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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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金色の力

 翌日、俺はエクゾンの屋敷へ立ち寄る。中に入ると侯爵の私兵だけでなく、アベル達の組織に関わる人間もいる。


「さて、ユスカやカトラは……」


 探し歩いていると、庭園方向から金属音が。修行中かなと思いつつそちらへ向かうと、ユスカとカトラが向かい合い剣を交わしていた。

 とはいえ、やっているのはあくまで剣術修行で竜精などを利用しているようには見えない。


「――おお、ルオン君」


 後ろからエクゾンの声。振り返ると、柔和な笑みを浮かべる侯爵の姿。


「来たか……二人の成果を確認しに来たな?」

「ああ。竜魔石を取りに行くついでに」


 その言葉にエクゾンは苦笑する。


「色々とこき使われているのだな」

「まあ、これはあくまで決戦までの準備だからな……仕方ないさ」


 肩をすくめる俺に対し、エクゾンは苦笑する。


「私から何かアナスタシアに言っておこう」

「いや、別にそんなことをしてもらわなくとも……」

「少なからず事情を知っている私からすれば、色々目を掛けたくなるのさ」


 侯爵は言うと、ユスカ達を指差す。


「では、早速始めるとしようか……おーい」


 呼びかけにユスカとカトラは動きを止める。そして二人揃って俺に近寄り、


「ルオンさん、どうも」

「ああ、ユスカも特に問題なさそうだな」

「はい」


 ――俺は頷いた彼の出で立ちを観察する。訓練服なのかシンプルな青色の衣服で、右手に握る剣が今までと違っている。おそらくエクゾンが用意したのだろう……過剰というほどではないがそれなりに装飾が施されている物だ。


 カトラも格好は似たり寄ったりだが、握りしめる剣についてはユスカと比べ地味。ただ(まと)う気配、というか魔力はカトラの方が上回っている気がする。これは竜精と組んでいることもあるし、皇帝候補であることも関係しているだろう。


