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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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意図と分身

 ソフィアの剣に集まっている力は間違いなく切り札『スピリットワールド』――俺の攻撃が通用しにくい現状で、紛れもなく彼女のそれがこの場における最高の一撃。


「――これは」


 俺と対峙するヴィレイザー本体も理解したようで、声を発した。

 分身が動き出す。猛攻を受ける中でどうにかソフィアの剣戟だけは回避しようという意思が見て取れた。


 これを食らえば、確実に滅ぶ……そう悟った分身はどうにかして動こうとしたが、間に合わなかった。

 ソフィアの剣が、分身を捉える。その直後、凄まじい魔力の奔流が彼女と分身を包み――爆ぜた。


 その力は天へと昇り、まるで巨大な火柱と化す……白い光はおそらく魔物の巣からだけでなく、外からもはっきり見えただろう。


「……なるほど、彼女もまた大きな力を持っているか」


 ヴィレイザーが呟く間に、分身が光の中で力をなくす。倒した……しかし本体は一切気にしていない。

 まるで、消え去ることが当然という雰囲気――まさか、


「ここまで全て、お前の目論見通りとでも言いたいのか?」


 問い掛けにヴィレイザーは笑う――それはどこか、策が成ったとでも言わんばかりの様子。


「だとしたら、どうだというのだ?」


 聞き返す堕天使。本体が顔を出してリスクもあるが……天使相手だからこそ、あえて姿を晒しこちらの戦力分析を行った、ということか?


「仮に、あなたがここまで予定通りだったとしましょうか」


 ここで、会話を聞いていたらしいネルが口を開いた。


「けれど、身をさらした代償は大きかったわね、逃げることはできないでしょう?」

「転移封じの魔法範囲はわかっている。そこから逃れればいいだけの話だ」


 事もなげに返答するヴィレイザーだが……何か策があるというのか?


「さて、ならば逆に尋ねよう」


 余裕の笑みを伴い、堕天使は問う。


「分身を倒せるだけの力を有しているようだが……この状況、どう覆す?」


 そう声を放った直後、俺は気配を察知した。


 次の瞬間、ヴィレイザーは俺と距離を置く。理由は、堕天使の真正面――地面から這い出る黒い物体を捉えたからだ。

 それは一瞬で形を成すと、ヴィレイザーの分身となる……その数、三体。


「先ほどそこの剣士が放った技、強力だがまさか分身三体をまとめて滅することなどできはしないだろう?」


 その言葉の矢先、分身達が一斉に攻撃を開始した。周囲の瘴気を利用したものとは違う。自身の魔力――命を燃やし尽くすがごとく、一斉に魔力を放出し始めた。

 クレーターを作り上げた時と同じような魔法――その目的は間違いなくネルが構成する魔力障壁……!


