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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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黒き魔力

「――があああああっ!」


 絶叫が周辺に響く。敵を倒したはいいものの、最後に何を残したか――後方を確認すると、天使の一人が黒い魔力を噴き上げ膝をつく光景があった。


「これは……!?」


 隣にいるソフィアも驚愕する。一体何が起こっているのか……こちらもまた目を見張り立ち尽くしていると、


『ルオン殿、これは……』


 ガルクが声を発した。


『あの天使から堕天使と同じ気配がする』

「……つまり、天使の堕天?」

『そういうことになるが……ともあれ、我の知識ではこんな簡単に堕天が起こるのかわからん。先ほどの天魔が何かしたのか――』


 その時、黒い魔力を発する天使が吠えた。獣同然のそれを間近で聞いた残りの天使達は、味方であった天使を警戒し後ずさりを始める。


「……どうやら、想像以上にまずい展開のようですね」


 シェンが呟く。彼は一人臨戦態勢に入り、


「全員、攻撃準備を!」


 他の天使達へ指示を送る。ただ、ついさっきまで味方だった存在。彼らも動揺し、動きが鈍る。

 そこへ、黒い魔力を吹き出す天使が――目を血走らせながら、突撃してくる――!!


「くっ!」


 おそらく天使達では対応できない。ならば――暴走する天使へ向け、接近を試みる。

 相手はこちらに呼応するように近づいてくる。理性を失っているのは明確にわかり、かざされた右腕は無我夢中で俺に狙いを定め攻撃しようと放たれる。


 とはいえ、単なる拳であり魔力も乗っていない――そう思った矢先、腕の先から黒い魔力が噴出した。


「な、何がどうなって……」


 天使の呟きがこちらに聞こえ――同時、拳と俺の剣が激突する。拳の先から魔力が噴き上がり、俺を脅かそうと迫ってくる。

 すかさず拳を切り払うと、魔力が空中で立ち消えた。俺のところまで黒い魔力が届くようなことはなく……当たっても平気だとは思うが、念のためだ。


 しかし、突如堕天するとは――そう考えるうちに、別の天使が苦悶の声を上げた。


「まさか……!?」


 シェンが驚愕の声を発する。直後、別の天使から黒い魔力が噴き出し、当事者は悲鳴を上げ始めた。


「ど、どういうことだ……!?」


 無事である天使がにわかに動揺し始める――無理もない。天魔と遭遇して突然堕天を開始したのだから。


 とにかく今は原因解明よりも抑えることが先……ここでどうすればいいか考える。堕天使となるメカニズムはさすがにわからないが、このままではこの場にいる天使全員が堕天使となりそうだ。

 かといって、倒すのもさすがにまずいのでは……? 頭の中で悩む間に、最初に堕天した天使がさらに吠えた。


 一人ならどうにか食い止められるが、このまま二人、三人と数が増えればかなりまずいことになる。俺やソフィアなら難なく対処できるが、数が増えれば当然他の天使達を守らなければならない。果たして滅ぼしてもいいのか……例えば堕天した直後なら、元に戻すようなことができないのか――


「――うああああああっ!?」


 別の天使から魔力が噴出。これで三人目……!


「レスベイル!」


 鎧天使を生み出す。とにかく敵を食い止めなければ……!


『ルオン殿、一つだけ可能性がある』


 その時、頭の中でガルクの声が響いた。


『まるで病に感染するかのような現象……どういう理屈かは不明だが、先ほどの天魔と関係しているのは明白だ。魔力を当てられてこうなった可能性が極めて高いため、その魔力を除去すればどうにかなるかもしれん』

