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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王との決戦

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魔王との攻防

 ソフィアが『スピリットワールド』の準備を始めたと同時、俺は動いた。挨拶代りにと『ホーリーランス』を放つ――仮に俺に対する対策を立てているとしたら、何か変化があってもおかしくないが――


『無駄だ』


 魔王は声を発しながらも動かず槍を受けた。光の粒子が拡散し、衝撃波が周囲に舞う。城外にいる魔物ならばあっさり粉砕する威力だったのだが……ダメージはやはり皆無。


 とはいえ、俺は一つ見逃さなかった。攻撃を受けた瞬間、魔王は僅かに身じろぎした。無効化はできるが魔法を受けた衝撃までは殺せない……もしその辺りの対策を立てていたら攻撃方法を改めなければならなかったのだが、問題なさそうだ。


『お前の攻撃など、通用しないことは理解できるだろう?』


 魔王は語り、それでいて迎え撃つ構えを見せる。右手に持つ大剣はいつでも繰り出せるようしっかりと握りしめられている。


 広範囲系の魔法だって魔王は使えるが、動きはない――というより、無駄な攻撃をしても俺が防ぎ、反撃とばかりにソフィア達の攻撃が入ると考えているのだろうか。どういう策にしろ、魔王が消極的なのは間違いない。さて、どう動くか。


「ガルク、魔王がどんな策を打つか推測できるか?」

『現時点では無理だな』


 問い掛けに対し、ガルクはすぐさま応じた。


『しかし、目の前にいる魔王は以前とその姿を変えていない……体に眠る魔力を含め』

「ということは……例えば斬撃を叩き込んで攻撃が跳ね返ってくる、などといった構造にはなっていないと?」

『おそらくな』


 ふむ……考えていると、後方から突如仲間が前に出た。


「魔王に攻撃が通用するか、確かめようじゃないか」


 ラディだった。魔力を高め、いつでも攻撃できる構えを示す。


「接近するのはさすがに危険。となれば、まずは遠距離から情報を集めるのが一番だろ」

『最初の相手はその魔法使いか?』


 魔王の問い掛け。それと同時、後方からオルディアがやってくる。


「俺も協力しよう」


 ……確かオルディアは二刀流の剣技で遠距離攻撃を持っている。ラディが動き出したのを見て、参加するつもりなのか。


「わかった。俺が魔王の動きを止める。その隙に攻撃を叩き込め」

「了解」

「いいだろう」


 ラディとオルディアが相次いで応じると同時、俺は魔力を高め魔法を放つ。光属性上級魔法の『グングニル』だったのだが――魔王は、剣を構えた。


『見事な力。だが、私には通用せん』


 切って捨てるような声と共に、大剣を薙ぐ。神槍と大剣が激突し――光の奔流が生まれる。

 魔王からすれば押し返そうという勢いだったかもしれないが、光は魔王へと吸い込まれる。だが当然、俺の魔法が通用するわけではない。


 とはいえ、衝撃を殺せない以上爆発的な魔力の奔流からは逃れられず、多少なりとも動きを止めるはず……そういう考えにより放った魔法であり、実際魔王は光の奥で動きを止めている。


 ――とはいえ、微かに疑問も生まれる。こちらには切り札があるというのは魔王も推測できているだろうし、それを警戒しているのはわかる。だが、それを差し引いても消極的ではないか。


 ただ、攻撃を止めるわけにはいかない。


「今だ!」


 俺が声を発する。同時、先んじてオルディアが動いた。二振りの剣をクロスさせ、地面を薙ぐことによって衝撃波を放つ――『退魔双流斬』という二刀技で、地面を走り『グングニル』の光の中で吸い込まれていく。


 直後、オルディアの衝撃波が爆散したか轟音が鳴り響いた。そこへ、ラディの魔法が発動する。


「食らえ、魔王――!」


 声と共に放ったのは『グングニル』と同じ光属性上級魔法に位置する『ティルヴィング』。対象者を取り囲むように光の剣が収束する魔法。連撃で一気にHPを削るタイプで、総合的な威力は魔法防御が低い相手なら『グングニル』以上になることもある。


