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賢者の剣  作者: 陽山純樹
天使の箱船

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魔法使いの武器

 巨獣へ攻撃を仕掛けている魔法使い達は、右腕に小手のような物をつけた。魔法を強化するのか……いや、そういう効果があるのなら最初から装備しているはず。別の目的があるのか?


 疑問に思っている間に魔法使い達が動く。全員が右手を魔物へ突きだし、魔力が収束を始めた。

 青白い光が全員の右腕に集まる。するとそれがまるでレーザーのように撃ち出され――巨獣へ着弾した。


 雷光が弾けるような音が耳を打つ。どうやら雷属性の攻撃みたいだが……うん、通用していないな。


「おお、やってるな」


 横から声。見れば、俺達と同じように音を聞きつけた戦士達が。

 渓谷を挟んで反対側にも、魔法使い以外に戦士達の姿がある。野次馬みたいだが……まあさすがに目の前の敵を倒すべく動くようなことはしないか。


 で、その間にも魔法使い達が延々と攻撃を仕掛ける……が、通用していない。巨獣は平然とのっしのっし歩いている。


「また変な武装開発したんだな」


 ふいに戦士の一人が声を上げた。何か知っていそうな雰囲気だったので、俺は問い掛ける。


「あの魔法使い達のことを知っているのか?」

「おお、知ってるぞ。たぶんレイスお坊ちゃんの私兵だろ」

「レイス?」

「レイス=ルターナっていう、この国の貴族だよ。魔法兵器を開発しているらしくて、時折魔物の巣に踏み込んで実証実験をやるんだと」

「とすると、宴には関係ないのか?」

「一応参加はしているみたいだな。でも個人じゃなく集団で戦っているからな。しかも当のレイスお坊ちゃんは戦わないときてる。ま、獲得できた武勲はお察しだろうな」


 ……口ぶりからすると、あんまりよく思われていなさそうだなぁ。

 まあ情報は得た。どうやら右腕に装備している小手は、開発した武器らしい。


「普通の魔物なら十分効果はありそうですけね」


 ソフィアが相も変わらず攻撃し続ける魔法使いを眺めながら言う。確かに、巨獣に対しては効果ゼロだけど、普通の魔物に対しては有効打になりそうだな。

 やがて、魔法使い達が攻撃を終える。だが小手は外さないまま待機しているが……命令待ちかな?


「どうするんだろうな」


 お手並み拝見、とでもいうような雰囲気で戦士が言う。基本巨獣は攻撃してこないので、魔法使い達は好きなだけ準備ができるわけだな。

 多人数で魔法を浴びせても効果が無いのなら、次はおそらく一点に集中して攻撃するかな……と、予想通りの行動を始めた。魔法使い達が一斉に小手を掲げると、魔力が同時に生まれる。


「複数人の魔法を集め、放つというわけですか」


 ソフィアが興味深そうに眺める。


「こういうのは、基本同調する人達全員が詠唱などを行わなければいけないのですが……」

「あの武器を利用すれば条件を無視して魔法を発動できる、というわけだな」


 俺が声を発した瞬間、魔法使い達の魔法が巨獣の頭上に収束し始める。白い光が小手から空中に留まり、それが次第に大きくなっていく。

 十数人の魔力が結集したのだ。確かに威力はありそうだが……と、魔法がついに発動する。落雷のような轟音を上げ、白い光が巨獣へと降り注がれる!


 光が渓谷の中を満たし、戦士達の中には驚き声を上げる者も……やがて光が消える。そして見えたのは……何も変わらない巨獣の姿が。


「効いていませんね」

『というか、今のは成功と呼べんな』


 と、ガルクが発言した。


『魔力を集めるにしても、それが攻撃に余すところなく使えるわけではない……訓練が必要だ。あの小手でその訓練を省けると考えたのかもしれないが、そういうわけにはいかんようだ』

