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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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重なる力

 各自にお茶が行き渡った後、紹介状を渡す。ちなみに書状には「わしと同じレベルの情報を与えるように」とアナスタシアから言づてがあり――


「そういえば、ユスカやカトラにはきちんとした形で説明していなかったな」

「何についてですか?」

「この戦いの裏側について」

「なんとなく察してはいる」


 と、カトラが述べた。


「ユスカから話を聞いて……『漆黒の剣』という組織にはネフメイザという人物が関わっている。その人は巷ではすごくいい人という評価みたいだけど……」

「ま、そういうことだ」


 二人もまた、今後重要な局面を担うだろう。ここは俺のことを含め話そう。

 とはいえ、カトラが皇帝候補ということについてはプレッシャーもあるし保留でいいかな……過保護だろうか。


 とりあえず、皇帝候補については置いておいて、俺のことやネフメイザについて話をする。それがおよそ一時間程度……その後、情報をかみ砕くためにシャスタは沈黙し……やがて、


「状況は理解できた。しかし、ずいぶんとまあ面白いことを考えつくな」

「そうか?」

「アナスタシアも言っていたようだが、精霊の大陸に住む人間だからこその発想か……まあいい。それについてアドバイス、ひいては私に協力してほしいと」

「そういうことになる」

「ふうむ、私は竜精となって長いが、そうした手法は初めてだ。しかし、決して非現実的というわけではないだろう。やる価値はありそうだし、興味深い。是非とも協力しよう」


 よかった、すんなり話がまとまった。


「どういうやり方を考えている?」

「精霊と契約する、というのは精霊側が契約者の魔力に合わせるのだろう? 竜精である私達にそれはできない。しかし、連携して力を引き上げることは可能だろう」

「……ちなみにだが」


 と、ここでリチャルが質問する。


「あんたは、今回の戦いについてどう思っている?」

「私自身は、基本的に干渉するつもりはなかった。この山に乗り込んできたら話は別だが」

「……竜精達は物語に深く関わることがなかった。あくまで物語を作る上でパーツの一つに過ぎなかった」


 シャスタに続き俺が言う。


「竜精側が積極的に関わろうとしなかったというのも一因だとは思うけど……ネフメイザもあまり触れたくなかったのかもしれない」

「その可能性は大いにあるな。有名な竜精は力も相当だ。戦うよりは放置しておきたいのだろう」


 そう述べたシャスタは、口元に手を当てた。


「それに、竜精は色々と弱点もあるからな。ネフメイザがそれを把握していると推測できるし、対策くらいはしているだろう。連携した方がいいのは確かだ」


 ここで、シャスタは確認の問いを行う。


「仮に、連携するとして……候補となるのはそこの二人か?」


 ユスカとカトラに目を向ける。俺は素直に頷いた。


「そういうことになる」

「わかった」


 返事の後、シャスタは席を立つ。


「では、早速だが外に出るとしよう」






 外に出て、シャスタは腕を組みながら話を始めた。


「ルオン殿、竜精の力を借りるといっても、そのやり方にはいくつか候補がある。精霊との契約をイメージするなら、私が二人のどちらかの体に入り込む、というやり方を想像しているかもしれないが、他にも手段はある」

