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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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侯爵の屋敷へ

 リチャルと話した内容について、俺はソフィアにも語った。推測する懸念には納得し、また今以上に強くなるべく『創奥義』を習得するというのも賛成だった。

 場所は宿の廊下。アベルとエクゾンが話をしている最中で、その間にこっちも打ち合わせを行う。


「ルオン様、新たな技を習得するというのはわかりましたが……それは竜魔石が必要なのでは?」

「侯爵を倒すには必要だが、技を鍛える上では必要ないよ。この大陸は俺達がいたシェルジア大陸と同じような技や魔法が存在するけど、人間は竜人というポテンシャルでずっと上に位置する相手と戦わなければならなかった……それ故に、切り札とでも言うべき技を行使し、竜人に対し有効となる技や魔法を磨き上げた。言ってみれば『創奥義』はあくまで使用者自身の力によって発揮されるものだ」

「今の私達でも、習得が可能だと?」

「そうだな……そう大変でもないさ。『スピリットワールド』を覚えるよりかはマシなはず」


 と、そこまで言ってソフィアは言う。


「ルオン様、私としては『スピリットワールド』の強化を行いたいです」

「強化?」

「新たな技を習得するよりも、この技をさらに進化させるべきか……そう思ったんです」

「いけるような気もするな……ま、いい。ともかく奥義を習得するという方針でいくよ」

「わかりました。目下やるべきことは武器の入手ですね」


 ソフィアの言葉に俺は首肯。エクゾンと共に行動していれば、そう遠くないうちに入手することになるわけだが――


「しかし、まだまだ疑問はありますね」

「というか、物語という先入観に縛られるのはまずいのかもしれないな。どういう形であれ、俺達は対応できるようにしておかないと」


 少なくとも、ネフメイザが何かをやっているのは確定的だし……頭が痛くなる事案ばかりだが、対処しなければならない。


「武器を入手した後、どのような方針でいきますか?」


 ソフィアが問い掛ける。その後か……。


「リチャルはネフメイザが時空系魔法で逃げないように対策をする。俺達は情報収集を行いつつ『創奥義』の訓練……と、あとは残る皇帝候補を探し出すことか」

「確か三人……残るは一人、ですか」

「ただ、どこにいるのかもまったくわからない。捜索は困難を極めるけどな」

「どういった人物なんですか?」


 そういえば、説明してはいなかったか。俺はそのキャラを頭に思い浮かべながら、話す。


「少女だ。天涯孤独の少女」

「少女が……皇帝候補に?」

「ああ。素性としては没落した貴族の家系。ネフメイザの策略によって崩壊した家系の人物だ。物語が始まるより前にその貴族は没落しているんだが……」


 ――少女については、使い魔を用いて捜索している。両親は蒸発し、彼女だけは孤児院に入っているというのが物語の開始時。ユスカが偶然立ち寄り、その時少女は旅に同行したいと申し出る。ユスカは反対したのだが、えも言われぬ力を感じ取り、仲間になるという流れだ。

 だが、既に孤児院にはいなかった。ここから探し出すのは至難と言える。


 加え、俺はさらに懸念を述べる。


「ネフメイザが……どこまで知っているのか、というのが一番の問題だな」

「え?」

「カトラが組織の末端で働いていた、ということはネフメイザ自身、彼女はノーマークだった、という可能性が高い」

『そうした推察は、あくまでネフメイザが時間移動を行った、ということが前提だな』


 突如、ガルクが俺の肩に出現。


「……というか、久しぶりだな」

『さすがに領主の前で姿を現すわけにもいかんだろう』

「使い魔ということで説明してもいいけど」

『断る』


 ……使い魔扱いされるのが嫌らしい。わからなくもないので俺は何も語らないことにする。


『その前提で話をする場合、漆黒の剣とやらに編成された面子を考えると、ネフメイザを討った面々は騎士が中心だったのだろう』

「俺も同感だ。というかまあ、リーダーであるアベルの立場からすると、戦闘能力の高い元騎士を前線に配置するのは自明の理だし、そうした状況下でユスカも共に戦ったんじゃないかと思う」


