仲間達の連携
仲間達が相手をしているのはおそらく天使――たぶんネル辺り――が作り出した魔物ってところだろう。白い狼やオーガに似せた魔物に対し、彼女達が奮戦している。
もっとも、見た目通りの能力だとすると戦場にいる面々なら特に問題はない……と思うのだが、剣を決めても魔物は倒れない。耐久力が高いのか?
「デヴァルス様」
と、ネルがやって来た。見ればニコニコしながら俺達へ近づく姿。
「戦場に見立て、現在戦っている最中ですが」
「上々みたいだな。ま、戦力的に不安はまったくないが」
「はい、作成した魔物達に対しても十分な戦果と、相性なども見えてきました」
俺は解説を聞きながら眼下を眺める。
まず一番手前側にいるのがエイナ。彼女はディーチェと連携し斬り結んでいる。その近くにはイグノスがいて、的確に援護を行っている。ディーチェの方が明らかに攻撃力も高く魔物を圧倒しているが、エイナが時折援護、もしくは独立して迎撃などを行っており、上手くやっている。あの感じだとディーチェについては自由にやらせて、エイナが状況に応じて立ち回っている形だろうか?
次に目を向けたのが戦場の右側。そこで魔物を交戦するのがアルトとキャルン。その後方にはセルガがいて、アルト達が魔物達を抑え、セルガが仕留めるような動きをとっている。
「アルト達とイグノスは分かれているんだな」
「次の戦いでもこのような編成になると思うわ」
そう提言したのはネル。
「三人で組ませるよりも戦い方としてはいいし……アルトさん達も同意しているわよ」
「それならいいけど……と、残るメンバーは」
ロミルダとクオト、そしてアラン……他の二組とは大きく異なり、その戦い方は完全に個々に頼っている。
「そらっ!」
クオトが飛ぶように跳躍し魔物を仕留めていく。後方でロミルダが紫の矢で魔物に仕掛けているが……クオトが仕留め損ねた魔物を始め、彼女自身に敵意を向けてくるような相手を狙っている。援護というよりは、ロミルダ自身が目標に定め狙っている印象。
そして残るアランは完全に独立した動きで一体一体確実に仕留めている。魔物の耐久性はセルガが魔法をぶち込んでどうにか一撃というレベルなので相当ある。にも関わらずアランは平然と撃破している。このことから突出した力を持っているがわかる。
さて、ロミルダは現在遠距離から魔法攻撃をしているだけでこれまでの戦い方とそう変わらない。ソフィアによると何か思いついた様子だったとのことだが、それを今回確認することはできないのか――
そんなことを思った時、クオトが何事か叫んだ。具体的に聞き取ることはできなかったが、それにロミルダが反応する。
どうするつもりか……刹那、彼女は駆けた。それも、予想以上の速度で。
「これは……」
「宴の上位と引き合わせたことに、意味はあったようだな」
そう告げたのはデヴァルスだ。
「ルオンさんはセルガさんの技術を応用し、ヴィレイザーを打倒した。ソフィアさんはディーチェさんの能力を参考にして、新たな技法を得た。そしてロミルダちゃんは、クオトさんを参考にしたわけだ」
彼が語る間にもロミルダは魔物へ肉薄する。一瞬で間合いを詰めたかと思うと、右腕に宿した光を魔物へ差し向けた。それにより敵は逃げる隙すらなく、直撃、爆散する。
「魔法の威力は十分ですね」
口を開いたのはネル。
「ルオンさん、彼女を観察して現在の力でも作成した魔物と相対できることは確認できたわ」
「攻撃面は十分ってことか」
竜の力を結集させた武具を持っているのだ。攻撃能力という面においては問題のある俺よりも強力だとしても不思議じゃない。
「そして彼女は考えた。自分が役立つにはどうすればいいのか」
「その答えが、目の前の戦術か?」
クオトと共にロミルダは一気に魔物を倒していく。とはいえ限界はあるらしく、ある程度時間が経過した段階でロミルダは大きく後退。そこでデヴァルスが、
「ネル、あの子は引き際もきちんと把握しているようだな」
「はい。ですが魔力探知とは少し異なる……なんというか、彼女なりの判断基準があるようです」
――それにより、俺やソフィアは宴の一位が怪しいという言動に対し一蹴せず注意を払うようになった。もっともそんな感覚的な部分に頼り続けるのもまずい。今すぐにどうというのは厳しいかもしれないが、何かしら対策を立てておかないと。
そうしたことを思う間にも戦いは進んでいく。連携がとれているため三組全て取り立てて問題がないというのが俺の感想だった。
「――次に襲撃するタイミングは数日先の話で、三ヶ所だ」
ふいにデヴァルスが語り出す。
「アランさん達については予備役として待機を指示させてもらおう。ルオンさん達が言う怪しい点も気になるからな」
「そうなると残る二組と俺とソフィアが天魔討伐を?」
「正解だ。今回の戦力分析を見る限り、厳しい戦いというわけではないはずだ」
楽観的な言葉だが……確かに目の前における仲間の戦いぶりは見事。以前俺達が遭遇した天魔と同一のレベルであるとしたら……俺達の時は場の混乱もあったため大変だったが、きちんと準備をしていれば対処は難しくないように思える。
ただし、もし想定以上の敵が現れたとしたら――
「もしもの場合に備え、きちんと対処できるようにしておくから安心してくれ」
俺の心の内を読むように、デヴァルスは語った。
「天魔が訪れる場所はおおよそわかっているため、事前に仕込みもやっておく。犠牲者が出ないように」
「仕込みって、ロスタルドにしてみればなぜ出方がわかったのかって疑問に思うだろ? 警戒されないか?」
「だからこそって点もある。牽制効果をちょっと期待しているのと、あとは相手の動きがこういう対策によって大きく変化するのかどうか確認の意味合いもある」
ふむ、なるほどね……心の内で納得する間に戦いは終盤に差し掛かる。魔物の群れは確実に数を減らし、いよいよ勝負が決まる。
「これで終わりなのか?」
「いや、もう一つある」
デヴァルスが返答。顔を見るとちょっとニヤけていた。
「……何をする気だ?」
「いや、さすがにあれだけじゃあつまらないだろ?」
「能力を確認するのに面白いつまらないがあるのか?」
こちらのツッコミにデヴァルスは「まあまあ」と手を振りながら応じる。
「ほら、想定外の敵が出現した場合とか、あるいはああやって連携しているが全員で戦わなければならない場合はどうかな、とか」
「……なんのかんの言って、けしかけるのが楽しそうだな」
「そうか?」
まあいい。連携すれば申し分ないというのはわかったが、それだけで大丈夫なのかと不安があるのも事実。犠牲者が出るのは避けたいところだし、今のうちにしっかり見ておくことが必要ではある。
「おーい、ネル。仕込んだやつが動くのはどのくらいだ?」
「魔力濃度によって判断していますから、そろそろだと思いますよ」
返答の直後、いよいよ魔物がゼロに近づく。三組が分担している魔物達もほぼいなくなり、いよいよ決着がつくのだが――
その時ゴゴ、と重い音が。魔物を倒していた面々もそれに気付いたらしく、手の動きを止めないまま警戒を示す。
刹那、いくつもの場所から土砂が巻き上がった。それに伴い新たな魔物が出現。とはいえそれまで交戦していた敵と同じであり、これだけではさして苦戦もすることなく倒すはずだが……。
と、そこへさらなる重い音。それが何であるかおぼろげに悟った矢先、
腹を打つような轟音。同時、俺達の真正面――仲間達が交戦する場所からやや離れた位置の土砂が天高く舞い上がった。




