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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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彼女の反応

 そして夕方――俺はソフィアを出迎えるため町の外へ。リチャルは宿の一室にいて、ここにいるのは俺一人。

 で、ソフィア達は……見えた。街道を歩く彼女やロミルダの姿。アルト達もそれに追随し、俺に気付くといち早くキャルンが手を挙げた。


「おー、出迎えご苦労」

「お前が言うのかよ……調子はどうだ?」

「あれから色々調べ回っているが、最上位に位置する魔物は出現していないんだよな」


 と、これはアルトの言葉。


「ルオンさんが地底でヤバい敵を倒したから……って考えることもできそうだ」

「そういえばあいつ、洞窟内にいた竜なんかを生み出したと言っていたな……確かにどこかに引っ込んだとしたら、そういう魔物がいなくなってもおかしくないけど……」


 俺はアルトを見据え、


「単に巨獣と竜で打ち止めだった、という可能性は?」

「そうかもしれないな……実はあの森、別の宴の参加者が上位の魔物を撃破しているんだよ。規模の大きい魔物の巣だけど、洞窟にいた竜のような力を持っている魔物はそう多くないってことかな」


 ……そもそもあんなのが三体も四体もいる時点で脅威以外の何物でもないな。俺やソフィアなら倒すことができるけど、こうした力を持っている人間なんて例外なわけだし。


「ソフィア、戦果はどうだ?」


 尋ねると、彼女は苦笑した。


「倒し続けてはいますが、より上位にいけるかどうかはわかりませんね」

「上位三人くらいは凄まじい速度で武勲を稼いでいるからな」


 アルトが頭をガリガリとかきながら述べる。


「結果については掲示板が更新されるのを待つしかないわけだが……ルオンさん、帰ってきたんだし明日以降は参加ってことでいいのか?」

「それとも、別の場所に移動しますか?」


 ソフィアの問い掛けに俺はしばし考える……とりあえずエイナと引き合わせ、彼女を含め話をすべきだろう。


「それについては夕食の時にでも話そう。で、俺についてだが――」


 宿に戻る間に、説明を加える。対策がないということについて、アルトはなぜか驚いた。


「さすがのルオンさんでも厳しいのか」

「俺はあくまで能力が高いってだけで、魔力解析とかの専門分野は門外漢だからな」

「ふうん……だが今のままでも倒せるんだろ?」

「倒せるけど、是正した方がいいのは事実だろ」

「確かに、今後足かせになるのは懸念事項ですね」


 ソフィアの言葉に、隣を歩くロミルダも頷いた……と、彼女について一つ気になることが。


「……あのさ、ソフィア」

「はい、どうしました?」

「ロミルダ、なんかキャルンを避けてないか?」


 ピョン、とロミルダが跳ねた。図星らしく、キャルンは「あはは」と苦笑いを見せ、さらにアルトとイグノスが嘆息した。


「すまん、ルオンさん」

「おい、何をやった」

「キャルンが色々とちょっかいをかけていただけなんだが……」

「いや、本当に可愛くて」


 それ理由にならないぞ……ソフィアを見るとこっちも「すみません」と謝った。


「私が止めるべきだったのですが……」

「……うん、まあそう深刻に受け止めなくてもいいから。えっと、ロミルダ」

「はい」

「キャルンが接しているのは別に意地悪したいわけじゃないから……その辺りはわかっているよな?」


 コクコクと頷くロミルダ。なんだか小動物にも似た雰囲気で、キャルンが干渉したくなるのもわからないでもない。


「ただ、キャルン。もう少し気を遣えよ」

「はーい、気をつけます」


 反省しているんだろうか……釘は刺しておいたし、これでまた何かあったら容赦なく対応することにしよう。

 というわけで、いよいよ宿に到着する。そこでアルトがのびをした。


