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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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戦士達の猛攻

 これで決める――そういう意志を抱きながら俺は堕天使が残した分身に剣を、放った。


 刃が分身に入る。さすがにこれまでのダメージが蓄積していたのか、直撃した瞬間相手の体から軋むような音が聞こえた。

 いける……そう確信し振り抜くと、白い光により相手が包まれる。それと同時、真正面の気配が霧散し始めた。


 これで一体。残る二体のうち、即座にソフィア達が戦う堕天使へ――と思った矢先、彼女の剣が分身に到達した。

 直後、俺と同じように光に体を包まれる分身。ただこちらと異なりダメージがきちんと通るソフィアの剣ならば、一撃で相当なダメージを与えるようだ。


 分身はどうにか耐え、踏みとどまる……が、硬直。その隙をソフィアやエイナが見逃すはずもなかった。

 両者の剣が分身の前後で決まる。さらにレスベイルが追い打ちとばかりに大剣を振り落ろし――二体目も滅んだ。


 このまま三体目も……と思い視線を移すと、セルガ達が猛攻を仕掛けている真っ最中だった。


 真正面から相対するのはディーチェ。炎が舞い分身を確実に切り刻んでいく。

 それを援護するのがクオトだ。分身はどうやら空中を飛び回る彼を狙っているようだが、一向に捉えることができない。そうこうする間にもクオトは衝撃波を伴った斬撃を叩き込み、確実に削っていく。


 そしてセルガが時折魔法で分身の動きを縫い止める――魔物の巣に入った時点で連携しているようには見えなかったが、ここにきて互いの能力を知ったためかずいぶんといい動きをしていた。また彼らが連携するようになったのは、堕天使の分身はそうでなければ対処できない、と彼ら自身が考えたからかもしれない。


 セルガの雷撃が地面から発し、天へと昇る。これにより大きく動きを鈍らせることに成功し、ここぞとばかりにディーチェとクオトが剣を差し向ける。

 それはソフィアとエイナが同時に決めたような、前後からの攻撃――炎と風が乱れ飛ぶ。二つが合わさり熱風すら感じられる状況下で……それでも堕天使は耐えた。


 だが明らかに魔力は減っている。後一押しか――


「決めるぞ」


 セルガが宣告する。同時、ディーチェとクオトが分身から距離を置いた。巨獣を撃滅した白い火柱――あれを使う気だ。

 両手を構えた瞬間、分身は危険と悟ったかセルガに狙いを絞った。だがそれを阻むのは、ディーチェとクオト。


「させるか!」

「おおおっ!」


 ディーチェは鋭く声を上げ、クオトが叫んだ。同時に放たれた剣は分身の突撃を――押し留めた!

 刹那、役目を果たした二人が左右に分かれる。それと共にセルガは魔力を収束し終え、魔法を放出した。


 光にのみ込まれるヴィレイザーの分身。どうやら魔法から脱するために抵抗しようとしたみたいだが、結局最後までどうにもできず、とうとう消えた。


 ……分身相手ならば、ソフィア達でも撃破できる。これについては朗報だが、相当な猛攻を仕掛けなければならない。反撃を受ければそれだけで致命的になる可能性もあることから、綱渡りであることは間違いない。