「二人の成果を見ようと思う。それにより、決戦時どう動くか決めるつもりだ」


 俺の言葉に真剣な眼差しを送ってくる二人。


「それじゃあ、ユスカから始めよう」


 俺と彼は向かい合う……確か彼は『ソード・アルカディア』という創奥義を所持していた。もしレベルアップしているのなら、もう一つの奥義も修得しているはずだが――


「では、いきます」


 こちらが腰の剣を抜くと同時、ユスカは宣言して走り出す――ずいぶんと速い。


 俺は慌てることなく彼の剣を受けるが……膂力もある。押し込まれるまでには至らないが、勢いもあり並の騎士なら吹き飛んでいるかもしれない。


「今のを耐えるか」


 横からエクゾンが言う。


「ユスカ君、もっと力を上げていいぞ」


 そのアドバイスを契機に、ユスカは一度後方に下がり……発せられる魔力が上がる。


「……ルオンさん」

「創奥義か?」


 問い掛けに彼は小さく頷いた。


「わかった。やってみるといい」

「――はい」


 踏み込む。疾風のごとき速度であり、俺も目を見張るほどだった。


 この短期間で一気に成長できたのは――エクゾンなどの指導もあるだろうけど、騎士として下地ができていた、ということも理由に入るだろう。


 剣戟が俺へ迫る。俺は迎え撃つ構えをとり、双方の剣が――交錯した。

 初撃、金属音と共に鳴り響いたのはバン、と魔力が弾ける音。さらに黄金色をした光の粒子が剣先から溢れ、俺やユスカの周囲を舞う。


 最初の一太刀をきっかけに――ユスカは怒濤のごとく攻め立てる。こちらが防御する度に金色の粒子が周囲を舞い、さらに派手な音が響く。

 その威力は、剣先を通してもわかる。そして苛烈に攻めながら俺の動きを見逃さないよう注意している鋭い眼光……ずいぶんと強くなっている。


「ふっ……!」


 対する俺は連撃の隙間を縫い、ユスカを押し返す。即座に後退した彼は、呼吸を整えながら俺へ言った。


「これでは足りないみたいですね……」

「でも、今のは相当な威力だったのはわかる」


 そう返答しながら、右手に握る剣を見据える。傷などが入っているわけではないが、あと少し剣を交えていたら――


「この剣が耐えきれなかったな」


 剣を鞘に収める。そして、右手から遺跡で手に入れた剣を出現させた。


「それについてはアナスタシアから報告を聞いている」


 エクゾンが俺へと口を開く。


「まだ制御しきれていないらしいが……大丈夫か?」

「暴走させるようなヘマはしないさ」

「それを出すというのは、評価してもらえたってことでいいんでしょうか?」


 ユスカが問う。それに対し、俺は明瞭に答えた。


「自信を持っていいと思う……他に技はあるのか?」

「はい。次はそれを使おうと思っていました」


 刹那、ユスカの全身から魔力が発せられた――彼がゲームで習得する創奥義、その片方で間違いない。


 名は『セイントダスト』。先ほど『ソード・アルカディア』で見せていた光の粒子を集約し、大砲のように打ち出す技。見た目は派手だが単発攻撃なので、総合的な攻撃力は『ソード・アルカディア』に劣ることも多い。


 とはいえ、現実でそれは違うかもしれない……推測を裏付けるように、高まったユスカの魔力は先ほど以上だ。


「――いきます」


 低い声と共に、彼は低姿勢で俺へ突撃を行う――ゲームでは遠距離から砲撃していたが、現実ではさすがにかわされる……よって、近距離もしくはゼロ距離で仕掛けるつもりらしい。


 俺はそれに魔力を刀身に注ぐことで応じた。際限なく魔力を吸収する剣は、ユスカに対抗すべく力を高めていく。

 ユスカもそれは見て取ったはずだが、動きは変えなかった。今の自分がどこまで対抗できるか。それを計りたいのだろう。


 俺もそれに応じるように剣に魔力を注ぎ――刃が届く間合いに到達した瞬間、


 まったく同時に、剣を薙いだ。


 両者の剣先から魔力が溢れる。次の瞬間剣先が触れ合い、まず腕を伝い衝撃が走った。

 魔力の奔流により、剣先がブレる。だが俺はそれを膂力で制し、ユスカの剣を受け続ける。


 対する彼は、剣を両手で握りしめ技を維持しようと必死になっている。ユスカが放った金の粒子がそれこそ俺達の周囲を包み、エクゾンやカトラの姿さえ見えなくなる。


 粒子については間違いなく技の余波だ。俺の方は何も生じていないが、彼の剣先からは魔力が漏れている……これは技の練度が関係している。


 ユスカはこの技をまだ完成しきってはいないため、余計な魔力が外に出ているのだろう。なおかつ彼の表情がだんだんと苦しくなっていく。一気に魔力を放出して限界が近くなっているようだ。


 逆を言えば『ソード・アルカディア』とは異なり、魔力全てをこの技に乗せることができる……まさしく、こちらが切り札になりそうだ。


「どうする?」


 俺はユスカに問う。すると、


「……まだ、です」


 さらに魔力が高まる。魔力はあまり残っていないだろう。それを全て吐き出し、一気に決着をつけるつもりでいる。

 刹那、ユスカが強引に押し返した。俺はその流れに乗り後退し――


 直後、彼は剣を掲げ振り下ろした。


 金色の刃が刀身を離れこちらへ向かってくる。俺は一瞬どうするか逡巡した後、剣で受けた。


 ザアッ――剣先から伝わる衝撃波が体を打ち付ける。ダメージは皆無だが、それでも動きを鈍らせるくらいの勢いはあり……やはり相当な威力であると確信する。


「……さすがだな」


 エクゾンが言う。ユスカに対する言葉かなと最初思ったのだが、首がこっちを向いている。


「あれだけやって動きが少し鈍った程度か。で、受けてみてどうだ?」

「十分だ」


 俺はユスカに視線を送り、


「決戦の際、またとない戦力となる……協力、頼むよ」

「はい」


 ユスカは俺の言葉に、力強く頷いた。


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