「例えば?」

「他にも私自身の魔力を二人に分け与えるというのもある。ただしこれは使い切ったらそれまでだから、注意が必要だ」

「そのやり方も手法として記憶しておくよ」

「そうだな。で、率直に言わせてもらうと、私は彼女の方が適性も高いのではないか、と考える」


 カトラか。皇帝候補であることを踏まえれば、当然かもしれない。


「しかし、私としても初めての手法であるため、検証しなければならない。彼女の体に負担も掛かるだろう。完璧に使いこなすとなると、時間が必要だな」


 ここでシャスタは俺に顔を向けた。


「一度ここでできるか試す。ルオンさん、手伝ってもらえないか?」

「ああ」


 返事をした後、カトラと対峙する。どうするのかと注視する間に、シャスタはカトラの背後に回った。


「まずは力を重ねよう」


 その言葉の直後、シャスタの体から魔力が発せられる。何事かとカトラが振り返ろうとした時、シャスタの姿が消えた。

 衣服ごと消失し、次の瞬間カトラの体がビクリと震える。


「魔力の融合、ですか」


 ソフィアが言う――けれど俺は首を左右に振った。


「精霊との契約を行ったわけじゃない。精々カトラの体の中に入り込んで、擬似的に力を合わせるといった感じだろう」

『その通り』


 シャスタの声が聞こえてくる。会話はできるらしい。


『ふむ、上手く魔力を合わせればカトラさんの体を動かせるな……これについては相性の関係もありそうだが、私達は良好のようだ』

「なら、早速始めようか」


 剣を抜く。カトラもまた剣を抜き、戦闘態勢に入る。


 以前戦った時、カトラは平凡な戦士といった感じだった。それがこの竜精との連携によりどれほど変わるのか。


『それでは、カトラさん。動いてくれ』

「は、はい」


 声に戸惑いながら、カトラは動き出す。おっかなびっくりといった感じでこちらへ剣を向け――俺は真正面から受ける。

 連携により一番恩恵を受けるのは、間違いなく身体能力だろう。シャスタが魔力を加え、カトラの膂力を底上げする――その推測は、見事的中した。


 双方の刃が激突した瞬間、彼女の両腕に魔力が集まった。かなりの出力。それに抵抗するべく俺も力を入れる。

 結果、双方せめぎ合う。刃同士が絡み合い、ギリギリと音を立てた。


『む、これを耐えるか。紹介状にも書かれていたが、その力は本物か』


 シャスタの声――と同時に、さらに力を加わる。それに抵抗する俺。つばぜり合いの様相を呈し、決着がつかない。

 ならばどうするか……こういう場合わざと引くのもいいが――考える間に、カトラの方が先に限界が来た。苦しそうな表情を浮かべた後、一度後方に下がる。


 追撃するのも一つの手だったが、俺は待ち構えようとした。すると、今度はカトラが剣を振り上げる姿。

 剣先には魔力。もしや衝撃波でも生み出して攻撃しようというのか。


「おお」


 後方からリチャルの声が聞こえた……同時、俺は攻撃を真正面から受けるべく剣を構え――


 嫌な予感がした。戦闘でもあまり感じたことがない、特大の予感。


 反射的に足を前に出した。さらに剣先に魔力を集め、到来するであろう衝撃波を相殺すべく構える。

 刹那、それは起こった。カトラの剣が地面に勢いよく叩きつけられる。ズアッ――と、魔力が発生する音が生じ、なおかつ彼女は剣の力を完全に制御できていない。


 結果――白い衝撃波は俺に向かいながら拡散し、ともすれば周辺にいた仲間達を巻き込みそうになった。


「くっ!」


 迫り来る衝撃波に対し、俺は剣を薙いだ。剣先から対抗するように衝撃波が生まれ、正面から激突する。


 カトラが生み出したそれに対し、威力が大きく凌駕すれば彼女にダメージが入る。かといって弱すぎれば仲間に……そういう難しい場面だったが、成功した。

 衝撃波同士がぶつかり合い、一気にその魔力が消失していく……結果、誰も怪我をすることなく、乗り切った。


『……すまない』


 途端、シャスタが謝罪した。彼女としても思った以上に力が出たのだろう。


 さらにカトラも剣を突き立て、右腕を左腕で押さえている。おそらく力を無理矢理引き出したため、肉体に多少ダメージがあったのだろう。


 色々と問題はある……が、俺は結論を出した。


「上手く使えば大きく戦力アップになることは間違いないか。あとは、検証を進めて使いこなせるようにならないといけない――」


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