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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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魔物の巣序盤戦

 ――翌朝、俺達は広大な魔物の巣へと入り込む。リチャルはこれまでと同様留守番であり、共に行動するのはソフィアとロミルダ。なおかつネルも一緒だ。


 そしてこの場にエイナとアルト達はいない……どうやら彼らは組んで行動するらしく、俺は使い魔で先行する彼らを捉えていた。


「自分達だけで戦えるところを証明しないと、って感じかな?」


 共に移動するネルが言う……まあ確かにソフィアや俺の助力を得ていては、認められるとは思っていないだろう。


「ルオンさんとしては、彼女達の評価はどうなの?」

「……共に魔王を討つべく戦った間柄だし、実力もある程度わかっている……ただアルトはアンヴェレートが生み出した竜には対抗できなかったし、エイナも同じかなと考えてる」

「今回観察する上位三人と比べれば、もう一歩ってことね」


 控えめな表現だが、実質仲間になるには能力が足りないって言っているようなものだ。


「ただ、エイナとアルトは賢者の血筋でもある……何かをきっかけにして一気に伸びる、って可能性もゼロじゃない」

「ふうん、なるほどね……潜在能力も加味すると、難しいわね」


 腕を組み考え込むネル――さて、今回共に魔物の巣へ入り込む三人についてはどうだろう。


 全員に共通しているのは、巣へは単独で入り込んでいる……クオトは知り合いが多いようで、途中までは他の参加者と共に行動していたのだが、巣へ入った直後別れた。


 彼についてはズンズン奥へと進んでいる。性格的なものか、前へ前へと積極性がずいぶんある。ただこれは見ようによっては無鉄砲と解釈も可能。


 その反対なのが女戦士のディーチェだ。思慮深く、周囲に目を配りながら移動を行っている。そのためクオトやセルガよりも歩みは遅いが、無駄な動きもないため、案外余裕で奥へ到達できるかもしれない。


 またセルガについては、魔法の道具でも使っているのかクオトと並んで速い。魔法か何かで身体能力を強化している、という解釈が妥当だろう。


「そろそろ始まるようね」


 ネルが呟く。先行する上位三人が戦い始めるってことを言いたいのだろう。


 そこで、ふいに気配を感じた。魔物か――ただ入口近くなので遭遇した敵は狼型の弱いやつ。即座にロミルダが矢を放ち一蹴する。


「ソフィア、何かあったら報告するぞ」


 俺は彼女に合わせて歩を進めているのだが……こちらの言葉にソフィアは頷いた。


「はい、お願いします。今はひとまず、お三方の邪魔にならないよう進みましょう」


 彼女としてはあくせく動く必要はないし、それでいいだろう。

 もし使い魔が仲間の危機を察知したら、俺の案内でその場所へ誘導すればいい……と、いよいよ戦い始まる。最初に遭遇したのはクオトだ。


「結構大物だな」


 小さく呟く――遭遇した魔物は角を持ったイノシシ。ただ肌色は紫を基調としており、なおかつ目も赤く鋭い。

 ソーシャルゲームでいたような気がする……名前は思い出せないけど。レベルとしてはまあまあかな。さすがに苦戦することもないだろう。


「まずは準備運動だな!」


 森の中で一人、クオトは叫ぶとイノシシへ走る。腰に差した剣を抜き放ち、真正面から挑んでいく。

 対する魔物も巨体を生かし、突撃を敢行――と、突如クオトは方向転換した。真っ直ぐ走っていたと思いきや、いきなり右へ跳ぶ。


 当然イノシシの突進は不発に終わる――と、クオトは横から斬りつけた。

 刃が魔物の肌に触れる。直後、その先端から魔力が爆発した。


 ゴアッ――くぐもった音が生じ、イノシシを飲み込む。そればかりか周囲の木々を巻き込み、散々に地形を破壊する……って、おい。


「結構無茶をするのよね、彼」


 心の中のツッコミに合わせ、ネルが呟く。


 無差別攻撃だが……たぶん彼は剣を振るごとにああした衝撃波をまき散らし、範囲攻撃を行うのだろう。うん、単独で動く理由はわかった。あんなものポンポン撃っていたら、絶対仲間に当たるだろうし。


