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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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竜と洞窟奥

 再度洞窟へ入り込んだ俺達は、迷わず竜のところへ向かう。


「俺が防御するから、ソフィア達が攻撃してくれ」

「それではルオン様が武勲を得ることができませんが……」


 ソフィアの言葉に、俺は「問題ない」と答え、


「今回はソフィア達に譲るさ」

「しかし……」

「俺の方は魔力について検証する余地があるからな……洞窟内で逃げ場も少ないし、確実に仕留められる戦法で応じた方がいい」


 その意見に……ソフィアは「わかりました」と答え、


「ロミルダ、大丈夫?」

「うん」

「よし、そういうわけで……」


 と、俺が言ったところで竜がいる場所へ。光をかざすと、なおも佇む竜の姿が。

 すると次の瞬間、咆哮を上げた。やる気満々らしい。


「さっきと同じ戦法でいこう。アルト達が言っていた賢いという点について、それで検証できる」


 もし明確な知性があるなら、十中八九俺が障壁を形成すれば何かしら反応があるはず――そういう確信の下、戦闘が始まった。

 竜が翼を広げこちらへ向かって飛翔する。といっても洞窟の中なので天高く飛ぶわけではなく、こちらに狙いを定め滑空するような感じだろうか。


 それに対し、俺は障壁で対抗する。先ほど攻撃を防いだことから俺の魔法で易々と対応できる――結果としてはやはり竜は障壁にぶち当たって弾き飛ばされた。

 竜は愚直な行動しかしていないが……胸中で呟く間に障壁を解除。ソフィアとロミルダの魔法が炸裂する――!


 雷撃と紫の光。その双方が見事竜を捉え、洞窟内を染め上げる。光の渦すら発生し、その中から竜の叫びが聞こえてきた。

 ダメージは確実に与えている。耐久力がどの程度かわからないが、森の中で戦った巨獣よりも高くはなさそうな雰囲気。確かに強大な魔物ではあるが、俺達からすれば撃破は難しくなさそうだ。