 魔法の威力は相当なもので、魔力障壁でガードしたがきっと他の人は直撃に耐えられなかっただろう。

 極彩色の光がクレーターをさらに抉っていく。ヴィレイザー本体だけは何もせず俺を見据え佇んでいるが……光の中に消える。


 逃がすか――と思ったと同時、周囲で異変が。攻撃が怒濤の如くネルの障壁に押し寄せ、その壁を確実に破壊していく。


「くっ……!」


 これは下手すると仲間に被害が――そう思った直後、俺は剣を振るった。光の中で自身の攻撃をぶつけ、光の相殺を試みる。

 咄嗟に放った剣戟だったが、その目論見はある程度成功した。俺の力によって光が勢いをなくし、やがて弾ける。


 だが状況は一変していた。クレーターを覆う障壁は相当崩壊し、ネルが再度構築しようと魔力を収束し始める。

 なおかつ、本体は既に姿を消していた。壊れた障壁の隙間を縫って逃げたのだろう。使い魔が本物の居場所を追っているが、直に転移によって逃げられるのは間違いない。


「――レスベイル!」


 そこで俺は後方にいる大天使に呼び掛ける。即座に反応した天使は、俺の下へ飛来した。

 ヴィレイザーの分身が笑う。それはまるで「お前に俺達をどうにかできるのか」という問い掛けを発しているようにすら思えた。


 それに対し俺は――


「ああ、やってやるさ」


 剣を強く握りしめる。次いで放った斬撃は、分身一体が避ける暇もなく当たった。

 次の瞬間、刀身から光が漏れ爆ぜる。分身は吹き飛び、残る二体が俺へと迫る。


 そのうちの一体に対し、レスベイルが向かっていく。アンヴェレートの時は玉砕してしまったが、今回はどうなるか。

 俺が残る一体と斬り結んだ直後、レスベイルの大剣が分身一体を吹き飛ばした。俺みたいに攻撃が効きにくい状況にはなっていない様子。ダメージはしっかり入ったようだが、さすがに一撃とはいかない。


 最初に斬撃を当てた分身が体勢を立て直そうとする。その前に俺は対峙する相手をぶった切り、体勢を大きく崩した……ソフィアなどの猛攻によって倒れた分身と比較してどの程度の力を持っているかわからないが、この調子ならいけるか?

 そう思っているとレスベイルもまた敵の攻撃を受け流し反撃に転じる。そして迫る残りの一体。俺と戦っている分身も体勢を立て直したし、このまま数的不利だがやるしか――


「そらっ!」


 そこへ、声が聞こえた――クオトだ。何事かと思った矢先、彼が最初に吹き飛ばした分身目掛けて突っ込んだ。

 分身は意表を突かれたか迎撃する暇なく攻撃をまともに食らう。衝撃波が拡散し、轟音を上げ地面に倒れ込む。


「ルオンさん、大丈夫かい?」

「……危険だぞ」

「承知の上だよ。つーか、ここで活躍しないと招集された意味もないじゃないか」


 それはそうだけど……と、思っていると後方からさらに気配。振り返らずともこれはわかった。ソフィアだ。


「ルオン様、援護します」

「レスベイルと組んで戦ってくれ。こいつは俺一人でどうにかできる」

「わかりました」

「ロミルダは?」

「ネルさんが堕天使について魔法で調べているので、その護衛に」


 答える間にソフィアの横にエイナが。一方アルト達はどうやらロミルダと共にネルの護衛を務める様子。さらにセルガとディーチェは近くにやってきて、分身もにわかに警戒を始める。


「私達はクオトと共に戦うことにしよう」

「わかった」


 セルガの言葉に返事をした矢先、起き上がった分身目掛けてクオトが衝撃波で吹き飛ばした。俺から見て横へすっ飛んでいくヴィレイザーの分身。俺達の戦いが邪魔にならないように、かな。


「……戦うのが厳しいと判断したら、すぐに退却してくれ」


 俺の言葉に全員が頷いた後、先陣を切ったのはソフィア。レスベイルと対峙する分身目掛け、走りながら魔力収束を行う。

 分身もその魔力の大きさに注目したか、距離を置こうとする。だがそれをレスベイルとエイナが防ぐ。まずレスベイルが分身に迫り、さらにエイナが持ち前の速力で背後に回る。


 挟撃される形となった分身は判断に迷った……が、その狙いをレスベイルに定めた模様。漆黒の剣を生み出し、背後のエイナを半ば無視し大天使へ向け剣を振る。

 真正面から受けるレスベイル――が、競り負けた。分身とはいえレスベイルも食い止められないか。となれば身体強化を用いている仲間でも、俺以外に押さえられる人間はいないかもしれない。


 もっとも、ソフィアは剣に力を集めてしまえばその勢いで押し込めるかもしれないが……考える間にソフィアが迫る。剣の間合いに入る寸前で、レスベイルが弾かれる。

 だがソフィアは臆することなく踏み込んだ。そこへエイナが背後から剣を見舞い動きを止め――それと同時、俺もまた目の前の分身へ斬撃を決めようと振りかぶった。


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