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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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精鋭の力

 最初に仕掛けたのはコンラート。氷を刀身から生じさせ、天使達へ投げつけた。

 先頭にいた天使がそれをまず受ける。すると氷が爆散し、衝撃波が天使達を襲い、動きを止める。


「ほら、さっさと決めようぜ!」


 コンラートの呼び掛けに応じたのは――アレキアス。いまだ腰の剣を抜かない彼は……素手のまま突撃を開始する。


「もしや、体術メイン……?」


 対人戦なら剣を使おうと抜いて、ギリギリまでそちらに注目させておいて拳で……ということか?

 俺の予想は――当たっていた。彼はとうとう剣を抜くことなく、真正面から動きを止めた天使へ右ストレートを叩き込んだ。


 氷が割れる音と、天使が吹き飛ぶ光景。一目で怪力なのだと確信すると共に、俺は彼の能力が想像ついた。


『身体強化……それも、地属性魔法を利用したものだな』


 ガルクが言う。俺と同じことを考えていた。


「となると、騎士達は地水火風の能力をそれぞれ保有しているのかな?」

『その可能性が高そうだな』


 返答を聞いた直後、紅一点のジュリアが動き出す。長剣をレイピアでも扱うかのようにかざし――その先端に、風が生まれる。


「……コンラートが水、というか氷。アレキアスが地。そしてジュリアが風か……前回ここに入り込んだ後遭遇したバルヴォが火だったから、地水火風は揃ったことになるな」


 そう呟いた矢先、ジュリアが刺突を決めるかのように長剣を放つ。すると、切っ先から風が生まれ――


「お?」


 俺が声を発する間に、弾丸とでも言うべき風が射出され、奥にいた天使の頭部を撃ち抜いた。一発で倒すとまではいかないが、天使を大きくよろめかせる。


「威力は中々だな。しかも……」


 その天使はアレキアスを狙おうとしていた個体。状況を見て、彼女は援護に入ったということになる。


「おおおっ!」


 その間にもアレキアスがさらに仕掛ける。正直、装備は騎士だがやっていることはオーガみたいなガチの肉弾戦だ。内心結構驚いている。

 しかもやり方が凄まじい……彼は全身鎧なので腕は小手で覆われているのだが、それがひしゃげそうなくらいの勢いである。


『……装備が壊れるな』


 ガルクも同じことを思ったらしく、言及。天使が攻撃する前に問答無用で拳を叩き込むその姿は、まさしく鬼。


『……あの立ち回りを考えると、あの騎士が主力を担うのか?』

「彼とバルヴォが該当するだろうな……けど、厄介なのは彼だけじゃない」


 コンラートとジュリアは、自分の能力を活用し、アレキアスを支援する。


 突撃を繰り返す彼の援護としてコンラートが氷で天使の動きを拘束する。ただアレキアスの攻撃は基本単体なので、横から天使が来ると面倒になる。それに対しジュリアが風を射出し、的確に頭部を撃ち抜く。やはり一撃で沈むことはないが、動きを鈍らせるには十分。的確なサポートと言える。


 また、彼女の射撃能力は目を見張るものがある。風を放ったのか魔力を探知すればわかるのだが、その全てが天使の頭部に命中している。


「……連携して俺を足止めする、というわけだな」


 今は三人だが、これが五人でもきちんと連携が機能するように訓練はしているだろう。


「単独の戦闘能力も高そうだな……ユスカやカトラは相当頑張らないとキツイか?」

『竜精と手を組んだことは、正解だったかもしれんな』


 ガルクの言葉に俺は頷き――戦闘を観察し続けた。






 やがて視界に天使がいなくなる。最初に口を開いたのはコンラート。


「いや、相変わらずの攻撃っすね」

「なんだ、不満でもあるのか?」

「いえいえ、改めてアレキアスさんが俺達を束ねるに足る資格をお持ちだとわかったんで」


 ヘラヘラとする彼……どうやらアレキアスが精鋭のリーダー的存在らしい。しかしコンラートの態度から敬うといった様子はない。戦闘における立ち位置はあれど、基本的には上司部下といった関係はなく、地位としては同格なのかもしれない。


