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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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再会した人物

「話し掛けるか?」


 リチャルが問う。俺はどうするか少し考え、


「そうだな……さて、どういう態度をとるのか」


 呟き、俺はリチャルを伴い掲示板の前へと歩いて行く。

 相手は俺達に背を向けているのでこちらに気付いていない。人違い、なんて可能性もゼロじゃない。けれど俺は確信した。その人物は――


「……エイナ」


 振り向く相手。次いで目を見張った。


「……ルオン殿」


 相手は、ソフィアの従姉妹にして騎士、エイナだった。


「えっと、一人か?」


 問い掛けたのだが、相手は硬直したまま。話が進まない……と思っていたら、

 驚きモードが解け、彼女の目つきが変わる。


「……ルオン殿」


 そして俺の名を再び呼んで、肩をつかんだ。


「……ソフィア様は?」


 王女と公言するのは憚られるのか、ソフィアと呼ぶ彼女。


「あ、今日は別行動なんだけど……」

「ならばソフィア様のいる場所へ、すぐ連れていってもらえないか?」


 ……あの、なんだか目が据わっているんだけど。なおかつ口調も前とは異なって丁寧というより騎士然としたものとなっている。


「どう、したんだ?」


 ただ――エイナからしてみれば国の大事な王女と一緒に旅をしているわけで、雷を落とされても文句はないのだが、俺に矛先を向ける様子ではない。


「一刻も早く王女と話がしたく」


 ……何かあるんだろうか。ただエイナ自身この大陸で宴に参加しているわけだし、緊急性があるようにも思えない。

 まあ帰り道だし、別にいいか……ということで、俺とリチャルは彼女を連れて町まで戻ることに。


「えっと、そちらはどうしてこの大陸に?」

「……国内のゴタゴタも一段落した時、この大陸の人から招待を受けた」

「招待?」

「ああ。元々交流があったところに魔王との戦いも終わった……この大陸の人達としては、シェルジア大陸がどうなったのかを事細かに知りたかったようだ」


 ……やっぱりなんだか肩に力が入っているな。


「へえ、なるほど。それでエイナは要人の護衛として?」

「はい。しかし私だけが宴に参加することになり、こうして行動を」

「仲間なんかはいないのか?」

「少し前までは、この国の騎士と共に……現在は一人で」

「どうして?」


 問い掛けると、俺のことをじっと見た。


「……あなた方の名前を掲示板で見つけたためだ」


 ああ、なるほど。合流しようと思ったのか。


「そこから会うために色々町を巡ることに……」

「うん、状況は理解したよ……現在はソフィアは町近くの魔物の巣でアルト達と共に魔物と戦っているよ」

「その狙いは、上位種?」

「口上からすると、エイナさんもそれ狙いで?」


 頷く彼女。考えることは同じらしい。


「私の方は実力を試すという意味合いもあるが……そちらはなぜ?」

「話すと長いけど……事情により、天使に会いたいんだ。会ったことは?」


 彼女は首を左右に振った。


「その事情、説明してはもらえないのか?」


 エイナが問うが……うーん、どうするべきなのか。

 説明すれば当然、彼女を巻き込むことになる。ソフィアの従姉妹である以上は協力を惜しまないと思うのだが……いいのだろうか。


 これについては一度ソフィアと相談するべきかな……そんなことを思いながら、町を出た。






 結局、エイナに詳しい事情については説明することなく、俺達は町まで戻った。とりあえず宿に戻り確認してみるが、ソフィア達はいない。


「森に出かけているから、戻ってくるのは早くとも夕方だな」


 使い魔を一応残しておいたのだが、ソフィア達は森へ入ったのを確認している……時刻は昼。とりあえず帰ってくるのを待つことにしよう。


「えっと、エイナさんは待っているということでいいのか?」

「はい」


 ロビーにある一席を陣取り、鎧姿でただ座るエイナ。どこまでも肩に力が入っているようで、見ているこっちが落ち着かない。


「なら、リチャルはどうする?」

「部屋に戻ることにする。ルオンさんは?」

「俺は……少し町をブラブラするよ」


 ということで三者分かれて行動することに。なんとなく町の広場へ行って掲示板を確認してみる。当然ながら以前確認した時と変わっていない。


「さて、どうするかな」


 自分のことやエイナについてなど、考えるべき点は多い。


 まず俺についてだが、現在のところ上位の魔物に攻撃が通用しにくいという点については解決の目処が立っていない。天使と会うことができれば……と思ったが、それでも解決しなければどうすべきか。


「一番重要なのは、俺の攻撃がどうも神とやらの影響を受けているかもしれない、ということか」


 『彼』そのものには十分なダメージを与えられたにもかかわらず、この大陸の魔物には耐性がある……根本的に俺達の考え方が違うのか、それともこの大陸と何か相性が悪いのか?


 ともあれ、現状はこの耐性がある前提で戦う必要がある。地底みたいに全力ならどうにかなるんだが、仲間などがいる場合や、地上だと周囲に被害が及ぶからな……この辺りは色々考慮しなければならないだろう。


 で、もし『彼』に挑む場合、今回みたいなパターンになってしまうと非常に厳しい。というよりそういうことになると仮定して今後対策を練っていく必要性がありそうだ。


「……ガルク」

『どうした?』

「ガルクの方で、俺の魔力について少し調べられないか?」

『実は本体と連絡を取り、調べているところだ』


 お、それは朗報だ。


『とはいえ、魔物が耐性を持っている事実が以前遭遇した地底の存在であるとしたら……そもそも正体すら図りかねているからな。我々としてもかなり大変だ』

「どうにかするには時間が掛かるか」

『うむ。しかし全力で対応することは約束しよう』


 うん、それはありがたい……と、ここでガルクからさらに言及が。


『ルオン殿、今回アンヴェレートという堕天使と遭遇する前、洞窟で奇妙な感覚を抱いていたな?』

「ああ、俺だけが感じたことだから、気のせいかなと一度は思ったけど……」

『あの洞窟には瘴気など以外に、地底に存在していた神の力が存在していたと仮定したら、ルオン殿の内に眠る魔力と親和性を発揮し、違和感を覚えたという可能性もある』


 ……実際に『彼』と目の当たりにした時は何も感じなかったので、やっぱり大きな相違点がありそうだな。


「本当に神の力なのかはともかくとして、少なくとも俺はこの大陸に眠る何かと深い関わりがある、と考えてよさそうだな」

『うむ』


 返事が聞こえた直後、ふいに視線を感じた。周囲見回すと、連絡所の入口で、女性と男性がこちらを見ていた。

 二人は俺の視線に気付くと、一度互いに顔を見合わせ……やがて、女性が近寄ってくる。


「って、あの人は武勲獲得の時に受け付けしていた人だよな」


 何かあったのかな……? 疑問に思いながら近寄るのを待つ。

 そして女性が俺の正面に立ち、


「……ルオン=マディン様」

「はい」

「武勲獲得の件で、あなたにお会いしたい方がいらっしゃいます。もしよければ、少し時間をいただけないでしょうか?」


 早いな。掲示板が更新される前だから、アンヴェレートを倒したことを宴の主催者側に報告し、こうして反応があったということかな?


「……わかりましたが、今からですか?」

「はい」


 即座に頷く女性。


「その、お仲間の方がいらっしゃるのならば、同行しても構いませんが」

「今日は別行動なので……いいですよ。俺一人で話をします」


 後で報告する形をとってもいいだろう……そう考え、女性と共に連絡所の中へ入った。


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