「逆に言えば、あの小手をフル活用すれば、あの魔物に対抗できる威力を出せると?」


 人の目もあるので小声で問い掛けると、ガルクは『どうかな』と応じた。


『他にも色々と障害があるだろうからな……あの分だとソフィア王女の魔法の方がよほど効果があるだろう』

「そうか……ソフィア」

「はい」

「試しにあの魔物に魔法を撃ち込んでみてくれないか?」


 ――そんなことを語る間に、どっかの戦士か誰かが火球を投げつけたりしている。上で安全だからということで好き放題やっているな。


 というか、巨獣はただ歩いているだけで渓谷の上にいる俺達をどうにかしようという感じには見えない。魔物からすると迷惑千万だろうなあ……けど、こういう魔物が外に出れば甚大な被害が出る。倒せるなら倒すべきだろう。


「通用するかわかりませんが……」

「ひとまず、そうだな。雷光の魔法で頭とか狙ってもらってもいいか?」


 彼女は頷き魔法準備を行う。僅かな時間で魔力収束を完了すると、ソフィアは『ライトニング』を放った。

 一筋の雷撃が巨獣の頭部へ突き刺さる――さすがに貫通とかは無理だった。しかし弾けた音と共に、巨獣の動きが鈍った。


「……効いてます?」

「そんな感じだな」


 おお、頭を振ってる。効果は多少なりともあったようだ。けど彼女の魔法なら、もうちょっとダメージがあってもよさそうだが――


『ふむ、あの魔物が丈夫なだけ、というわけではないかもしれんな』


 ここでまたもガルクが発言。どういうことだ?


『渓谷内には、かなりの魔力が充満している。その力がどうやらあの魔物に味方しているようだ』

「というと?」

『魔物の魔力と渓谷の魔力が同調し、自然と魔力障壁を発生させている……つまり、渓谷の中であれば普通よりもずっと防御力が高いというわけだ』


 なるほど、魔法使いの猛攻を防げたのは、そうしたことも関係しているのか……素の攻撃力が足りていないという可能性も否定できないけど。

 ふむ、とはいえソフィアの攻撃は通用したわけだし……このまま魔法を上から撃って倒すのも手か。


 そんなことを思った矢先、魔法使い達がさらに動いた。まだ手があるのか?


「全員、構え!」


 指揮官の声。どうするのかと思ったら、再度魔力収束を開始する。第二射ってことか。


「ルオン様、どうしますか?」


 ソフィアが問う。うーん、このまま戦闘に入ってもいいけど、魔物が本腰を入れたらどうなるかわからないんだよな。ここは魔法使い達が攻撃を止め、野次馬が退散したら仕掛けるべきか。

 そう結論を出し口を開こうとした時――変化は起きた。


 突如、巨獣が雄叫びを上げる。渓谷の上にいる俺達にも届き、体が揺れそうなくらいの音量だった。

 もしや、反撃に――そう考えた時、背後に気配を感じた。


「何……?」


 見れば、そこにはいつのまにか魔物が。


「これは……」

『呼び出した、と考えるのが自然か』


 ガルクが言う。あの巨獣には魔物を呼び寄せる力があるということか?


「戦うぜ!」


 戦士の一人が声を上げると、野次馬だった面々が戦闘態勢に入る。俺達も参加しようかと思ったが……なんとなく巨獣の方が気になって視線を移す。

 魔法使い達がさらなる攻撃をしようとしていたところで、変化が起きた。俺達の反対側にいる魔法使いの一人が、突如魔法を中断したのだ。


 おそらく魔物の妨害に遭っている……途端、指揮官らしき人物が叫ぶ。


「貴様! 何をやっている――!」


 そこまで言った直後、ソフィアが「あっ」と声を上げた。視線を移すと、森から突き飛ばされたのか――一人の金髪男性が渓谷へ落ちていくところだった。


「――わああああっ!?」


 指揮官か? 助けないと、と一度思ったが、彼は風の魔法でも使ったか空中で動きが止まった。

 そのまま浮上を……しかし、男性は動かない。


『まずいぞ』


 ガルクが言った。


『おそらく渓谷の魔力が影響し、あの者の魔法が通常よりも弱まっている。このまま放置すれば、彼は落下し巨獣の餌になるぞ――』


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