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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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竜の終焉

 彼女の奥義を受けても、魔法を口の中に注がれてもまだ人造竜は生きている……巨体に違わずその耐久力は脅威だと言える。


 ソフィアの周囲は魔力同士の激突によって白い粒子が舞い視界が効かない。俺もどうにか状況を探ろうとしたが、うまくいかない。これでもし竜が口を開けて襲いかかってきたら――


「……来る」


 ソフィアが呟いた。視界が効かない中で察したか、剣を構える。

 次の瞬間、竜の頭部が白い粒子の中から姿を現した。鱗がはがれ醜悪な顔を晒す竜は、ソフィアに食らいつこうと口を開け飛び込んでくる。


 だが彼女は冷静に応じた。素早く斬撃を頭部に入れると衝撃波が拡散。その勢いは相当で、大気を振るわせる音と共に巨体が吹き飛ぶ音がした。

 それと共に周囲の粒子が消える。ボロボロになった人造竜が起き上がろうとし、なおかつその魔力で再生を行っている。


『……魔力は、もうあまり残っておらんな』


 アナスタシアが言う。再三にわたるソフィアの猛攻により、とうとう限界がきたということか。


「ならば、トドメを刺します」


 明言したソフィアは、再度魔力収束を始める。一方の人造竜はそれに呼応したようだが、動きがずいぶんと鈍い。

 防御しようとしている様子だが、それを終えるよりも早くソフィアが攻撃態勢を整える。


 風前の灯火と言える竜だが――次の瞬間、最後の抵抗とばかりに魔力が膨れあがった。

 それはまるで、自らを犠牲にしてでもソフィアを倒すという雰囲気……いや、人造竜の役目を考えれば、ここで彼女を倒すことが責務、というわけか。


 ソフィアは剣を構え直し、平然と応じる。真正面から――好敵手であるかのように、最後まで力で対抗した。

 彼女が放ったのはすくい上げるような斬撃。それは地面に光を生み、捨て身の特攻を行った竜へ、綺麗に入った。


 ズアッ――光が巨大な刃のように、人造竜の体を両断する。竜はそれにより咆哮を上げることすらできず……いや、まだ破壊されていく体が、再生しようと試みる。


「ずいぶんと、無茶な設計ですね」


 ソフィアは呟く。その顔には多少ながら疲労の色は存在するが、まだ『スピリットワールド』を発動できそうな余裕はある。

 竜は最早破壊されていない部位を見つける方が難しいほどの状況となり、それでもソフィアへ向かう。だがその歩みは一歩一歩が途轍もなく遅く、周りの戦士でも対処が容易なほどになっていた。


 それに対しソフィアは、容赦のない一撃を加えた。トドメとばかりの『スピリットワールド』は、光の柱を生み、ボロボロの人造竜の体を包む。

 雄叫びが柱の中から聞こえる。次いで俺の目に飛び込んできたのは、再生能力が途切れ体が崩れていく竜のシルエット。


『……終わりじゃな。もう魔力も残っておらん』


 アナスタシアが断言。それを証明するかのように光が消えた時……後に残ったのは、原形を留めないほど破壊された竜の姿だった。


「ようやく、終わりましたか」


 ふう、と息をつくソフィア。時間にしてそれほど長かったわけではないが、途轍もない力の応酬だった。

 ともあれ、人造竜を倒した以上はソフィアについては無事が保証されたと考えていいか……人造竜を倒しまだ何かあるという可能性もゼロではないが、ひとまず山は越えたと考えてもよさそうだ。


「ルオン様」


 そしてソフィアは俺に呼びかける。


「私は大丈夫です……そちらは?」

「今ネフメイザの所に向かっている。ロミルダも一緒だ」


 いよいよ決戦は近い。城内にはかなりの魔物がいるのだが、出会ったら即瞬殺している。


「魔物の発生源を破壊しつつ進んでいるんだが……間違いなく前回の戦いよりも早く決戦に持ち込める」


 強行突破も一つの手だが、それをやるとネフメイザとの戦いで妨害が入る可能性と、あとはアベル達の所へ向かう可能性もあるからな……まあ魔物に対しては全部が全部瞬殺なので、大したロスにもなっていないし、倒しておけばいいだろう。


「ルオン様、私もそちらへ向かいますか?」

「いや、こっちはこっちで任せてくれ。ソフィアは町の方を頼む」

「わかりました」


 声が途切れる。会話が終わったのかなと思った時、さらに彼女の言葉が。


「先ほど、侯爵から得た情報から考察し、攻撃するタイミングで魔力が注がれると判断。フォルファと協力し対処しました……ネフメイザはおそらく、ルオン様にも同じことをするつもりかと思います」


 だろうな。俺は彼女に応じるように心の中で同意する。


「問題は俺の場合は竜ではなく、帝都の地下に存在する膨大な魔力だな」


 人一人を封殺するには十分すぎる……というか、あまりに膨大。

 ただソフィアに対し人造竜をけしかけたことから考えて、そのくらいしなければ俺に対抗できない……と、時を巻き戻したことにより結論を出したのかもしれない。


「でもまあ、タネはわかった。対処できるさ」


 語る間にも、俺とロミルダは上へと進む。


「……ルオン様」

「ああ、どうした?」

「……大丈夫、ですよね?」

「ああ」


 即答に、ソフィアは一時沈黙。それに俺は陽気な声で答えた。


「ソフィアの言葉で、俺もどうするべきかわかったんだ。大丈夫」

「わかりました……ルオン様、ご武運を」


 それ以上のことは言わず、彼女は引き下がった。


「私は発生した魔物を倒します」

「ああ。人造竜は消えたが、まだ何か起こる可能性もある。十分注意してくれ」


 四竜侯爵のザウルが特に気になるが……人造竜に関連して色々やっていたと考えると、彼の出番もこれで終わりだろうか?


 疑問が頭をかすめた時、


『ルオン殿、一つ報告がある』


 アナスタシアの声がした。


『ザウルの動きじゃが、竜が消えたことにより浮き足立っている。ヤツが人造竜の動きに関与していたのかもしれん』

「だとしたら、こっちとしてはあまり気にする必要はないのか?」

『シュオンが警戒しているし、そちらの邪魔立てはせんじゃろう。あとはネフメイザ……この世界本来のヤツは問題ないじゃろうが、時を巻き戻すヤツについては?』

「もうすぐ到着する」


 その言葉と同時、俺とロミルダは階段に辿り着いた。

 ネフメイザがいる場所は、この上だ。さて……。


「ロミルダ」


 呼び掛けに彼女は小さく頷いた。


「大丈夫」

「わかった……で、問題はどう攻撃するかだが」


 姿を見つけた瞬間に仕掛けるか……いや、それも想定してカウンター系の魔法をどこかに仕掛けていてもおかしくない。


「ロミルダ、一度ヤツのことを見ていた限り……何か仕込んでいた様子はあったか?」


 彼女は厳しい顔。その辺りの判断は難しいか。


「わかった。ならここは一度出方を窺おう」

「うん」


 俺は決めると同時階段を進む。魔物の姿はない。もう無駄だと悟ったか?


 ネフメイザにとっては、現状は予定外と言わざるを得ないだろう。俺を食い止めることができず、アベル達は皇帝達の所へ向かっている。なおかつソフィアが人造竜を破壊した。ここまでくれば、裏をかかれたと確信するだろう。


 これが何を意味するのか察していてもおかしくない。ネフメイザの行動が変わるのかどうか……それが多少気になる。

 ともあれ、いよいよ決戦だ。


「行こう」


 俺の言葉にロミルダは頷き――歩み始めた。


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