 さて、竜の行動に変化はあるのか……考えていると、体勢を立て直した竜が大きく口を開けた。炎のブレス――


 俺はすかさず障壁を形成。それと同時に炎が俺達へ向かって飛来してきた。

 業火が障壁の奥で燃えさかり、竜の姿を隠す……ここで俺はレスベイルを呼び出した。すぐさま魔力探知を行い、竜がどこにいるか確認する。


「炎を目くらましにして、一度離脱する可能性は?」


 ソフィアの意見。俺は小さく頷き確認。果たして――


「……ビンゴだ」


 ソフィアの言うとおり、俺達から離れ――隠れようとしている。もっとも、洞窟は広いがさすがに竜が身を隠すスペースなどない。どうするのか。

 レスベイルで魔力探知を行っていると、竜が一瞬だけ強い魔力を発した。その場所を確認した後に、炎が収まる。障壁を解除し周辺を見回すと、


「……いませんね」


 ソフィアが言う。俺は頷き、レスベイルが探知した場所に目を向けた。

 漆黒に覆われている洞窟の一角、天井付近。明かりが届かない場所なので、視認することはできない。


『……ここからは我にも見えんから推測だが』


 ふいにガルクが語り出す。


『明かりで照らしたとしても、擬態していて竜を見ることはできんかもしれんな』

「擬態?」

『正攻法で勝負するのは無理だと判断し、奇襲しようと考えたのではないか?』


 ああ、確かに……俺はソフィアに顔を向け、


「居所はわかるんだが、どうする?」

「魔法を放って様子を見ましょうか」


 俺はソフィアに竜の位置を伝えると、彼女は『ライトニング』を放った。雷撃が洞窟内を切り裂き、竜に直撃する――

 と、思いきや雷撃は当たらなかった。レスベイルが少し魔力に揺らぎを感じたので、どうやら避けたらしい。


「……なるほど、こっちの動向は常に観察しているのか」

「よけた、となると厄介ですね。上級魔法を使いますか?」

「いや……ここはロミルダ」

「何?」

「一度やってみてほしいことが」


 ……ソフィアの『スピリットワールド』で巨獣に決定打を与えることができた。なら今度はロミルダの能力を試す番だ。


「竜に攻撃を当てるには、その位置を見極め攻撃する以外に、避ける余裕すらないくらいの広範囲に魔法を放つ、という方法もある」

「逃げられないくらいに光を生み出すってこと?」

「正解だ」


 ――彼女は頷き、意識を集中させ始めた。すると竜が反応したか唸り声を上げる。

 とはいえ、竜が仕掛ければ当然俺の魔力障壁と相対しなければならない。それがわかっているためか、竜も動かない。


 そして、ロミルダの力が解放される。俺達の周囲――それこそ埋め尽くすというほどに、多数の光が生み出された。

 洞窟内を鮮やかに照らすその光が竜へ向かい――直後、轟音が生じる。竜には……直撃したらしく、雄叫びが聞こえてきた。


「さて、どうする?」


 このまま隠れていてもいずれ……と思っていたら、竜がドスンと地面に降り立った。

 次いで叫び声を上げこちらを威嚇する。来るな、とでも言いたいのだろうか。


「……どうしますか?」


 ソフィアが問う。俺は竜を見据えたまま、


「作戦は変えない。ソフィア、ロミルダ、準備を」


 刹那、炎が俺達へ迫る。それを障壁で平然と防いだ後、竜が炎を無視し突撃する様を捉えた。

 途端、障壁とぶつかる竜。弾き飛ばされるかと思いきや、踏ん張りさらに体当たりを仕掛ける。物理的に壊そうとしているのか……? とはいえそんなもので壊れるほど障壁はヤワじゃない。


 あるいは――とある一つの推測が浮かび上がった瞬間、ソフィアの声が。


「ルオン様、いけます!」


 即座に障壁を解除する。直後、ソフィアの正面に光が発せられる。


 これは『グングニル』か――光属性上級魔法が収束し、それが凄まじい魔力を引き連れ竜を襲う!

 敵は避けることができず、まともに受ける。当たったのは胸部。すると光が弾けゴアアア――と、轟音と共に竜の体を抉る。


 次いでロミルダの光が突き刺さる。双方の攻撃が炸裂し……やがて、竜は崩れ落ちる。


「倒したの?」


 ロミルダが呟いた直後、さらなる咆哮。まだ闘志は残っている。


「ソフィア、決めてくれ」

「はい!」


 返事と共にソフィアはトドメの『ディバインロード』を放つ。雷撃が竜に直撃すると、敵を中心にして光の柱が洞窟内に生じた。

 落雷でもあったかのような凄まじい音が俺の耳にも入る。その中で竜が悲鳴を上げた気がしたが、それも全てかき消された。


 光が途切れると、竜のいた場所に黒い消し炭のような体が一つ……それもやがて崩れ、竜は跡形もなく消え去った。


「……終わったな」


 息をつく。巨獣と比べ、やはり耐久力は高くなかったようだ。


「厄介な竜でしたが、怪我もなくなによりです」


 ソフィアの言葉にロミルダも頷く。


「イグノスさんの言葉では、奥にさらなる瘴気があると……」

「ああ、それを解明しよう。それと――」


 俺は竜の行動を思い返し、告げる。


「隠れた後に竜が攻撃し始めた際、俺の障壁を無理矢理壊そうとしただろ?」

「はい、そのようですね」

「なんとなくだが、あれは竜を操っている存在が意図的にやっていたことのように思える……俺の障壁の耐久性を確かめた、とか」

「意図的に……?」

「あくまで操っている存在がいれば、だけど」


 ただ、俺の心の中では確信に近い思いが浮かんでいた。竜を操る存在……最上級クラスの魔物を操る以上、相当な力を所持していると考えていいだろう。

 俺達は洞窟内を調べる。結果、その一つからさらに濃度の高い瘴気を発する場所を発見した。


「行くぞ」

「はい」


 俺の言葉にソフィアは頷き――洞窟の奥へと進んだ。


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