「先に進むぞ」


 号令を掛けアレキアスは歩み始める。それに追随するコンラートとジュリア。


「そういえばアレキアスさん、訊きたいことがあるんだけどさ」


 コンラートが口を開く。世間話といった感じかな。


「宮廷の中がずいぶんと慌ただしくなっている気がするのは俺だけかなと」

「……気のせいではないだろう」


 アレキアスは周囲に目を配りながら言った。


「大がかりな準備をしているのは間違いない」

「戦争準備っすか?」

「おそらくな」


 コンラートが笑う……好戦的な人物のようだ。


「もしかすると、こんな狭い遺跡の中以外で暴れることができるってことかい?」

「かもしれん。だが我々は基本、命じられ動く。余計な行動はするなよ」

「わかってるさ……で、侯爵達はどうするんだろうな?」

「一人が反旗を翻し、残る三人のうち、二人は静観……もしかすると、どこかで反旗を翻す準備をしているかもしれん」


 アレキアスは言う……アナスタシアが色々と動いていることは、把握していない雰囲気だな。


「上層部は四竜侯爵の扱いをどうするか迷っている風にも見受けられるが……戦うというのなら、我々はそれに従うまでだ」

「そうっすね」


 どこまでも笑うコンラート。望むところだ、とでも言いたげだ。


「で、もし侯爵を相手にするなら、どう戦おうと思ってる?」

「……コンラート、お前が力を持っていることは認めるが、だからといって侯爵に勝てるなどと思わんことだ」

「いやいや、純粋な疑問だって。別に喧嘩を売ろうってわけじゃない」


 彼の言葉に、アレキアスは少し間を置き……やがてジュリアに顔を向けた。


「どう思う?」

「侯爵全員が襲い掛かってくるのなら詰み。しかし個々であるなら勝機はある」


 恐ろしく淡々とジュリアは応じた……アレキアスが問い掛けたってことは、彼女は参謀役かな。


「エクゾン、及びシュオンは個人の能力を大きく高める竜魔石であるため、連携すれば封じ込めることはできるかもしれない」


 侯爵に対し一切敬意を払う様子もなく、彼女は述べる。


「アナスタシアは……下手をすれば十数人が武装し襲い掛かってくる。厄介なのはこちらかもしれない」

「数で押す、ってわけか。ま、確かにそっちの方が面倒だな」


 コンラートは肩をすくめ、


「ということは、残る四竜侯爵……ザウルが一番面倒か?」


 ザウル――まだ出会っていない侯爵の一人だ。侯爵の中で一番の古株であり、見た目は老人のそれである。


「あいつの能力は確か、擬似的に竜を創り出す能力だったな? 数で攻めるなら、一番だと思うが」

「だからこそ、そうならんよう動いているはずだ」


 アレキアスは、コンラートに言った。


「エクゾンが戦おうとするなら、間違いなく他の侯爵を味方につけようとする。シュオンはわからんが、アナスタシアは俗物的だ。交渉して、既に味方につけている、と宮廷の人間が判断しているかもしれん」


 うん、それは事実だ。


「盤石なものにするのなら、侯爵全員を説得するはずだ……よって、策が生きてくる」


 策? 言葉を待っていると、コンラートはため息をついた。


「ザウルを餌で釣ってこっちに協力させようって話だろ? 成功するのか?」

「大丈夫だと誰かが言っていたな……権力欲の強い侯爵だ。その辺りを利用したのかもしれん」


 ――資料で、俺達も彼と話を行うことになっている。その時期は決まっているのだが……帝国側も接触していたか。

 しかも、何かしら手土産を持って……最終決戦で彼は静観していたと資料にはあったが、違うのか?


「……かなり重要な情報だな、これ」


 侯爵と接見する際、注意しなければならないかもしれない……そう思った時、彼らの前に、これまでとは異なる天使が現れた。


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