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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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本物との対峙

 リチャルが生み出した竜により俺達はネフメイザがいる場所へと急行する。その道中、俺は仲間達に伝える。


「相手がどう動くかで戦い方は変わってくる……ただ俺やソフィアが相手の攻撃を受け、ロミルダの魔法がメイン、というのは変わらないと思う。そのつもりで頼むよ」

「ルオンさん、先の話になるが」


 と、今度はリチャルが話し始める。


「この戦いが終わった後は、どうするんだ?」

「大陸を出て、戻る……と言いたいところだけど、おそらくそうもいかない」

「何か理由が?」

「今回の戦いはネフメイザが首謀者なわけだが、本質的な敵は俺が地底で出会った、特殊な存在だ。あいつをどうにかしない限り、戦いは終わらない」

「今回で、解決というわけにはいかないのか。しかもどうやって倒すのか」


 嘆息するリチャル……とはいえ、策がないわけではない。


「俺に一応考えはある」

「本当か?」

「けど……長旅になるぞ」

「何を今更」

「同感です」


 ソフィアが賛同した。


「私達はルオン様に付き従う人間です。どこまでもお付き合いしますよ」


 そう言ってもらえると助かるけど……ソフィアは本当にいいのだろうか――と、考えてやっぱりそれも今更だと思った。


「……わかった。詳細については、この戦いが終わった後に話すよ」

「なら、きちんと決着をつけないといけないですね」


 ソフィアの言及に俺は頷き、眼下を眺める。


 竜の速度は相当なもので、景色が恐ろしいほど早く過ぎていく。戦いが終わってまだ数時間くらいしか経っていないため、ネフメイザとしてもこの急襲は心底厄介だろう。


「皇帝の竜魔石の力を探って私達は向かうわけですが」


 ここで、ソフィアが話し始める。


「それがダミー、という可能性はあるのでしょうか?」

「ゼロではないが、そうなるとロミルダの索敵に複数力を持っている人間が引っかかるはずだが……その辺りについても、戦いが終わった後に相談だな」


 俺はロミルダに視線を移す。正座姿で、何か考え込むように俯いている。今もネフメイザについて調べているようだ。


「ロミルダ、どうだ?」

「……動いてはいないよ」

「準備をしている、といったところかな」


 リチャルの言葉に俺は「そうかもな」と同意した。






 やがて俺達が到着したのは、渓谷。岸壁に沿う位置にある洞窟の一つから、ネフメイザが持つ皇帝の竜魔石の力があった。


「……またずいぶんな場所に居を構えたな」

「このくらいしないと、見つかる可能性があると思ったんだろ」


 リチャルに対し、俺は洞窟を見ながら答える。

 見た目は何の変哲もない洞窟。俺はいち早く竜から入口に飛び移り、中を確認する。


「……奥は見えないな。ここからは完全に手探りで進むしかなさそうだ」

「ルオンさん、俺はどうすればいい?」

「この周辺で待機していてくれ。使い魔を傍に置いておくから、連絡はそれで」

「了解した」


 ソフィアとロミルダも飛び移り、リチャルは竜を操り飛翔する。残された俺達は洞窟を目の前にして沈黙し、


「……それじゃあ、進もう」


 中へ――直後、淡い魔力が肌に触れる。

 とはいえ、攻撃的な要素は感じられない……ふむ、まずは周囲を調べてみるか。


「レスベイル」


 精霊を生み出し、俺は指示を行う。


「周囲の魔力の分析を」


 作業を開始する……どうやらこの洞窟そのものが魔力を発しているようだ。


「罠が満載、というわけではないみたいだな。さて、どうするか」

『ここまで来たのだ。行くしかなかろう』


 ガルクが突如出現し、俺へと言った。


『我も色々調べているが、異常な部分は特に見当たらないな』

「何かあるにしても、魔力を利用したものではない、ということかな……ソフィア、ロミルダ。俺についてきてくれ」


 歩き出す。洞窟内は何の変哲もない岩肌だけが存在していたのだが……しばらくすると、単なる岩ではなく灰色の石造りに変化。


「……天使の遺跡かな?」

「ネフメイザが造ったわけではなさそうので、そういうことでしょう」


 俺の言葉に続き、ソフィアが見解を述べる。


「元々地下に存在していた遺跡が何かの拍子に岸壁に現れ、そこをネフメイザが利用した、といったところでは」

「よくこんな場所を見つけたな……ま、何度も戦いを繰り返した結果、偶然発見したといったところか」


 魔物など洞窟を守護する存在は一切無い。おそらく岸壁に入口があるので警備などをする必要がないという判断だと思う。そして帝都の決戦からここまでそれほど時間も経っていないので、俺達に備え準備はできなかったということか。

 まあそれならば俺達にとって好機だが……考える間に、開けた空間に出た。


 石造りの……テーブルだろうか? この遺跡に元々存在していた物の上に、紙の束――研究資料らしき物が山積みとなっている。どういうことに使うのかわからないような器具も散見されるので、ネフメイザにとって実験場所といったところか。


「どうしますか?」


 ソフィアが前方を指差す。真正面に壁面と同じ材質で造られた扉が一枚。そして俺達から見て右側に一枚。


「ロミルダ、気配は感じられるか?」

「近い場所にいるのは確かだけど、どっちの扉の先にいるのかは……」


 運任せか。俺は少し迷った後、真っ直ぐ進みその扉を開けてみる。

 ゴゴゴ、と大層な音を上げながら扉は開く。奥には通路。天井はそれなりに高いが、幅は狭い。


「……奥に、いるような気もする」


 ロミルダの言葉。俺は一度頷き、先導して歩む。

 後方に控えるレスベイルが魔力を調べ、少しずつ濃くなっているとの報告が返ってくる。ただそれは魔法準備というレベルではなく、ネフメイザがいるからということみたいだ。


 この通路が正解か……などと思いながら角を曲がる。その奥に、扉が一つ。


「……これは」


 ソフィアが呟く。俺もレスベイルを介さずとも認識できた。

 明らかに、他の場所とは異なる質の魔力……どうやら、終着点らしい。


「ロミルダ、大丈夫か?」

「うん」


 彼女は頷く……その懐には再度箱に封印した武器がある。地底で遭遇した敵もいることだ。使う場合はタイミングが重要だな。


「ソフィア、移動中に話した方針通りにいくぞ」

「わかりました」


 扉の目の前に到達。罠などがないことを確認した後、扉を開けた。

 その奥は――大聖堂を思わせるような広々とした空間。しかも他の場所とは異なり、柱や壁面に紋様が掘られ、造形美を感じさせる。


 天使達が祈りを捧げるような場所だったのだろうか……そんなことを考えながら、真正面を注視。そこに、一人の男性が立っていた。


「……ネフメイザ」

「決戦の勢いのまま、ここへと来るか」


 吐き捨てるような声音だった。その足下には青に輝く魔法陣。


「居所を把握できるとは思っていたが……この早さからすれば事前に策を練っておいたというわけか」

「逃がすわけにはいかないからな」


 腰にある剣を抜く。竜魔石を含んだ武器だが、俺の剣では通用しない可能性が高いだろうな。なにせ皇帝の竜魔石の力を所持している。

 ネフメイザは動かない。警戒しているのか、こちらが近づくのを待っているのか……どちらにせよ、出会った時点で何か仕掛けてくるということはない様子。


 ならば――俺は一瞬だけロミルダに視線を移す。彼女はコクリと頷き――魔力収束を始めた。


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