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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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堕天化の結末

 相次いで天使が堕天する中、まさかリーダーのシェンまで――凝視しながら内心で驚愕した直後、黒い魔力が形を成し始め、翼のように象り始める。しかもそれは一枚二枚ではない。三、四、とさらに数を増し始め、異形とも言えるものへと変貌していく。


 さらに発する魔力は他の天使とは規格外のもの……どうやらこれは――


『堕天化する場合、保有している魔力などに比例して力を強化するようだな』


 ガルクが言う。俺も同じ見解だった。


「これは……さすがにまずいな」


 レスベイルをシェンと対峙させながら、俺は他の天使へ呼び掛ける。


「一度退いてください!」

「え……?」

「距離を置いて、様子を見てください。もし他の方々がさらに堕天化したら、すぐに報告を!」


 このまま退却させるのもまずい。堕天使となる原因がわかっていない以上、ひとまずこの場に留まり様子を見てもらうしかない。


「ソフィア! 俺とレスベイルでシェンさんを食い止めるから、魔法を撃ち込め!」

「わかりました!」


 承諾した彼女は即座に魔法詠唱を開始する。対する俺は異形と化したシェンを迎え撃つべく、レスベイルと共に構えた。


 俺の目的はあくまで抑えること。不用意に倒してしまうことだけは避けなければならない上、おかしな行動をとったら即座に対応する必要がある。暴走した結果何をするかわからない。まずはソフィアの準備が整うまで待つ構えを――


 その矢先、シェンが吠えた。魔力に侵される状況により苦痛でもあるのか、それとも別の要因か……ともあれ、次に起こした行動は、俺への突撃だった。

 間違いなく理性を失っている――そう判断しながら俺は彼の攻撃をまず受けた。その手には先ほど戦った天使と同様、漆黒がまとわりついている。それが剣のように形を成し、激突した。


 ズオッ――風が吸い込まれるような音が漆黒から響いてくる。相当な魔力が凝縮されており、他の天使なら瞬殺されていたことだろう。

 だが、修羅場をくぐり抜けてきた俺なら強化されていても対抗できる……このまま鍔迫り合いで時間稼ぎをしたいが、予定外の行動を示さないとも限らない――


「ルオン様!」


 後方から彼女の叫び。同時に俺はシェンを無理矢理押し戻すと、すかさず横へと逃れた。


 刹那、空色の光弾がシェンの胸部に直撃する――これまでと同様、魔力のみを削る『ソウルブレイカー』だ。先ほどこれで黒い魔力は消えたため、彼も同じように片付くはず。

 しかし、事態は予想外の方向に向かう……空色の光弾によりシェンの魔力を大いに削ることができたかもしれないが、それでもなお相手は動いている。


「ルオン様、これは……」

「まだ足りないようだ。ソフィア、もう一度――」


 言いかけた時、シェンから凄まじい魔力が噴き上がった。明らかにこれまでと違う様相。本気を出した……いや、可能性として考えられるのは――


『堕天使の魔力が、本来シェン殿がもっている魔力に侵食し始めたな』


 ガルクが言う。どうやらかなり厄介事の様子。


『もし黒い魔力と本来の魔力が融合したのなら、完全に堕天使となる。助ける手立てはなくなるぞ』

「それまでにどうにかしなければいけないってことか……今ならまだ間に合うのか?」

『現在漆黒の魔力は彼の体を蝕んではいるが、体の奥深くには到達していない。堕天がどういう理屈で始まったのか不明瞭であるため断言は難しいが、体の表面にある魔力さえ吹き飛ばすことができれば、可能性はある』

「なら、やるしかないな……ソフィア!」


 彼女は皆まで言わず詠唱を開始する。既にシェンを抑える作戦は決まった。あとはシェンが予想外の動きをとらなければ――

 なおも俺へ向け突っ込んでくる。こちらはレスベイルと連携し受けながら、体の内に眠る魔力を高め、魔法準備を始める。


 ソフィアと同時攻撃で一気に漆黒の魔力を吹き飛ばす……そういう目論見だが果たして上手くいくのか。

 ともあれ、やるしかない!


