宴のルール
天使の宴――その名前は確かにとあるゲーム上で存在していた名前だ。
それが『エンジェリック・アーク ラストブレイブ』という名前の――ソーシャルゲーム。『エンジェリック・アーク』の続編、というか番外編か。
「つまりその宴に参加すれば、天使とも会えるし話ができるというわけですね」
ソフィアの言葉にエーネは頷く。
「そうね。宴には天使が作り出した魔法の道具を使うの。どういう魔物を倒したか確認することができるらしくて、それを用いてどれほど魔物を狩ったか……それによって、順位を決める」
うん、ゲームでも確かそんな設定だったはず。要は強い敵を倒せばポイントを稼ぐことができて、そのポイントと引き換えに武器などを手に入れることができた。
他にも課金することで、別に武器や仲間が得られた……俺も少しは触ったことがあるけど、そこまでのめりこんでなかったのであんまり情報もない。
まあ、友人の話だとストーリーはあってないようなものだったみたいだけど……ソーシャルゲームだったのでまあ色々意見はあったみたいだけど……ともかく、
「ここでやることは決まったかな」
リチャルの発言に、俺は首肯する。
「まあ、シンプルでわかりやすいと言えるけど……ただ、天使でも俺達の場合は上の階級の天使と会わないといけないからな」
「相応の武功が必要ですね」
ソフィアは言葉と共に笑みを浮かべた。やる気は満々だな。
俺やソフィア。加えロミルダの力ならば十分上へ行くことは可能だろう。
「……まずは天使と出会うことを目的としよう」
俺の発言に全員が視線を集中させる。
「俺達の目的が果たせるかは、ひとまず天使と出会ってからだ」
「……とはいえ、宴は既に始まっている」
ここでエーネが語り出す。
「中には他の大陸からやってきた人物もいて、相当な戦果を上げている人もいるわ。天使に願いを叶えてもらうために武功がどれほど必要なのかわからないけれど……順位で決めるとしたら、既に差がついてしまっている」
「大丈夫ですよ」
と、自信を覗かせソフィアが言った。だがエーネの顔は曇ったまま。
「けれど、無理をすれば最悪死に至ることもある……天使達や王宮の人達は、その辺りのことを調整してはいるみたいだけど」
「私達のことは心配なさらず」
微笑を浮かべるソフィア。エーネはそれでも心配そうだったが……やがて、
「そう。もし何かあったら協力するわ。あ、私が紹介状を書いてあげましょう」
「紹介状?」
こちらの疑問に、エーネもまた微笑んで見せた。
「一応、国の人とつながりがあるから、もし困ったことがあったら頼って」
「ありがとうございます」
アナスタシアの紹介状だけで色々面倒見てくれたこの人に感謝だ。
その後、俺達はエーネの屋敷を離れ歩き出す。
「ふむ、シンプルだがどう動くべきなのか」
「まずは宴がどういうルールで行われているのかを確認しよう」
リチャルの言葉に俺は答え、大通りへと戻る。相変わらず人が多いのだが、その流れが一定方向であることに気付く。
「あっちかな」
旅人の流れから予測し歩を進める……やがて町の中心部付近に辿り着いたのだが、そこに大きな掲示板が一つ。
さらに周囲には冒険者らしき人物達がたむろしている。これは確定かな。
「魔法の道具をもらわないといけないんですよね」
ソフィアが周囲を見回す。それらしい場所がないかを探し、
「……あ、ルオン様。あの建物に旅人の方々がどんどん入っていますよ」
視線を移すと、確かに人々が出たり入ったりしている。
「あそこに行ってみるか」
俺達はそのまま歩を進め建物の前に。お手製の看板があり『天使の宴連絡所』と書かれていた。
「……もうちょっとネーミングどうにかならなかったのかな」
まあいいか、伝わればいいんだし。というわけで中へ入る。ずいぶんと混雑しており、ソフィアははぐれないようロミルダの手を握る。
一番奥の受付には、何人かが並んでいる……なんというか、あれだな。ゲームの序盤に登場する冒険者ギルドみたいな感じだな。
「しかし、ずいぶんと参加者が多いですね」
ソフィアが人々を観察しながら言った。
「エーネさんが言っていたように、大陸外の冒険者も多いのでしょうか?」
「そうだな。ここは大陸の玄関口だ。宴のことを聞いて訪れる冒険者が最初に集う場所……必然的に人も多くなるってことだろう」
同意の言葉をソフィアが告げた時、いくつかある受付の一つが空いた。すかさずそこへ歩み寄り、口を開く。
「すみません」
「宴への参加でしょうか?」
こちらの言葉に受付の女性は笑顔で答えた。
「はい、そうですけど」
「ではこちらに、参加者の方は記入をお願いします」
書類とペンが渡される。その内容は名前や出身大陸などを記載する項目がある。
例えばどこどこのギルド所属とかの記載もない。こうなると登録者はどういう人間でも構わない感じだけど……大丈夫なのか?
疑問に思いながら所定の欄に記入しようとして……ペンが止まる。
「あのー、これは宴の参加者だけ、ですよね?」
「はい。この名前を記入された方に、参加のために必要な道具を差し上げます」
明瞭に答える受付の女性。ふむ。
「俺とソフィアは参加でいいとして、リチャルはどうする?」
「さすがに不参加だ。戦力になれそうにないからな」
「ならロミルダは?」
「やる」
一言。まあ彼女がそう言うなら……。
三人分の名前を記入して提出。すると受付の女性はしばし手元をゴソゴソとさせ、
「はい、こちらをどうぞ」
渡されたのは……金色のバッジ。
「こちらが参加者を示す道具となっております。この道具は魔力を込めることで機能しますので、一度お試しください」
俺とソフィア、そしてロミルダは全員バッジを握り魔力を込める。すると、ほんの少しだけ熱を帯びた。
「熱を感じたら成功です。その道具は、参加者であるあなた方を示す物となりました」
……天使が作り出した道具であるため、なんだか色々と機能が備わっているように感じられる。
「では次に、宴のルールを説明します」
受付の女性が言う。俺達は耳を澄ませ聞き入る構え。
「まず目的は、魔物の討伐です。近年この大陸では魔物が増えたため、それを駆除する意味合いがあります。そして倒した魔物の質などに応じ、武勲を稼ぐことができます。武勲をできるだけ多く獲得すること。それこそ皆様の目標となります」
そう言うと彼女はバッジを指差す。
「魔物が近くにいますと、その道具が光ります。見事魔物を倒した場合、その魔力の一部を道具が取り込み、魔物の能力などを記録します。その記録に基づいて、私達運営の者が武勲を皆様に与える形となります」
……はあー、なるほどな。
「なお、こちらのメモに従い魔法を発動すると、バッジが手元に戻ってきます。もし紛失および、盗難に遭われた場合は使用してみてください」
そう言って受付の人がメモを渡してくる。結構しっかりしてるな。盗難対策までするとは。まあこれは、誰でも受け入れているが故の問題の対処をしているだけとも考えられるけど。
「では次に、魔物の討伐について説明させていただきます」
女性はそう前置きし、さらに続けた。




