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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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敵の可能性

 宴の連絡所へ赴き、そこでデヴァルスの面会を取り、客室へ。


「よお、どうしたんだ?」


 仕事中らしきデヴァルスの姿。資料を手に持っているのが見え……。


「悪い、迷惑だったか?」

「いや、平気だよ。それでどうしたんだ?」

「……実は」


 根拠はロミルダの勘のみであるが、新たな仲間になりそうなアランが敵かもしれないと話すと、デヴァルスは「なるほど」と呟いた。


「敵側からしてみたら、宴の一位であるアランはスパイ活動させるのにもっとも適した人物だろうなあ。魔物を狩り続けることで信用を得られていることに加え、あの人当たりよさそうな感じと性格。隙はないし天使側が良い印象を受けること間違いなしだ」

「信用してもらえるのか?」

「敵からすれば、アランさんには相当な価値があると本題に入る前に確認したかっただけだ。まず俺の見解だが、少なくともアランさんには怪しい点はない。彼と最初に話をした天使も素行などは問題ないと判断しているし、少なくともロスタルドなどと連絡を取り合っている様子はない。ここまではいいか?」

「ああ」

「現時点でロスタルドと関係しているかと問われれば証拠がない以上はノーだ。俺の部下がアランさんと接触して以降、彼が怪しい行動をしている様子はなかったし、現時点でもそうだ」

「つまり、ロスタルドと繋がっている可能性は皆無だと解釈していいと」

「ああ。でもまあ転生したって事実もあるし、それを利用し接触できる機会を作れるかもしれない」


 ……これは悪魔の証明みたいなもので、ないものをないと断定するのは非常に難しい。ただ現時点におけるアランの行動から類推するに、少なくともロスタルドと関わりがないと考えることができそうだ。


「ルオンさんとしては気になるみたいだが、俺としては彼がこっちの敵になる動機など見当たらない」

「……可能性として考えられるのは、転生した事実かな」


 俺が言うと、デヴァルスは眉をひそめた。


「転生が?」

「ああ。例えばの話だけど、アランさんが強大な力を持った武具が欲しいとする。ロスタルドと天使達が戦争を仕掛け……それに乗じて目的の武具を得ることができたとしたら、動機にはならないか?」

「まあそれなら……ふむ、俺達の戦いを利用して何かをするって可能性もあるのか」

「現段階ではあくまで架空の話だからな。あと現在、アランさんが言う前世と状況が異なっているみたいだから、どう動けば目的を果たせるかを考慮し、こっちに干渉してきた……と、考えることもできる」

「それだったら、こっちをかく乱させるために偽の情報を渡すかもなあ」


 そうデヴァルスは推測する。


「転生した事実云々についてはいいとしても、予定外の動きがあるのなら、俺達を上手く誘導するって方法もありそうだが……そうなると現段階で俺達に語ってもらった彼の情報に嘘が混ざっていることになるな」


 ここでデヴァルスは「もっとも」と付け加える。


「アランさんには悪いが、基本的にもらった情報は参考程度にしている。今後ロスタルドがアランさんが語った通りに動くとしたら上手く利用するかもしれないが、現段階では不確定だからな。さすがに彼の話を根拠にして動くことはしない」

「まあそうだよな……」


 結局、全て推測の上で成り立っているため、話をしても結論は出てこないな。


「ま、ルオンさんの助言については参考にさせてもらうよ。無視するようなことは絶対しないし、注意を払うことにするから安心してくれ」


 ……ひとまず、この辺りが限界か。根拠が勘である以上は仕方がないな。

 ただ不安は完全に拭うことができない……理由としては俺も同じ転生者だからだろうな。


 話の上で、アランは転生者なわけだが――仮にそれが本当だとしたら、彼はこの戦いを一度大きく知っていることになる。俺が魔王との戦いで色々対策を行ったように、知っているという事実は途轍もなくアドバンテージになる。注意しておく必要はある。


 敵だとしたら、その目的は何なのか……アランと雑談でもして情報を探るしかないけど、本音を漏らすことはないよな。


「……心の中を覗くわけにもいかないしなあ」

「まあさすがにな。できないことはないが、それをするにしても明確な根拠がないと。さすがに無理矢理は他の天使の反発を招くし、俺の立場も悪くなる」


 だよな――ともあれ、デヴァルスには警告したから何かしら手は打ってくれるだろう。今はこれでいいとして、俺はアランが敵だった場合に備え、どうするかしっかり考えておくべきだろうな。


「ルオンさん、話はこれで終わりか?」

「ああ、邪魔して悪かった……そっちは仕事だけで今日一日が終わりそうだな」

「まったくだよ。結構なペースで仕上げているつもりだが、やっぱり天界全体の運営となると、大変だ」


 肩をすくめる。きっとこういう仕事向いてない感じだな。


「あ、そうそうルオンさん。今後の予定だけど、ひとまず数日以内には天界へ移動できそうだぞ」

「……場所はどこだ? 前のような城か?」

「いや、別の場所。変な所じゃないから心配はしないでくれ」

「そこは別に不安じゃないけどさ……」


 前の反省もあるから、訓練しても問題ない所になりそうだな。


「ヴィレイザー討伐に協力してくれた面々については全員そちらへ移動となる。その後は、ロスタルドが少しでも早く見つかることを祈っていてくれ」

「俺に手伝えることはあるか?」

「人手は欲しいし、ルオンさんの使い魔については居所をつかむことに有用な手立てではあるけど……ありがたいが、やめておく……あ、そうだな。なら一つ。アンヴェレートについてだ」

「彼女をどうするかってこと?」

「そうだ。天使としては扱いに困るからな。現在俺は彼女と直通で会話できるようになっているのだが、彼女もまた事務的な内容しか話さない」

「その辺りでフォローを入れろってことか? 正直無理だと思うんだが」


 相手は堕天使だし、ハードル無茶苦茶高いな。


「適度に話してもらうくらいでいいさ」


 ……まあ彼女は元々敵であり、今回仲間になったのは理由があってのこと。復讐らしいけど……これについてはさすがに話すことはないだろうし、踏み込むのは厳しいかな。


「というわけで、頼まれてくれないか?」

「……善処はするよ」

「頼むぜ。任せた」


 人これを、丸投げという。いやまあ、堕天使である以上仕方がないけどさ……。


「ああそれとルオンさん、魔力の質的問題についてだけど」

「進展したのか?」

「いや、まだだよ。けどアランさんの魔力を解析し似通った特性を持っていたから、彼の戦い方……あるいは魔力収束方法にヒントがあるかもしれない。天界へ赴く際ネルを帯同させるから、協力して調べてくれ」

「わかった、ありがとう」


 ひとまず伝えるべきことは全て言ったので、俺は連絡所を後にする。エイナ達は天界へ赴く準備などをしているし、おそらくソフィアもやっているだろう。

 まあ俺はこれといって準備するようなものもないし……そうなるとやることがアンヴェレートと話をする以外なくなってしまうんだけど。


「……きちんと応対してくれるのか?」


 疑問しかないけど、デヴァルスに頼まれたんだからやるか。


 俺は一度宿に戻り、ソフィアに色々と説明。そこでアンヴェレートについて触れ、


「というわけで、明日くらいにアンヴェレートに会ってくる」

「わかりました。ルオン様、お気をつけて」

「ああ」


 ひとまずやることはできた。アンヴェレートについては、下手に近づくと襲われそうな気もするけど、なるようにしかならないか。

 ともあれ、一度会ってみよう……そう心の中で呟き、俺はこの日休むことにした。


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