 魔法準備が終わる。なおも執拗に攻撃してくるシェンを無理矢理押し返し、蹴りを見舞う。追撃にレスベイルの大剣がうなり、剣の腹で相手を叩く。それにより若干たたらを踏むシェン。


 その隙に、俺とソフィアは魔法を発動させる――!!


「我が力をもって――魔の聖域を打ち払え!」


 俺の言葉が放たれたと同時、空色の光弾が撃ち出される。ソフィアもまた同じ魔法を行使し、二つの魔法が――シェンに飛来する。

 一時、シェンは魔法を受け止めせめぎ合いになる。だが俺とソフィアの同時攻撃では防ぎきれず、防御が弾かれ、光弾が体に直撃した。


「――アアアアアッ!」


 直後、悲鳴なのかシェンが叫び声を上げる。俺はここで手を緩めまいとさらなる詠唱を開始し――それはソフィアも同じだったようで、一歩早く再び同じ魔法を発動させる!

 空色の光弾がまたもシェンに突き刺さる。そしてトドメと言わんばかりに俺の魔法がシェンに当たり――光弾が合わさったことにより、空へと昇る火柱のようなものさえ生じた。


 物理的なダメージはないはずだが、思わぬ威力に一抹の不安もよぎった……が、光が潰えた時、シェンは漆黒の翼を全て失い、その場に俯き立ち尽くしていた。

 一時静寂が周囲を包む……黙ったままの彼へ向け、俺は問い掛けた。


「……大丈夫、ですか?」


 それにシェンは顔を上げて力ない瞳を投げかけ、


「どうにか、ですけれど……お二方がいなければ、おそらく全滅していたでしょう」


 彼はそう答え――ようやく戦いは終わりを告げた。






 シェンは「私達の行動によりさらなる堕天使が生まれないとも限らない」としてこの場で待機することにして、俺とソフィアにデヴァルスへの連絡役を頼んだ。俺達二人については体の異常もなく、漆黒の魔力は天使にしか通用しないと推測できる……無論、デヴァルスに影響がないよう漆黒の魔力の断片なんかが体にないか確認し……最寄りの町へ。


 そこでデヴァルスが待っていた。俺達は宴の連絡所にある一室を借りて、報告を済ませる。


「大変だったようだな……堕天化、か」


 口元に手を当て考え込むデヴァルス。そんな彼へ、俺は問い掛ける。


「派遣された天使達は戦場から動いていない。問題ないか確認しているところだ」

「賢明な判断だな。彼らのことについては心配はいらない。適切な対処をする」

「……結局、天魔というのは何だったんだろうな?」


 疑問を呈すと、デヴァルスは肩をすくめた。


「一つ言えるのは、どうやら天魔が堕天化のきっかけを生み出したってことだ。どういう仕組みなのかは、これから調べるさ」

「俺達は今後どうすれば?」

「同じように戦ってほしい。今回の件で天魔相手に天使が使えない可能性も出てきた。ルオンさんの仲間達にも協力してもらう、かもしれない」

「堕天を防ぐなら、それしかないよな」

「ああ……」


 デヴァルスは悩ましげに目を細め、やがて、


「……ロスタルドは単純に天界へ侵攻するだけではないのかもしれない」

「それは?」

「天界へ向け動いているのは間違いない……が、このまま戦っても数などによって負ける。だからこそ堕天を成した天使を無理矢理取り込む……天使である俺達にとって最悪の事態だ」


 解明しないことには、天使達にはまずいよな……。


「ともあれ、ロスタルドが偵察を出すタイミングはまだある。次は数日後。それまでにある程度態勢を整えておかねばならない」

「ならどうする?」


 こちらの質問に、デヴァルスは笑みを浮かべた。


「ルオンさんのお仲間を天魔相手に戦えるよう鍛えることと、俺達は堕天化した理由を調査だ……さて、忙しくなるな」


 ――猶予はほんの数日だけ。厳しいが、ロスタルドとの戦い前にやりきるしかない。


「頼りにしてるぞ、お二人さん」


 デヴァルスが呼び掛ける。俺とソフィアは任せろという意思表示として、深く頷くこととなった。


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