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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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襲撃者

「現在、仲間達は落ち着いており、ひとまず混乱は収束したと考えてよさそうです」


 傭兵がアベルに言う。ふむ、彼は組織の構成員か?


「そうか。しかし、あの魔物は相当強かったな」

「皇帝の差し金でしょうか?」

「わからないが、関係があると私は思っている」


 アベルの言葉……魔物と交戦し、多少なりとも被害が出た、といったところか。


「現在調査中ですが、どうやら軍が動き出している模様です。詳細がわかればまた報告させて頂きます」

「わかった」


 傭兵が立ち去る。軍に関する情報は掴んでいるみたいだ。

 さて、俺はどう動くか……考えていると、ガルクから声が。


『ルオン殿、町の中で迎え撃つのか?』

「……反乱組織の動き次第だけど、たぶん外で戦うことになる」


 ――ゲーム上でも拠点となる場所が襲撃される、という形は存在していた。その場合彼らは拠点となる町を離れ迎え撃つという行動に出ていた。

 ただし、ゲームの時は十分な戦力を有している状態からで、なおかつ策もあった。今回の場合は……真正面から戦うのはさすがに厳しいか。


「俺達が協力しない限りは、おそらく対抗は無理だな」


 そう口にした俺は、一度酒場を離れ外に出た。


『どこに行く?』

「とりあえず歩き回ってみる……この町はゲームでも登場していたし、多少なりとも知っているし」


 使い魔で確認したけど、ユスカなどの存在は確認できていない……まずはそこからか。

 町中を散策していると、ソフィア達と合流した。反乱組織のリーダーを見つけたということを伝えると、ソフィアが一言。


「事情……説明した方がいいのでしょうか」

「いや、現段階で話をしても信用してもらえないだろうし、そもそも門前払いだろうな」

「その状況で話に割り込んでも怪しまれるだけだろ」


 リチャルの言葉。まったくもってその通り。ソフィアは難しい表情を示す。


「つまり、戦いが始まってから援護するしかないと」

「そうだな……この辺りはストレス溜まるけど、どうしようもないな。それで今後についてだが……進軍ペースから考えると、十日前後で来ると思うけど……」

「武器を調達したいところですが、難しそうですね」


 ソフィアが言う。俺は小さく頷き、


「この周辺で仕事をして少しでも金を稼ぐか。町の規模はそれなりだから、そこそこの品は手に入れることができると思うし」


 ゲームの時と同じ品ぞろえだとすると、まあそれなりかなとも思う……いや、ここの町についてはシナリオ段階によって変わったんだったか。まあこれも実際見てみないとわからないな。


「えっと、ソフィア。宿は?」

「手配できましたよ」

「そっか。なら、今日は休むことにしよう」


 俺の言葉に二人は頷き……宿へと向かった。






 戦いまでおよそ十日――そういう予測をして俺達は動き出した。とはいえ、できることは少ない。

 で、やっぱりユスカの姿が無い。いないのだとしたら色々考えないといけないわけだが……最悪アベルと共に上手く立ち回っていくしかないか。


「とはいえ、できれば見つけ出したいところだな――」


 そこまで考えて、ふとなぜ彼を探すのか考えてみた。現状、皇帝になる資格を持つアベルの生存は確認できたので、彼と共に行動すればいいだけの話と考えることもできる。

 戦力……については、武器さえ手に入れば俺とソフィアで四竜侯爵を迎え撃つことが可能だ。となると、ユスカについては――


「……物語通り進めるという意味合いは、薄いのか?」


 薄情な言い方をすれば、彼がいなくとも構わないと考えることもできるが……。


「ルオン様」


 背後からソフィアの声。振り返ると同時、彼女から発言が。


「物語を知っているが故に、気にされることが多いと思います」

「……バレてたか」

「私達の戦いとは事情が異なる以上、仕方のない話でしょう」


 笑うソフィア。俺は頷き返し、口を開く。


「以前だって迷っていたのは明白だが……単純に俺達の力だけで問題は解決しないからな。魔王との戦いにおける南部侵攻みたいに、もっと分かり易かったらいいんだけど」

「……ああいった事態は、個人的に遠慮願いたいですけどね」


 ソフィアは苦笑。次いで俺に一つ質問。


「ルオン様、例えば四竜侯爵と一斉に戦うような状況には……なりませんよね?」

「物語の枠から外れているからなんとも言えないが、侯爵同士敵対とまではいかないが、仲はぶっちゃけて言うと良くない。共に行動するようなことにはならないはずだ。帝国側もその辺りはわかっているはずだし」

「ならいいのですが」


 ……まあ、最悪の事態というのは想定しておいた方がいいだろう。魔王との戦いだって俺の能力を見せた結果、対抗策を構築してみせた。そのようなことになってもおかしくない。

 今回においては最初の戦いから俺達が顔を出す必要がある。この時点で目立つことは間違いないので、できる限り考えておく必要はある……しかし予測するのにも限界がある。どうするかな。


「……まあ、とにかくやってみないとわからないか」


 やがて、俺はそう結論を出した。この状況からひっくり返すとなると結構な無茶をやらなければならない。その中で予測することは難しいが、できる限りやる。


 最優先としてはアベルを始めとした皇帝となる資格を持つ人物を守ること。その次はできる限り犠牲者を減らすことだ。


「そういえば、ルオン様。この町は四竜侯爵の領土内なんですよね」


 ふいにソフィアが話す。俺は即座に首肯。


「ああ。名はエクゾン=シュリード。皇帝直轄領に程近い町に屋敷を構えている」

「もし四竜侯爵が動くとなると、彼ですか」

「そういうことになるだろうな」

「現在その方はどこに?」

「屋敷については使い魔を放って観察しているんだが、いないんだよ」


 頭をかく。もし襲い掛かってくるとしたら当然エクゾンのはずだが、使い魔を屋敷へ飛ばしてみたが、姿を確認できていない。となると帝都もしくは城にいるんだろうけど、探し出せてはいない。というより、城の中にいるとしたらお手上げである。


「現在、エクゾンが行動している節はない。よって、侵攻するの様子を逐一観察しつつ、今後どうするかを考えていけば――」


 そう言った矢先だった。

 突如、使い魔の一つが報告を寄せる。それは、町の上空を旋回するもの。


 元々そこに使い魔を配置したのは、町の上空から人の流れを確認できないかと思ったためだ。上から見ることで反乱組織の人物について動向を探ることができるんじゃないか……そういう意図があって置いていた。


 結果、功を奏した。使い魔は――遠くの空から、竜の姿を見て取った。


「……あれは」

「ルオン様? どうし――」


 ソフィアが言い終えぬうちに、俺は走り出す。


「ルオン様!?」

「敵だ! リチャルと合流してくれ!」


 一方的に告げ、俺は走り出す。


『ルオン殿、どうした?』

「敵だ。竜が上空にいる」

『それは、我らの大陸にいるような野生の竜とは違うのか?』

「ああ。そもそもこの大陸には竜人以外の固有種は存在しない。もし竜の形をする存在がいたら……それは竜人が変化した姿だ」


 そう告げると共に町の外へ。まだ肉眼では確認できないが――ここで使い魔から新たな報告。町の中で人の流れが大きく変わった。どうやら反乱組織側も気付いたらしい。


「噂をすれば、というやつかな」


 皮肉めいた言葉と共に、俺は呟く。それにガルクは反応。


『その言い方だと、相手は――』

「ああ、そうだ」


 頷き、俺は声を出す。


「エクゾン……奴が直接、ここへ押し寄せてきた」


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