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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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山脈の主

 どうやら地上に現れた堕天使。その気配は俺達に悟らせるくらいにビリビリと感じるものであり――


「様子を見る必要はなくなったから、威嚇しているのか?」

「そもそも隠れているつもりではなかった、ってことかもね」


 魔力が発せられる方向を眺めながら、ネルは言う。


「魔物を作成して、私達が活動し始めた……隠れたのではなく、魔物の巣の中に天使が来るのを地底に潜って待っていた。そして私が目の前に現れたから、魔物をけしかけながら潰そうと考えた……そんなところかしら?」

「尋常な気配ではありませんね」


 ソフィアも同じ方角を見ながらコメント。横にいるロミルダも同じことを思っているのか、息をのんでいる。


「こちらを牽制するためにわざとやっているんでしょうけど……」


 ――俺は使い魔で気配が存在する場所を観察する。そこに、男性が一人立っていた。


 遠目からわかることは、出で立ちは神父のよう……上から下まで黒い衣服で、髪色は銀色。肌色は白で、アンヴェレートのような人間とは異なる容姿ではない。気配を隠し町にいたら気付かないレベルだ。

 ただ、現在は魔力を発し佇んでいる……まるで山脈の主は自分だと誇示しているようだった。


 顔立ちまでは確認できないが……その時、相手が突如首を動かし――俺の使い魔を射抜いた。


「気付かれているな……」


 しかし使い魔を狙って攻撃するような雰囲気はない。彼は視線を逸らすと、ゆっくり歩み始めた。

 その方角は、俺達がいる所……ただ進み具合が非常に悠長で、魔物などを動かしているような雰囲気もない。


 何か策があるのか、それとも……考える間に魔物の雄叫びが上がった。使い魔を通して見れば、セルガ達が残る魔物を撃滅しているところだった。

 ふむ、連携さえできれば大型の魔物も相手にならない……そう考えていた矢先、堕天使が動いた。


 ヒュン――と、使い魔の視界から消える。突如消えた。まさか――


「転移した……!?」


 俺の呟きにソフィアが反応。即座に周囲を見回し、警戒を始める。


「こちらに移動を始めましたか……!?」

「いや、こっちには来ていない――」

『ルオン殿』


 ふいにガルクが現れ声を出した。


『地底を探っていたが、その場所に気配が生まれた……おそらく地の力を利用し移動したのだろう。一度地上に出たが、再度地下へ潜ったらしい』

「単に様子を見に来ただけか?」

『しかし、地底の魔力に少々変化がある……地の底で移動しているようだ』


 ――となると、


「地底から接近し、転移でいきなり出現するつもりか?」

『かもしれん。一度姿を現したのは注意をあの場所へ向けさせるためか……やや行動が不可解だが、もし戦うとなっても転移されてはトドメを刺すことは難しいぞ』

「転移については、対策がある」


 今度はネルが話し出す。


「転移能力は、墜ちる前のヴィレイザーが保有していた能力。それが堕天使となっても失われていないようね……ただ、魔法を展開すれば転移そのものを封じることができる」

「ネルさん、それはすぐにできるのか?」

「準備は既にしているわ……けど、地底ではなく地上に展開しているから、地上に出てきた時点で発動しなければ効果は発揮されない」

「相手は当然、転移封じがあると推測していますよね?」


 ソフィアが尋ねると、ネルは「そうね」と同意した。


「ヴィレイザーとしては、私達に攻撃を仕掛ければ転移封じもあるから逃げることは難しくなる……だからこそ慎重に、かしら?」


 ……慎重、ねえ。魔物をこれだけけしかけるくらいの存在だから、やること自体は大胆な気もするけど。

 ともあれ、こちらに攻撃しようとしているのは間違いない。問題はその目標がネルなのか、それともセルガ達なのか。


「ネルさん、どうする?」

「……次現れた時、間違いなく戦闘に入るでしょうね」


 そう呟いた彼女は、首を俺へ。


「ルオンさん、どう動くと予想する?」


 ――ここまで俺達はネルを囮にするような形で動いていた。それは堕天使の狙いが当然天使であるネルだという推測からだ。

 ただ、相手の動きを見る限り、魔物をけしかけるだけで堕天使自体は姿は現したが積極的に向かってこない。こちらの動向を窺っているのか、それとも何か別の考えがあるのか。


「単純にネルさんを囮にしただけで、向かってくるのかわからなくなったな」

「確かにね……狙いが何であるかできれば知りたいけれど、そこまで相手がボロを出すことはなさそうだし」

「……なんとなくだけど、堕天使の狙いが本当にネルさんなのか。そこが気になる」

「なるほど、セルガさん達を目標にしている可能性もゼロではないと」

「堕天使からすれば、宴の参加者なんて眼中にない……と考えているのは俺達だ。それが思い込みの可能性だってある」

「そうね」


 ただまあ、天使を率先して狙うのではなく、あえてセルガ達を狙う理由は思い浮かばないけれど……天使側としては宴の参加者は重要だ。それを知り、あえて今後戦力を増やさないためにセルガ達を狙う――といったところか?


 疑問はあるが、相手が姿を現し不可解な行動をしている中で判断しなければならない。どうすべきか――


「ルオン様」


 ここで口を開いたのは、ソフィアだった。


「ルオン様はエイナ達の所へ行ってください。私はロミルダと共にここに残ります」


 ロミルダは同調したか、頷いているのが見える。


「堕天使はわからないことがあり、リスクはありますが……私やネルさんだけになるのはルオン様にとっても危険なのではと考えるでしょう。しかし堕天使が今の状態でエイナ達の所へ行けば……」


 ――セルガ達の実力はしかと目の当たりにしたが、堕天使と相対できるかは……ソフィアの方は神霊の剣もあるし、ロミルダやネルもいる。大丈夫そうか?

 けど、念には念を入れて――


「……レスベイル」


 精霊である大天使を生み出す……が、限りなく気配は消している。気配探知だけなら、使い魔が一体現れた、といったくらいにしか感じないはずだ。


「ソフィア達の護衛を頼む」


 頷くレスベイル……とはいえ、アンヴェレートの戦いでは消え去ったからな。今回の堕天使がどの程度の実力かわからないけど、分身のアンヴェレートと比べ上であることは間違いないだろう。盾となるにも厳しいかもしれないが、護衛はあった方がいい。


「ソフィア、ロミルダ、ネルさん、俺はセルガさん達の所へ向かうよ」

「ルオン様、お気をつけて」

「こちらはどうにか頑張ってみるから」


 彼女達の言葉に俺は頷き、走り出す。とはいえセルガ達がいる場所まで距離はある……俺はここで移動魔法を使い、一気に駆ける。


 その間も相手がどう動くか考える。セルガ達を狙うとしたら、堕天使はその実力を魔物との戦いで解析したはず……今まではその実力を認識していなかったから仕掛けてこなかった。こう考えると慎重な相手だな。

 魔物を捨て駒にして情報を得ようとした……と考えると、相手は仲間同士で固まっているところを狙う可能性は低いのか? もし狙うとなれば、例えば――


「……孤立した時、とか?」


 その瞬間、背後に魔力を感じ取った。俺は立ち止まり周囲を見回す。


「……ここまであからさまとは」


 一人一人確実に消していくとか、そういうことなのか? 疑問が頭の中を巡る中で、突如目の前の地面が黒くなった。

 転移してくるか――そう確信した直後、とうとう堕天使が姿を現した。


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