謎の遺跡
青い素材は、金属のようにやや光沢があり、それがこれまでの遺跡と同様自然発光しているため、明かりの必要はなかった。
「考えられる可能性は二つじゃな」
進む中、アナスタシアが話し始める。
「一つは、この遺跡を生み出した存在が、何かしら重要な物を保存しておくため、こうした場所を作成した」
「壁の向こうにあるんだけど」
「元々何か仕掛けがあり、開く仕組みになっていたのかもしれん」
ああそっか。けど、仮にそうだとしても、俺が散々破壊したから検証は無理だな。
「もう一つは、この遺跡とは異なる存在が生み出した……この場合、先ほどの遺跡を作成した存在が意図的にこの遺跡を隠した、といったところか」
「どういう理由で?」
「あくまで可能性の話じゃから、検証はできんし理由もわからん。ともあれ、わしらとしてはどちらの可能性であっても、面白い物が見れるかもしれんな」
顔がほころびっぱなしの侯爵。目が輝いているのは……まあ、俺もこういう隠された何かを見つけることに対し何も思わないわけではないので、コメントは控えよう。
「確かに、何か魔力を感じますね」
ソフィアが口を開いた。言葉通り、新たに発見したこの遺跡内には、さっきまでとは異なる力を感じ取ることができる。
「これは天使の魔力? それとも、竜精の?」
『どちらともおそらく違う』
ガルクの声だった。気付けば右肩に出現している。事情を知らないフォルファは、目を細め視線を注いだ。
「その者は?」
『シェルジア大陸より、神霊と呼ばれる存在。名はガルクだ』
「神霊……聞いたことがあるな。ルオン殿はなかなか顔が広いようだな」
そこまで言ったフォルファは、興味ありげにガルクへ問う。
「先ほど、違うと言ったな? 私としても形容しがたい魔力であるため、それらとは異なると考えているのだが……何かわかるのか?」
『我の知識外であるのは間違いない。仮にここが天使が作ったのとは異なる物だとすると、それよりも先人が生み出したことになるが』
……天使よりも先に、ねえ。古代人とかそういう言い方になるのかもしれないけど……ふむ、そういう設定はゲームになかったな。
地底で出会った存在に関することかなと一瞬考えたが、あれは未来の話だし、同じだったらガルクも言及するだろう。となると、これまで遭遇した存在とはまったく異なる……うーん。
「ルオン殿も思い浮かばんのか?」
アナスタシアの質問。俺はそれに頷こうとして――
「……あー」
「どうした?」
「いや、一つ思い出した」
一作目の中で、主人公が「遙か昔――古代に遡るほど前に繁栄した人間達が生み出した物」とか言って、もらった武器があった。それは主人公が手に入れる武器でもトップクラスに入る物で、一振りで悪魔の大群が消滅するとかなんとか……まあ、ゲーム上ではそんな大それた効果はなかったけど。
一作目からみて俺達の時代は過去。だがそれよりも前の時代にいわゆる超古代文明みたいなのがあって、それらが生み出した物が世界のどこかに存在している、といった感じだろうか。
「ま、その心当たりは後で聞くとしよう……未知の場所じゃ。思いも寄らぬ物が眠っていそうじゃな」
全身で期待感を放っているアナスタシア。俺は苦笑し、自制を促してみる。
「そんなに目を輝かせるなよ……あんたが望むような物があるとは限らないし」
会話をしながら先へと進んでいく……仮にもし古代文明云々の話だとしたら、天使達はわざと隠すように新たな建物を作ったということになるのだろうか?
「どういう理由にせよ、天使達は何かを隠したかった、ということでしょうね」
ふいにソフィアが発言。それに、フォルファが答えた。
「可能性として考えられるのは、ここに天使達が恐れる存在、もしくは隠さなければならないと判断した何かがあったということだ」
「魔物とか、でしょうか?」
「天使の力は驚異的だ。倒せない魔物なんていないと思うのだが……」
考え込むフォルファに対し、その横にいるアナスタシアが小躍りしそうな雰囲気。感情豊かで見ていて飽きないが、面倒だとも思う。
やがて、俺達は広い空間に出る。何もないがらんどうの空間。真正面にはさらに続く通路。それ以外には脇道もない。
「殺風景ですね」
ソフィアが感想を述べる。
「どういう意図でこういう場所を作ったのでしょうか」
「作成者の考えることなど、わしらにはわからんよ。先へ進むぞ」
何もないとわかり、アナスタシアは先へと進む。罠などがあったら、などと一瞬考えたが、それらしい気配はゼロ。問題なく通過する。
その後は、しばし沈黙が生じる。分岐が一切なく、ただひたすら奥へと進む道のり。あまりに代わり映えのない景色に、アナスタシアの表情も訝しげなものに変わっていく。
「奥に行って何もなければただの骨折り損じゃな」
「その可能性も高そうだけど……けど何もなかったらなおさら天使達が隠す理由がわからないよな」
「奥に何かあると思おう」
フォルファがそう結論を出し、なおも歩く。
魔物すら存在していない、というのがこの空間の異様さを物語っている。魔力が特殊であることは間違いないが、感じられる程度に魔力が存在している――そうした場所には必ずといっていいほど魔物がいるはずなのだが、見かけることすらない。
逆に何もないからこそ、この空間の謎が際立っていく……そう考えた時、俺達は気配を感じた。
「……いるな」
「の、ようですね」
俺の言葉にソフィアが頷く。アナスタシアやフォルファ、さらにロミルダも気付いた様子。
通路の先……まだ視界には見えないが、間違いなく何かがいる。距離があるのに感じられる以上、強力な魔物といったところか。
「ルオン殿もいるし、大丈夫じゃろう」
そんな言葉がアナスタシアから発せられる。俺は肩をすくめ、先へ進むべく足を動かす。
やがて――辿り着いた広間。相変わらず殺風景な見た目の中に、そいつはいた。
「見た目は、ただの騎士だな」
背丈は、二メートルを少し越えるくらいだろうか? この空間と同じように薄い青を基調とする全身鎧を着た騎士が、剣を握りしめ自然体で俺達と向かい合っている。
その奥には、扉が一枚。ここまでひたすら通路だけが続くだけで、扉というのもここまでなかった。
また、騎士の表情などは見えない――俺はなんとなく中身がないのではと思った。より正確に言えば、鎧が本体――リビングアーマーといった感じだろうか。
そして感じられる気配はなかなかのものだが……底が見えないようにも感じられる。
「見た目、あまり強そうには見えないが」
フォルファが言う。俺は心の中で同意しながらも考える。天使達が通路を封印したのが目の前にいる存在――『遺跡の騎士』が原因だとしたら、あいつは天使すらも恐怖させた存在ということにならないか。
「……俺が動く」
ここで口を開いた。
「他の面々は、通路まで下がっていてくれ」
「ルオン様、お気をつけて」
ソフィアの言葉に俺は頷く。ここで歩みながら詠唱を開始。念のため、全力を出すための剣を生み出す。
すると、騎士が反応した。右腕に握る剣がゆっくりと動く。俺の魔力に反応したか、それとも近づいたことで動き出したのか。
「……どうも、この遺跡の終着点は後ろの扉らしいな」
俺はそう言うと、剣を構える。
「悪いけど、押し通る」
その言葉の直後、騎士から魔力が漏れ出た……やはり底が見えない、不気味な力。地底で遭遇した『彼』とはまた別の――相当な魔力。
刹那、俺が動き出す。それに対抗するように、遺跡の騎士も反応し俺へ向かって駆け出した。