「いやー、今日も頑張ったな。とりあえず夕食だな」

「……あれ、アルト達って同じ宿だっけ?」

「変えたんだよ。組むんだったら同じ場所の方がいいだろ?」


 このままずっと一緒にいる気だろうか……アルト達をどうするかについても、一考すべきだな。

 そういう結論に至った後、俺は先んじて扉をくぐる。続いてソフィアが中に入り――


 エイナが立ち上がった。


「――ソフィア様」


 その時だった。突然ソフィアが声に反応し立ち止まる。

 次いで首を向ける。そこにいる人物を目に留めて、硬直した。


「……エ、エイナ?」

「おー、そういえば掲示板に名前が記載されていたな」


 と、アルトが俺を見て納得の表情。


「町でルオンさんと偶然再会し、ソフィアさんに会うためエイナさんはここで待っていたってことか」

「ああ、正解だ」


 俺が答えを提示する間に、エイナはこっちに一歩近寄る。

 それに対しソフィアは……俺はなんとなく、感動の再会とはならないだろうと思っていた。そして今のソフィアの態度とエイナの言及から、次の展開がおおよそ予想できた。


 ソフィアとしては掲示板にエイナの名前があった時点で、思うところはあったんだろうけど、俺やリチャルには何も言わず……といったところか。


 で、結果だが――突如、エイナは目を細め、


「――ソフィア様」


 再度名を呼んだ瞬間、ソフィアは突如背を向け宿を飛び出した!


「……は!?」


 あまりの反応にアルトを含め全員が驚くが、エイナは予想していたのか即座に走り出しソフィアの後を追う。


「……お、二人して出て行ったか」


 ここでリチャルが登場。見ると、彼は笑みを浮かべていた。


「エイナさんがソフィアさんに話すなと言っていたから、なんとなく予想はしていたよ」

「俺も同感だ」

「つまり、どういうことだよ?」


 アルトが戸惑ったまま尋ねてくるので、俺は答えを提示する。


「アルト、当然だろうけど、ソフィアが俺と共に旅をするようになった経緯……というのは知らないよな?」

「そりゃあ、まあ。ソフィアさんがずっとついてきているという時点で、生半可な旅じゃないのは想像できるが」

「というより、よく許可しましたね」


 これはイグノスの言。


「特にバールクス国王が」

「ソフィアは説得したと言っていたな」

「説得って……」


 キャルンはどこかあきれ顔。


「ソフィアもすごい行動力だよね……」

「彼女も王も、俺の旅がどういう意味合いを持っているかを認識し……こういう選択をしたってこと。で、おそらくエイナもそれについていく気だったんじゃないか?」

「ああ、なんとなく見えてきた」


 アルトが声を上げる。


「ソフィアとしてはエイナを同行させるのは躊躇われた。よって、置いていくことに決めた」

「俺もその辺りの経緯は知らないんだけどさ、あの様子だとエイナは行く気だったのにソフィアが一計を案じておいて行かれた、ってところかな。それでエイナが色々もの申す前に、ソフィアは逃げたって感じか」


 逃げてどうするんだというツッコミはあるのだが……唐突な再会にソフィアも思考がフリーズしたのかな?


「だとしたら、こういう展開も納得いくよ……ルオンさん、俺達は何もしなくていいのか?」

「ソフィアだってずっと逃げられるわけではないとわかっているだろうし、まさか魔物の巣まで行くようなことにはならないだろうから、そのうち戻ってくるよ」

「エイナさん、追いつけるのかな?」


 キャルンの素朴な疑問。ソフィアは移動魔法なんかも持っているから、エイナは分が悪いだろうけど……。


「エイナはそのくらい予測して、何か対策していてもおかしくないな」

「対策って……ずいぶんと大事に聞こえるな」

「少なくとも、エイナにとっては大事だろう」


 俺はアルトの言葉にそう答え、


「二人の追いかけっこはそう長くはないだろうし、ロビーで待とうか。戻ってきたら、改めて食事へ向かうとしよう」


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