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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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決戦前の力

 ユスカ達と再会して以降、俺は大陸を西へ東へ奔走する。竜魔石を手に入れることが主目的であり、幸いにも俺の活動によりネフメイザにこちらの情報が漏れるようなことにはなっておらず、自由に行動できた。


 その間、精鋭の騎士達などとも遭遇することなく、アナスタシアやエクゾンが見えないところで色々と活動をする。俺は屋敷から往復を繰り返し、せわしない日々を送る。


 そして――


「――では、ルオン様。よろしいですか?」


 場所はアナスタシアの屋敷内、庭園。向かい合うソフィアの言葉に、俺は小さく頷いた。


 時刻は真昼、互いが剣を握りしめ、今からまさに模擬戦闘を行う状況なのだが……俺が握るのは遺跡で手に入れた剣――とりあえず天使が封じた剣なので『天封の剣』と名付けた。それを使う。


 彼女が構えると、俺も剣をかざす。横を一瞬だけ見ると、見守るリチャルとアナスタシア、そしてロミルダの姿。その中でロミルダは訓練だというのにハラハラした様子。


 目を戻す――その一瞬でソフィアは動いていた。飛ぶように跳躍した彼女は、俺の間合いへ躊躇なく踏み込んだ。

 それに対しこちらは剣を盾にして防ぐ。刹那、グオッ――という魔力の衝撃が腕に伝わってきた。


 以前のソフィアとは比べものにならない力……竜精フォルファの援護だ。


 俺は即座に弾くと、反撃の横薙ぎを繰り出す。彼女はそれに反応。結構な力を加えた斬撃に対し――ソフィアは受けきることを選択した。

 ガキンと、金属同士が噛み合う音。それと同時に俺達の動きが止まり、互いに視線を交錯させる。


「……膂力は互角かな」


 こちらの指摘に対し、ソフィアはどこか不満げ。


「フォルファさんの力を組み合わせてなお、互角ですか……というより、ルオン様。本気出していませんよね?」

「まあ一応、余裕は残してあるけど」


 ソフィアは退く。竜精と連携することで結構な力を得たから、勝てるかもしれないと期待感を持っていたのかな。


「では、次です」


 剣を構えるソフィア。次いで刀身に力を集め始める……『スピリットワールド』だな。


「そっちは、本気を出すか?」

「いえ、全力だとこの剣がもちませんから」


 ――フォルファの力も合わさることで、彼女も規格外の力を出せるというわけか。


 再びソフィアが駆ける。次いで放たれたのはすくい上げの一撃で、俺はまたも真正面から受けた。

 そのまま一気に押し返そうとして……彼女はそれに抵抗する。どこまで対抗できるかを試しているような感じかな。


 俺はどうするか一瞬考えた後、受け流し一度距離を置く。


 それにソフィアは果敢に向かってくる。ならば――剣に魔力を注いだ。握りしめる天封の剣はこれに応え、どんどん魔力を吸っていく。

 ……実はまだこの剣の全容を把握できていないんだよな。というか際限なく魔力を吸い続けるから解明するのも難しい。


 もっと精密に調べたいところだが、アナスタシアも「天使の遺跡から出てきた剣はさすがに専門外」だと言われ、結局詳細不明のまま使っている。よって、俺はこの剣を「自身の魔力を受けきることができる性能のいい剣」という感じで使っている。


 ソフィアが『スピリットワールド』を維持しながら再度肉薄する。近距離から攻撃を受ければ衝撃で動きが鈍るかもしれない……今のソフィアならその隙に首筋へ刃を突きつけることは可能だろう。なら俺は――


 双方の剣がまたも激突。金属音より魔力同士がぶつかったことによる耳障りな音が響き……俺は、剣に力を込めた。

 ソフィアはそれに応じようとしたが、剣の限界が近づいたことを悟ったか一転、退いた。そこに目をつけた俺は足を前に出す。ソフィアはまたも後退。ふむ、守勢に回ったか。


 なおも追撃しようと踏み込んだ――直後、ソフィアの動きが大きく変わった。こちらに応じるべく足を前に出す……すれ違いに斬るというのなら中級技の『清流一閃』だが、『スピリットワールド』を維持している状況では型どおりに動くのはおそらく無理。


