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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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竜の抵抗

 彼女が発する魔力は、確実に竜の右腕を包んでいく――人造竜はやはり対応できず、とうとう肩に到達した。

 同時にガアア――と、城壁でも砕かれるような音が響いた。見れば、ソフィアの攻撃に耐えきれず砕かれる右腕。肩から先が耐えきれず消失し、戦士達が歓声を上げ竜の咆哮が響き渡った。


 対抗するべく竜が左腕をかざす。ネフメイザが命令しているのかわからないが、少なくとも先ほどのようなカウンターを狙うみたいな作戦を用いているとは思えない。

 ソフィアはそれに応じるように新たに魔力を剣に集め、三度目の『スピリットワールド』を行使する。


「左腕を潰すか……」


 確信し俺が呟いた矢先、彼女は差し向けられる左腕に対し、薙いだ。


 剣先を通じ、魔力がまたも迸る。竜が攻撃により集めた魔力を平然と消し飛ばし、一気にその腕を破壊していく。

 人造竜は吠え、左腕も肘から先が一気に崩れ落ちる。両腕が消失したため、ここから次はどうするのか――


 とはいえ、ソフィアは隙を与えない様子だった。


「フォルファ」


 竜精の名を呼んだ彼女は、剣を掲げた。次いで生じたのは魔力だが……今までと明らかに異なる量。まるで……魔王に挑んだ時のように、戦士達が身震いするほどの濃密な力。

 それを見て、俺は彼女の『スピリットワールド』がまさしく創奥義となり、この戦いの切り札となっているのを理解する。


 竜は威嚇するようにまたも雄叫びを上げた――このまま放置しておけばどうなるかわからない。動揺から抜け出した竜が周囲を破壊し始める可能性だって否定できない以上、動きが鈍った今のうちに決着をつけるべきなのは確かだ。


「――終わりです」


 明確な宣言の後、振り下ろした剣。刀身から光が離れ、それが地面を伝い――竜に直撃する。

 一見すると地面を介した単なる飛び道具だが、ここからが違った。急速に光が膨れあがったかと思うと、巨大な竜を包むほどのまばゆい光が生じた。


 そして轟音と共に発生したのが――光の柱。俺は魔物を倒しながらふいに窓を見つけ外を見た。城の外……光の柱が上空へと伸びる光景があった。


 オオオオ――人造竜の雄叫びが聞こえる。光にその身を包んだ竜は、抵抗もできずただ一身に攻撃を受け続ける。

 策が失敗に終わり、残るは直接攻撃しか手がなかった竜だが……それもソフィアによって阻まれ、とうとう竜が消滅――


 そう考えた矢先、ドクン、と一度魔力が鳴動した。


「え……?」


 眉をひそめたソフィアに対し、光に包まれる竜が咆哮を上げる。まだ消えていない。耐えているのか?


 さらに、どんどんと魔力が膨らんでいく……まるでソフィアの魔力に対抗するかのように。


「一撃では、さすがに無理ですか」


 ソフィアは小さく呟くと、剣を構え直した。


 光が途絶えていく。その奥に出現した竜はさらにボロボロになっているが……次の瞬間、その体に魔力がまとわりついた。

 ソフィアは剣を掲げる。二の太刀で一気に決着を……そういう意図があったはずだが、それよりも早く竜が動いた。


 右腕があった部分に、魔力が宿っていく――これは、再生能力!?


 ソフィアは即応し、先ほどと同様地面を伝う『スピリットワールド』を放った。さっきよりも収束時間が短いので威力は低いはずだが、竜を倒すには十分なはず、だった。

 右腕が一挙に再生する。次いで光を防御し――またも光の柱が生じた。


 ――オオオオオオオ!


 雄叫びと共に、竜が柱を抜け出しソフィアへ迫る。この時点で左腕も再生を果たし、さらにボロボロになった体も再生されている。

 そこへ、三度ソフィアが『スピリットワールド』を放った。竜の突進はその直撃によって阻まれた。そればかりではなく、衝撃により後方へ吹き飛んだ。


 あの巨体を平然と吹き飛ばす様は圧巻。ズウン、と音を立て竜は倒れ伏したが、即座に体勢を整える。

 この時点で、竜もまた口を開け攻撃の構えを見せた。ブレス技のようだが、ソフィアはなおも魔力収束を行う。


 まさに根比べ……アベルの戦いと似たような形かもしれない。ただ、その出力の大きさは明らかに上。ソフィアはどこまで応じられるのか。


『魔力は、確実に減っているようじゃが』


 ここでアナスタシアの声。


『内部に存在する魔力が再生によりずいぶんと減った。まああれだけの巨体じゃ。内包する魔力量も相当じゃが、使う量も甚大ということじゃな』

「――いいでしょう」


 対するソフィアは言葉を発し、新たに技を起動する。


「そういうことなら、魔力が切れるまで使い続けるだけです。ちなみにですが、先ほどのように魔力をこちらに放出する気配はありますか?」

『うむ……ナシアによれば、それはないようじゃ。あの魔力はそれこそ膨大じゃったから、二度は使えないのかもしれん』


 逆に言えば、それだけの量の魔力を浴びせられるのだから、異常をきたしてもおかしくない……か。回避できてよかった。


「わかりました」


 ソフィアが返事をした時、人造竜がブレスを吐く。炎のような明らかに特性がわかるものではなく、白い――属性はないのか? 考えられるとしたら魔力の塊をブレスに乗せて放っているということか。


 それにソフィアは――剣を振ることで応じた。こちらもまた白い光。双方が激突し、一時せめぎ合いが始まる。

 だがそれも一瞬のこと。ソフィアの『スピリットワールド』が押し始めたかと思うと、一気にブレスを突き破り、その胴体に光が直撃する!


 炸裂音が響くと再び光の柱が竜を包む。対する竜は光を押しのけるように動こうとして……ソフィアは追撃の構えを見せる。

 正直『スピリットワールド』を連発するという想定は俺もしていなかったのだが……竜は動きを察知し仕掛けたい素振りを見せたが、それでも動けない。


 当然ソフィアはさらに追撃を行うべく魔力を集める。表情は変わっていない。アベルやカトラのように出力は調整していると思うのだが、それでもただ驚くしかない。

 光が途切れる。人造竜はその体を再生させながら、なおも突撃を敢行する。巨体が一歩踏み出すだけで石畳の道が壊れ、破片が散らばる。


 対するソフィアはさらに『スピリットワールド』を放とうとして――いや、それに加え左腕にも魔力を集め始めた。魔法か?

 人造竜が腕をかざす。その表面に相当な魔力。最初の攻撃みたいにソフィアの意表を突くようなやり方ではない。単純に魔力を収束させ、力でもっていこうとする構え。


 だが、その方法ではソフィアに通用しない――


「――これで」


 ソフィアは極めて冷静に剣を振るう。


「決めたいところですね」


 小さな呟き。またも竜の腕とソフィアの剣が交錯した瞬間、白い光が爆ぜた。

 一瞬で竜の右腕が吹き飛び、地面に叩きつけられる。竜は一瞬のけぞったが、口を開け近距離からのブレスを放とうとする。


 けれど、ソフィアは予測していた。左手をかざし、放ったのは――雷属性上級魔法の『ディバインロード』だった。

 その魔法はブレスを阻むように真っ直ぐ竜の口へと入り込んだ。轟音が生じ、雷光と白い魔力の粒子が周囲に拡散する。


 その中でソフィアは一片の容赦もなく次の攻撃を転じる――刹那、再度竜の咆哮が響き渡った。


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