 ……ふむ、ネフメイザについては警戒しなければならないが、ひとまず――


「カトラを魔王との戦いでソフィアを鍛えたように強くする……無論、アベルも同様だな」

「そしてあわよくばもう一人の少女も……ですか」

「ああ、そうしたいところだ」

「ネフメイザの対策としては?」

「リチャルが魔法を封じるとして……天使の遺跡のことが気になるな」


 口元に手を当て考える。魔力を遺跡内から消し、俺達を出現させない、というのが理由である可能性もあるわけだが――


「その力を、魔王と同様転用できるとなると面倒な話になってくるな」

「私達だけで対応は難しいでしょうか?」

「武器さえ手に入れば倒せるとは思う……この場合、武器が手に入らない可能性も考慮しておくか?」


 さすがにそこまでは……などと一度は思いもしたが、あらゆる可能性を考えておくべきか。


「ま、全てはエクゾンの屋敷がある町へ入ってからか」

「わかりました」


 ソフィアは頷き会話が終わる。ガルクも姿を消し、動き出す。


 ……現段階でできる限りのことはやっている。俺は四竜侯爵の動向を窺いつつソフィアと共に『創奥義』を完成させる……そのやり方がベストなはずだ。


 しかし、ここまで想定外の状況が続くと――


「まあ、考えても仕方がないか」


 そもそもネフメイザが時間移動している、ということ自体俺達の推測でしかない。仮にそうだとしても応じられるように準備をしておくこと程度に留め、アベル達と連携し今後の戦いに備えることが重要だろう。

 俺は思考を打ちきり、部屋へ。そこでアベル達と打ち合わせを行い――明日に備え休むことにした。






 翌日以降、馬車による移動を再開……以前と違うのはカトラがいること。とはいえソフィアとも打ち解け、カトラも硬い表情をしてはいなかった。


「さて、今後のことを説明させてもらう」

 そうした中、前置きをしてアベルが語り出す。


「現在、私達の組織は風前の灯と言える。だが終わったわけではない。現状の戦力は帝国軍からすれば小さいものだが、それでもまだ勝機はある」


 そう言ってエクゾンに視線を移す。


「侯爵、あなたと連携し、他の侯爵とも戦う……ということでよろしいですか?」

「それで構わないさ。反旗を翻した以上、いつかは戦うことになる」


 エクゾンの言葉に俺は頷く……とはいえ、帝国軍を迎え撃つだけの戦力がないのは事実。


 俺が立ち回ってそれを補うにしても、ネフメイザが俺達のことを知っている可能性を考慮すると、何か策を立てられている可能性がある。つまり魔王との戦いなどと同じように、俺がいなくとも対応できるだけの戦力を確保した方がいい。


「今回の町で組織の構成員と落ち合い、どう動くかは協議する……とはいえ、すぐに戦力を増やすことは難しい」

「まあ、その辺りはどうとでもなる」


 エクゾンの言葉。侯爵が何を言いたいのかわかった。


「私を倒し旗下に加えたという話は大陸中に伝わっているだろう。それを上手く利用し、アベル君達の組織こそ、救世主だと信じ込ませればいい」

「知名度を上げ、兵を増やすということか」


 俺の言葉にエクゾンは頷く。


「皇帝が支持を失っている状況は変わらないからな。やり方次第ではまた戦力を増やすことも――」


 そこまで言った時、突如馬車が止まる。次いで御者が「伝令です」と声を上げた。


「町もすぐなのに、よほど緊急らしいな」


 あっさりとした口調でエクゾンは言う。伝令の人間が馬車内に顔を出し、報告を行う。


「エクゾン様、来客です」

「客か。町まですぐだというのに、連絡を寄越すとは」

「はい、その――」


 と、伝令の人間は顔を幾分緊張させ、述べる。


「来客者は……四竜侯爵が一人、シュオン様です」



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