 堕天使の攻撃を耐えられる手法を探すべきか……? ソフィアやロミルダは持っている武具の力を引き出せばどうにかなりそうだが――


「……逃げられてしまったわ」


 ここでネルの声が。目を移すと、困った顔の彼女がいた。俺の方も、使い魔などで捉えることはできなくなった。地底深くに潜ってしまったのだろう。


「転移して以降、その姿は確認できなかったわね」

「……分身を作り出すって能力は、堕天使固有の能力なのか?」


 なんとなく尋ねると、ネルは解説を加える。


「アンヴェレートも同じようなことをしていたから、そう感じるみたいだけど……この場合堕天使として得た力を分離できる、ってことかしら?」


 分離、か……次戦う時は注意しなければ。


「ともあれ、ひとまず作戦は終了といったところね。消化不良だけれど、ヴィレイザーについては確認することができた。成果は上々でいいでしょう」


 ――ここで、俺は疑問に思うことが一つ。アンヴェレートは空を探せと言っていた。しかしヴィレイザーは地底に潜伏していた。

 アンヴェレートの情報は残る堕天使、ロスタルドのものってことか? ネルへ視線を送ると、彼女は小さく肩をすくめた。


「疑問点については町に戻ってからでも遅くないわ……しかし」


 と、彼女はため息をつく。


「国が管理しているわけではないにしろ、これだけ無茶苦茶にすると色々言われそうね」


 ……周囲を見回してみる。うん、まあ酷い有様だ。


 クレーターができているだけでなく、周囲の木々も吹き飛んでいる。もし誰かが迷い込んでここを見たら、びっくりして立ち尽くすことだろう。


「これについては私の方で国などに報告しておく。ともかく戻りましょう。ヴィレイザーは超然としていたけど、ダメージはしっかり受けていたはずよ。当分出てくることはないと考えていい」

「ですが、こちらの手の内は知られてしまいました」


 ソフィアの発言。ヴィレイザーの目的の中にそれが入っていたのは明白。こちらとしては懸念すべきところではあるが――


「やりようは、いくらでもあるわ」


 そうネルは返答する。


「彼が立てる対策を、上回る手法を確立すればいい……それだけの話よ」


 ――俺もまた、上手いやり方を考えなければならない。

 突破口となるのは……頭の中で思案を巡らせながら、俺は仲間達と共に町へ戻るべく歩き始める。そこでセルガが近寄ってきた。


「話、いいだろうか?」

「丁度よかった。そっちに話があったんだ」


 俺の言葉に彼も意を介した様子。


「私の儀式魔法の技術を……あなたが活用すると?」

「現状、理由は不明だが俺は堕天使に対し思うようにダメージを与えられていない。それ自体についても意見を聞きたいところだけど、ひとまず儀式系魔法の話をさせてくれ。現状解決法がないから、威力を上げるしかない」

「あれ以上に、か……」


 苦笑するセルガ。言いたいことはわかるけど。


「でも実際、それしか今のところやりようがないからな」

「……確かに私の技法を取り入れることができれば、攻撃能力は強化されるだろう。しかし時間が掛かるぞ」

「何もしないよりはマシだ」


 その言葉にセルガも「わかった」と述べ、


「いいだろう。そちらに協力する」

「ありがたい。堕天使との戦いに間に合わないかもしれないが、技法自体はどうにかして習得したいから頼むよ」


 今回役に立たずとも、将来……それこそ神と呼べる存在との戦いに役立つかもしれない。

 そんなことを胸中思っていると、今度はネルが近寄ってきた。


「ルオンさん、私も彼らに色々と協力するつもりだけど……重要なのは防御面かしら」

「そうだな。セルガ達の能力で分身を倒すことはできた。攻撃については後回しでもいいと思う」

「なら、彼らに有用な防具を用意するわ」

「それはソフィアやロミルダも?」

「当然……ルオンさんはどうする?」


 必要ない……と思うのだが、まあもらえるのならもらっておくか。


「使うかどうかわからないけど、頼むよ」

「わかったわ。さて、敵方にこちらの能力をある程度悟られてしまったわけだけど……」

「そう悲観的になる必要もないさ……問題はヴィレイザーが次にどう出てくるかだな」

「そうね、隠れられたりしたら探すのが面倒。その辺りは任せてもらおうかしら」


 援軍とか頼むのかな? 疑問に思ったが口には出さない。


「なら、お願いするよ」


 こちらが言うとネルは「任せて」と返す。課題ができたため、今後はそれを解決するため動くことになりそうだった。


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