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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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竜魔石の用途

「おおお……」


 ユスカが座り込みながら小さくなった屋敷を見て驚く。以前、魔王との戦いで関わったアルトのように大声で喚いたりはしないが……まあ、高層ビルなんて物がない以上、この高さはさすがにびっくりするか。


「途中休憩のために降りると思う。人目のつかないところだろうから、森の中とかになるけど」


 俺が解説する間に飛竜は高度を上げ進んでいく。その時、リチャルが声を上げた。


「ルオンさん、もし今回向かう場所で戦闘が生じたら、どうするんだ?」

「どうする……か。侯爵クラスが出てこない限りはどうにかできると思う。一応多少のお金は貰っているから道中で武器の調達はできるけど……店で売られている物では限界もあるかな。どうする?」

「ないよりはマシじゃないか?」

「確かにな。備えておくか」


 最低限の対策はしておく……というわけで、俺達は休憩を挟みつつ、なおかつ武器を購入し目的地に到着。小さな町のとある診療所みたいな建物。


「……侯爵が知っている以上、結構有名な人だと思うんだが……この佇まいはなんだろうな」


 俺は言葉を零しつつとりあえず玄関をノック。少しして足音が聞こえ、中から人が出てきた。


「はい」


 ――見た目、黒髪に白衣という医者に近い人物であった。地味な印象の男性で、年齢は三十前後だろうか。

 研究者と聞いていたわけだが、それにしては予想以上に若い。


「フローリーさんですか?」


 俺の問い掛けに相手は頷く。


「そうだが……あんた方は?」


 返答の後、俺は懐から書状を取り出す。エクゾンの直筆だ。


「これを」

「うん?」


 首を傾げつつ封を切る。中身を一読し――


「……はあ、なるほど。侯爵も大変だな」

「できますか?」

「大丈夫だろう……中に入ってくれ」


 背を向け中に入るフローリー。俺達は一度互いに顔を見せ合った後、中へ。


 彼に追随して辿り着いた先は、それなりの広さを持ったリビング。ただし実験道具らしき物があちこちに散見され、研究者なのだと俺達に理解させる。


「事情は把握したよ。君達の中に竜魔石を利用し何か魔法を使われた可能性があるってことだな? で、俺が調査する」

「その通りです」

「検査自体はそんなに時間は掛からないよ。ただ、結果が出るまでには最低一日は必要になるな」

「そのくらいは待ちますよ」


 こちらの言葉にフローリーは「わかった」と答え、俺達へ告げる。


「じゃあ早速始めようか。魔法が使われている可能性のある人物は、前に出てくれ」






 ――その後、一時間ほどで検査が終了する。ただ結果は明日にならないとわからないとのことで、俺達は宿を取り一泊する用意を整える。


 で、フローリーからちょっと話を聞く。元々帝都で研究をしていたらしいが、色々あって辞めたらしい。ネフメイザとソリが合わなかったというのだから、仕方のない話だ。

 その後エクゾンやシュオンと交流するようになり、この家に住み着いたらしい。


「ま、俺としては侯爵の懇意により研究できているから満足だ」

「そうですか」


 相槌を打ちつつ紅茶を一口。検査も終わり休憩ということで、俺達はリビングにある椅子に座りお茶を飲む。


「とりあえず帝都側の妨害とかもないな……それで、一つ言っておきたいんだが」

「ここで俺達が協力を仰いだことは秘密、でしょう?」

「察してもらえると助かるよ。ま、そんなに警戒するほどじゃないさ。今のところ、城から何かされたということもないからな」


 ――ゲーム上では彼自体現れなかったこともあって、どうなるか俺にも想像がつかない。ま、使い魔を用いて観察はしておくか。


「あなたは竜魔石の研究者とのことだが」


 リチャルが口を開く。ふむ、彼自身ネフメイザの時空魔法に対応するべく、竜魔石について調べるといった感じか。

 場合によっては、協力をお願いする必要もあるかな? そんなことを思っていると、フローリーは話し始めた。


「俺の専門分野は竜魔石の構造とかの解析だ。まあ魔石というのは他の大陸にもあるわけだが、この大陸に眠るやつは少し違うということで、その差異を研究している」


 そう言って切り出した内容は――正直、専門用語も多く理解するのが難しかった。まあこの辺りはリチャルに任せることにして――


「……竜魔石については、他の鉱石と一緒で山岳地帯に眠っていたり、あるいは鉱脈の中に含まれているケースが多い。ただまあ、それ以外にも先人達が竜魔石を利用しようと、洞窟とかに設置したという話もある」


 設置……その言葉を聞いて、ソフィアが反応した。


「洞窟、ですか。利用というのはどういった目的で?」

「色々あるが、例えば領内に竜魔石を仕込んでおくことで、その力を結界などに利用する、といった感じかな。大抵は帝国がそうした場所を探索し、手に入れているケースも多い」


 ここでフローリーは意味深な笑みを浮かべる。


「他にも、そうだな……この大陸には天使の遺跡がそこかしこに存在しているんだが、彼らも魔石の力を利用しようと考えていたようだ」

「竜魔石を?」

「ああ。例えばシェルジア大陸が精霊の大陸と呼ばれているように、この大陸にも竜人という存在がいて、なおかつ竜魔石と呼ばれる特殊な素材がある……大陸の特色とも言える話だが、天使はそれを利用しようとした。もっとも、その動機については諸説あるが」


 ――俺には多少なりとも心当たりがあった。天使は竜魔石という媒体を用い……その目的は、もしかするとシェルジア大陸と同じだったのかもしれない。

 ソフィアやリチャルには事の詳細について話してはいないが、天使のことを調べればわかるかもしれない、くらいのことは考えているだろう。


「ちなみに、この辺りにそうした遺跡はあるんですか?」


 ソフィアがさらに話を振ると、フローリーは肩をすくめた。


「どうだろうな。天使の遺跡は外部から存在を認知されないよう魔法なんかで隠蔽されているケースも多いからな。まだ見つかっていない遺跡も多いわけで……この辺りにあるなんて可能性もゼロじゃないな」


 そういえば、俺達がこの大陸にやって来た時点で皇帝直属の組織と思しき竜人の騎士が遺跡を探索していた。彼らは所在を把握している場所を調べ回っているのか、それとも――


「ルオン様、その辺り調べた方がいいのでしょうか?」


 問い掛けに、俺は「どうだろう」と濁した返事をする。天使の遺跡……何度も繰り返しているネフメイザがそれについて調べているという公算は高い。さすがの俺もその辺りの調査能力はないので、もしやるとなれば遺跡を探索した騎士達を狙って攻撃し、遺跡内で手に入れたものを奪取、とかだろうか。


 これについては少し考えるべきか……などと思った時、


「あの」


 ロミルダの声。注目すると、彼女はやや躊躇いつつ話し始めた。


「私、城から抜け出す間に……騎士団の人が調べようとしている場所とかを記した地図を発見したよ……」

「地図?」

「全部は憶えていないけど、候補地みたいなことが地図の端に書かれていて、その一つが、この町……」

「周辺に遺跡があるとすれば、町から南東にある森の中だな」


 フローリーの発言。それに対し俺が答えた。


「遺跡に入るにしても、最寄りの町であるここに宿泊する可能性はゼロじゃないな。ふむ、騎士団が動いているのかはわからないが……調べてみてもいいか」


 宿に入ってから使い魔を飛ばして調べてみるか……そう決意した後、俺達はフローリーの家を出ることになった。


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