 しかし、だからといって『清流一閃』以上の動きができないとは言えないわけで――


「来い……!」


 こちらの声に呼応するようにソフィアが走る。刀身にはすさまじい魔力。そして彼女自身竜精と連携することにより大幅に能力も強化されている。

 それに対し――俺は真正面から迎え撃った。一気に身体強化を行い斬撃を放とうとするソフィアに対し、俺は刃を受け……堪えた。


「くっ……!?」


 押し留められたソフィアから苦しい声。そしてこのまま押し切るか下がるか迷いを見せ――俺が先に動く。

 剣を弾き飛ばし反撃に転じる。迷いにより動きが硬くなった彼女へ向け、横一閃。


 防御をしたソフィアだったが――衝撃が抜け、後方へすっ飛ぶ。さすがに体勢を崩すには至らなかったが、それでも勝負を決めるには十分だった。

 足を前に出す。ソフィアはまだ体勢を整えていない。そして、


「――そこまでじゃな」


 アナスタシアが発言。俺はその言葉により動きを止めた。


「ふうむ、竜精の力を組み合わせてもまだまだルオン殿は遠いか」

「そのようですね」


 息をつくソフィア。


「ルオン様、どうでしたか?」

「フォルファとの連携もスムーズにできているし、いいと思う」


 ――竜精フォルファもいるから、防御面もこれで問題ない……と言いたいところだが、やはりまだ不安はある。


「ひとまず、鍛錬でやれることはやりきったな」


 アナスタシアが言う。ソフィアはまだ不満そうだが――


「決戦まで差し迫っている。あまり時間もないため、新たな技法を学ぶより今あるものを高めた方がいいじゃろうな」


 ――侯爵の言うとおり、決戦の日が近づいていた。そしてネフメイザの動向は前回の戦いについて記された資料通りであり、こちらのことはバレていない。このままいけば決戦については前回通り迎えられる。


「さて、いよいよ決戦も間近になったわけじゃが」


 そうアナスタシアは前置きをして、語り出す。


「不確定要素はあるが、全てを埋めるというのも難しい。ただ、わしもエクゾンもそれぞれ動き、中々の戦果を上げている。それは決戦の際、必ず役に立つじゃろう」

「エイラドはどうだ?」


 こちらが尋ねると、侯爵は「問題ない」と返答した。


「あやつにも連絡はしておる。こちらが帝都へ向かう段階で合流することになるじゃろう」


 そう語ったアナスタシアは、腕を組み続ける。


「決戦時の状況を改めて説明しよう。まず我ら四竜侯爵が同時に動き出し、城壁の外側で布陣する。その間に内側に潜伏していたわしらの間者が行動を開始し、内応していた貴族達も行動を始める。同時に民衆達の動きも掌握。多少なりとも反乱組織と連携しているため、ある程度動きは制御できる」


 ……ここまでは前回と同じ。一ヶ月ほどできちんと準備を整えたアナスタシアやエクゾンの手腕は相当なもの。


「で、反乱軍の中心は、アベルなんだよな?」


 こちらの確認の問い掛けに、アナスタシアは「無論」と答えた。


「まずは資料通りに事を進める。アベル殿やルオン殿達は全員、城へ真っ直ぐ向かう。最初の門についてはあっさりとパスできるじゃろう」

「で、その後――」

「うむ、人造竜のお出ましじゃ。さらに精鋭の騎士達も顔を出し、ネフメイザが動き始める。さらにさらに人造竜はルオン殿達を狙うよりも、別方向に動き出す。何やら理由があるのかわからんが……それを見て、ルオン殿達は二手に分かれる」

「資料では、俺やアベル、ロミルダは真っ直ぐ進み、ソフィアが他の反乱組織のメンバーを引き連れて人造竜の相手をする、だったか」

「ルオン殿達は、人造竜の動きを見て、時間稼ぎをするという方針をとったのじゃろう。しかし精鋭の騎士に阻まれ、なおかつソフィア王女は――」

「そうはさせない」


 俺の言葉にアナスタシアも同意するのか頷いた。


「ま、そういうことじゃ……では、ネフメイザの裏をかく作戦会議を始めるとしよう」


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