 ただ、見た目の上では最上位クラスの魔物に対抗できるかと言われると……まだ本気は出していないのはわかるけど、他に何か技があるのか? ヒントになるのは先ほどの急激な回避行動か……おそらくあれは――


 推測する間に今度はディーチェの方に変化が。同じイノシシの魔物だが……。


「参る」


 一言。それと同時に彼女は剣ではなく左手をかざした。

 イノシシが突撃を行う――その間に彼女は火球を放った。どうやら無詠唱魔法。魔物は当然急には止まれず、頭からまともに受け悲鳴を上げる。


 だがこれで消滅はしない。というよりディーチェ自身が魔法で決める意図はなかった様子。


 続けざまに放ったのは綺麗な一閃。それがイノシシの体に入ったかと思うと、目にも留まらぬ速さで切り刻んでいく。魔法で動きを止め、剣でトドメを刺すってスタイルか……魔法戦士って感じだな。ただ上位五人に入るのに、イノシシ相手でも油断なく戦っている。真面目気質がここでも発揮されている。


 ふむ、慎重な言動に反し魔物に対しては真正面から応じているな……上位にいる以上はこのスタイルで戦っているのか? だとすれば、上級の魔物を相手にする場合、敵の能力を見極めないと危険だが――


 そしてセルガは……ん、魔物と遭遇しておらず他の二人を差し置いて先へ進んでいるな。もしかして、魔物を感知して避けているのかな?

 魔法使いだし、そんなことができてもおかしくない……と、彼はあっという間に森を抜けた。山の麓だが……さて、上級の魔物はどこにいる?


 俺は使い魔で探ってみる。入口周囲の森の中は下級の魔物ばかりで、なおかつ他に宴の参加者がいるので数もそう多くない。山に踏み込めばレベルも上がるのだろうか……? 上空から使い魔を用いて観察していると――


「……あ」

「ルオン様? いかがしましたか?」


 ソフィアの問い掛けに俺は応えず……使い魔の視点で目を凝らす。


 いるにはいるな、山にも魔物が。ただ大型のトカゲとか、あるいは小型の竜とか、森と比べレベルは上がっているけどそれでも上位の三人にしてみれば物足りないと思うレベルだろう。まあだからといって大型の魔物が大量に来られても困るんだけど……。


 と、ここで使い魔が新たな情報をキャッチ。セルガがいる山の奥側に、一体大きい魔物がいる。


 見た目、恐竜のような……四本足でのっしのっしと進む巨大な魔物。俺達が遭遇した巨獣と同等くらいのサイズだが、鱗を持ち外見からは相当強固に見える。

 すると、セルガが立ち止まり山の一方向を見据えた。魔物がいる場所を見ている……魔法で感知しているのか? 距離はまだあるけど。


 クオトやディーチェもそちらへ向かっていく……気配を察知したわけではなさそうだが、奇しくも同じ場所へ進んでいる。

 俺は魔物を観察し……ふと、先ほどの戦いを思い起こす。三人のうち二人について、実力の一端を見たわけだが――


「ソフィア」

「はい」

「直に上位三人が大型の魔物と戦うことになる。移動魔法を使って進み、観察しないか?」

「……何か理由が?」

「三人の実力を疑っているわけじゃないよ。もしかすると、俺達にとって役に立つことがあるかもしれない」


 こちらの言葉にソフィアは一度眉をひそめたが、


「……わかりました。ロミルダも一緒ですか?」

「ああ。いけるか?」

「うん」


 頷くロミルダ。ネルに視線を送ると、彼女は同意する様を目で返した。


「……そういえばネルさん、俺達は移動魔法があるけど――」

「ご心配なく」


 やんわりと応じる。それなら、ということで俺達は移動を開始した。


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