気はないらしく沈黙した。


「さてルオンさん、状況は?」

「アランには逃げられた。ほとんど捨て身に近い行動だったけどね。あとロスタルドは、アンヴェレートが追ったけどこっちも同じように」


 アランについてかいつまんで説明すると、デヴァルスは苦笑した。


「人間をやめてしまったか……彼女の予感通り、やはり裏があったわけだな」


 視線をロミルダへ向ける。ただ彼女はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。

 そんな様子に、デヴァルスはフォローを入れる。


「こちらは君の助言を聞いた上でアランを天界に招いた。責任はこちらにある上、気に病む必要はない。むしろ君にも危ない目に遭わせたわけだから、こちらの明確な落ち度もある」

「それは……」

「どちらにせよ君に過失はないさ。助言してくれた以上、むしろ恩人だな」


 デヴァルスは笑みを示す。それでロミルダはやや沈黙を置き……やがて小さく頷いた。

 納得したようなので話を戻す。まずは俺が口を開いた。


「デヴァルスさん、他の仲間は?」

「アランはご丁寧にルオンさん達が使った転移魔法陣以外破壊したから帰って来られない。ひとまず他の部下を回し連絡している。ただまあ、俺達以外ほとんど出払っていたのは幸いだったな」

「それで、どうするんですか?」


 ネルの問い。デヴァルスはニヤリと笑い、


「目論見がわかった以上、相手の出方を窺いつつ対処だな。幸いルオンさんに関する事柄でアランの魔力の質を調査しているから、追跡できる。粒子に変化したと言っていたが、それでも追跡は可能だろう」


 なら、アランについては問題なさそうか。


「あとはアンヴェレートについてだが……あ、その前に確認だけど、俺達と戦っていたロスタルドは本物か?」

「おそらくな。影武者である可能性もあるが、あれだけ魔力を多大に抱えている相手だ。そう解釈して構わないと思うぜ」

「本物が登場したのには、当然理由があると思うけど……」


 呟きにデヴァルスは「ああ」と応じた。


「天使の堕天化が目的だったのではと思う。本物が姿を現せば天使側も反応するからな――堕天化について情報はこっちに伝わっているために対策は立てられていると考えるのが普通。しかしロスタルドは自分が出れば多少なりとも天使が出てくるだろうと考えたんだろ。遭遇したらこちらの対策を上回る力を用いて堕天化……そんなところか」


 結果的にこちらの策が功を奏し、堕天化するような天使が現れずに済んだ……が、アランという別の問題が生まれた。


「ああ、ルオンさん達。一つだけ頼みがある」

「今回のことを口外するな、だろ?」


 こちらの言葉にデヴァルスはにべもなく頷いた。


「今回のことが知られれば、陣頭指揮できなくなるからな。俺がいなければルオンさん達の風当たりも強くなる。頼むよ」

「というより、このようなことがあった以上私達が以降はやりますから」


 治療を終えたネルが言う。だがデヴァルスは首を左右に振った。


「ここで俺が退場すればロスタルドの思うつぼだ。アランにとっても長が出ないとわかれば派手に動くかもしれん」

「しかし……」

「宴もまだまだ続く。この大陸は色々と面倒な事態になりつつある……ここで俺が引っ込めばさらに混沌となるのは必定。悪いがこのまま前に立たせてもらう」


 彼の主張は力強い言葉によって行われた。それを見たネルはあきらめたように息をつく。


「わかりました。しかし天界の外で行動される場合は一報と護衛をお願いします」

「ああ、わかった」


 どこか安請け合いに見えるが……ネルは追及しないまま立ち上がった。


「デヴァルス様、これからどうなさいますか?」

「まずはアンヴェレートの帰還を待とう。アランについてはルオンさんがそれなりにダメージを与えたようだからしばし無視していい。ロスタルドは健在であるため、そちらを優先すべきだな」

「わかりました。では――」


 言いかけた時、魔法陣が起動。俺達が使っていたものしか残っていないため、現れるのは間違いなく――


「あら、ずいぶんと荒れているわね」


 アンヴェレートの姿。一同注目すると、彼女は肩をすくめた。


「残念だけど逃げられたわ。でもすみかの手がかりくらいは見つけたわよ」

「ロスタルドについては、空を探せって言っていたけどやっぱりそういう場所だったのか?」


 こちらの質問に彼女は「ええ」と応じる。


「地底は私が調べ尽くしていたし、時折ロスタルドの気配を感知した場所が空だったから、あなたにも告げたわけ」

「で、今回位置が絞れたと」

「ええ」

「その場所については後で確認させてもらおうか」


 デヴァルスは言うと、ゆっくりと立ち上がった。


「そこが本拠なのかは不明だが、まあ手がかりもない状態だ。調べて攻撃を仕掛けるとしよう」

「そうね。私が得た情報だし、こっちも帯同するわ。何かあったら責任持つし」

「ずいぶんな言い方だな」

「当然でしょ」


 そう述べるとアンヴェレートは暗い笑みを浮かべる。


「もう少しで……私の目的を成し遂げられるのだから。ま、今の状態でも勝てないってわかったから、ここで私も色々させてもらうわ」

「あんまり派手にやって他の天使にバレないようには頼むぞ……よし、ネル。調査の段取りを頼むぞ」

「承知致しました」


 返事をした彼女は足早にこの場を去って行く。またリリトも作業を終え、閑散とした会議室を後にした。


「場所を移して話し合いといこうか。ルオンさん達は調査が終わるまでまた待機だな」

「何かあれば手伝うけど」

「いや、問題ない。俺達の代わりに戦ってもらっているんだ。調査くらいはこちらでやるさ……他の仲間達にもそう伝えておいてくれ」

「わかった」

「今回ずいぶんと話が進展した。ロスタルドの居所なんかが明瞭になれば、勝負は一気につく可能性がある。ここが正念場だな」


 そう語ったデヴァルスは俺を見据え、


「ロスタルドについてはこれでいい。あとはアランについてだな」

「気になることが?」


 こちらの質問に彼は首肯し、


「ああ、そうだな……彼自身語った、前世について――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