 彼の魔法は魔王が立っていると思しき場所に収束を始める。魔法は最終的に球体のように対象者を取り囲み、光の爆発をもたらすのだが――刹那、オルディアの攻撃に続いて広間全体に爆音がとどろいた。


 凄まじい魔力……とはいえ、これで終わるなどと誰も思っていない。


「今ので決着がついたら、拍子抜け過ぎるな」


 ラディが呟く。俺は魔王の反撃が来てもいいように警戒するが……やがて光が消え、魔王の姿が。

 見た目に変化はない……が、光が直撃したのか多少ながら魔力が揺らいでいた。


『中々の魔法だな』


 どうやら、僅かながら効いたらしい。


『だが、滅ぼすには至らない』

「わかっているさ。けど、今の攻撃で俺の魔法だって通用することが証明された」


 ラディが発言すると同時に、ソフィアの魔力が室内を満たす。準備ができた。


『完成か』


 魔王が言う。視線は紛れもなくソフィアに向けられているのだろう。


『この城に踏み込んだ時から、その剣の力は理解できた。それと共にはっきりと確信した。王女が切り札なのだと』

「……止めに入らないんだな」


 俺が発言。魔王は何も言葉を発さない。


「そこまでわかっているなら、ソフィアの魔力収束を妨害するってやり方もあったはずだが」

『お前がそれを邪魔するのだろう?』


 決まりきったことを聞くな、とでも言いたげな様子を魔王は見せる。

 そしてやはり動かない……というより、明確にこちらが攻撃を仕掛けるように沈黙しているといったところか。


 つまり、魔王の策は俺達が攻撃――あるいは接近しないと効果を発揮しないのだと推測できる。魔法攻撃などを繰り出さないのは、俺が防ぐだろうという推測と同時に、仕込んだ策……つまりこちらの裏をかく魔法を維持しているから、という可能性も存在する。


 当然ながら、魔王が動かない限りどんな策なのかもわからない……リスクはあるが仕掛けるしかない。運が良ければ、魔王の策が発動しないまま撃破できるかもしれない。


 そうした考えを汲み取ったか……ソフィアもリスクはあれど攻めるべきだと判断したようで、足を前に出した。


「ルオン様」


 呼び掛け。俺はそれに頷いた。


「ああ……全力でフォローする」


 言葉と同時、ソフィアが走る。それに、エイナもまた追随した。シルヴィについては攻撃が通用しないためか、後衛であるラディ達の護衛に回る。

 さらにオルディアとフィリも駈ける――賢者の力を宿した面々が一挙に動く。だが魔王は動かない。待ち構えている。


 どういう腹積もりなのか……考える間にオルディアがソフィアを抜き去った。先陣を切るつもりか。


『愚かな』


 魔王はその声と共に大剣を薙ぐ。対するオルディアは……攻撃を受け、さらに受け流すことに成功する。


『ほう?』


 意外だったのか、声を上げる魔王――その間に、今度はエイナが踏み込んだ。さらに後方にいるラディが『ホーリーランス』を放った。


 オルディアに剣を繰り出したことで僅かながら隙が生じている。ここからさらに二人の攻撃を避けるよう動けばソフィアが剣を当てるだけの隙が――そう俺は思ったのだが、魔王はあえて斬撃と光の槍を、受けた。


 多少ダメージがあったとしても、ソフィアの攻撃に対応しなければ……そういう判断だったのだろう。

 だがラディの魔法には仕掛けがあった。次の瞬間、青い光が弾け、魔王の動きが僅かに鈍る。


 生じた明確な隙。そこへ、なだれ込むように俺とソフィアが到達する。


 精霊と協力し、力を結集した一撃。間違いなくこれは魔王に対し決定打となるものであり――刹那、魔王の気配が変化した。


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