「除去って、その方法が根本的にないんじゃないか――」


 と、返答したところで候補が一つ思い浮かんだ。待てよ、魔力だけを消すのなら――だがさすがに天使が本来持っている魔力と堕天使の魔力を区別することはできない。なら、


「シェンさん!」


 俺はなおも黒い魔力を噴出する天使と戦いながら叫ぶ。


「天使は魔力を消し飛ばしても大丈夫なのか!?」

「……消す、とは?」

「人間は魔力が枯渇しても疲労するくらいで済む。天使はどうだ?」


 その問い掛けに、シェンは即座に答えた。


「大丈夫です。肉体が維持されている限りは……!」


 なら――その言葉で俺のやろうとしていることをソフィアも理解したらしい。視線を一瞬だけ向けると彼女は小さく頷いた。

 俺は暴走する天使達を見据える。一人目は威嚇するようにこちらを吠え、二人目と三人目の天使については攻撃態勢を整えた。


「ソフィア、一人受け持ってくれるか?」

「わかりました」


 承諾し彼女は二人目へ向かう――レスベイルが三人目を担当し、これで対処する。

 現在四人目は現れないが……次が来るにしても、今のうちにこの三人は片付けておきたい……!


 詠唱を開始する。ソフィアもまた魔法を行使しようと準備を始め、その間も襲い掛かってくる天使に対し剣で牽制し、いなしていく。

 時間はそれほどかからない……これで決着をつけることができれば――!!


「我が力をもって――魔の聖域を打ち払え!」


 叫んだ直後、俺の左手から空色の光が発せられる。それは球体を成し、襲い掛かってくる天使へ――放つ!

 突き進んでいた天使は、それを避ける余裕はなかった。まともにそれを受けた瞬間、ゴアッ――と、衝撃波が駆け抜け、体の動きを完全に止める。


 その間に、俺にも理解できた……黒い魔力が消し飛んでいくのを。


「成功、か?」

『うむ、どうやらそのようだ』


 横を見る。ソフィアもまた同じ魔法を行使し、天使を吹き飛ばしていた。威力はおそらく俺よりも下だろうけれど、決定打となったのは間違いないようで、攻撃をまともに受け天使は倒れ込んだ。

 そして黒い魔力を噴出しなくなる……彼女の方も成功だと確信した矢先、俺はレスベイルと斬り結ぶ三人目の天使へ向け、同じ魔法を使い、吹き飛ばすことに成功した。


「よし、なんとか倒したか」


 息をつく。なおも動揺する天使達を横目に、倒れる天使三人を確認する。


 全員魔法を受けて気を失っているだけのようだ。魔力を吹き飛ばして消耗しているのは間違いないが、ひとまず黒い魔力を発してはいないので、目論見は成功だ。


「……どうやら、暴走原因はなくなったようですね」


 シェンは天使を確認しながら呟き、俺へ首を向けた。


「先ほどの魔法は?」

「魔力だけを消滅させる魔法です。肉体にはダメージがありません」


 ――先ほどの魔法は上級魔法『ソウルブレイカー』。一応風属性魔法を習得していけば扱えるようになるのだが、この魔法は実質無属性魔法である。


 ゲームにおける効果はMPダメージ。その威力はなかなかで、きちんと効けば相手は魔法をほぼ使えなくなる。後半の敵で前衛に硬い敵、後衛に魔法使いがいた場合、魔法使いにあらかじめこいつを撃っておけば敵側の魔法を食らうことなく対処できる……そういう寸法で、後半になればなるほど活用機会も増えていく魔法であり、俺も結構使った記憶がある。


 現実における効果は魔力だけを消滅させる。魔力の塊である魔物に使うと消滅するケースもあるが、やや詠唱時間が長いなどリスクもあるため、普通は他の魔法や技を使った方がいい。ついでに言うと魔族など魔物以外に効果が薄いことも使用機会を押し下げた。今回はどうやら天魔――どれだけ強くとも魔物が保有する魔力であったため、効果がきちんと現れたわけだ。


 結果として、天使を消滅させることなく対処できた……これは幸いだ。


「しかし、先ほどの魔力は何だったのか……」


 シェンが呟く。ひとまず三人目が暴走した時点で堕天使化は途切れたが……俺は視線でソフィアになおも注意を払うよう促しながら、シェンに応じた。


「さっきの敵が関係しているのは間違いないが――」


 そこまで言った途端、シェンの動きが止まる。次いでビクリ、と一つ体が震えた。


「……え?」


 天使の誰かが呟く――そして、

 シェンの背から、黒い魔力が噴出した。


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