王との合流
戦闘を始めてすぐ、できれば魔族に狙いを定め攻撃を――と思ったが、すぐさま魔族が動き出す。俺に関する情報は伝わっているのだろうと容易に推測できた。
「とはいえ、軍を率いる以上は逃げることも難しいだろ」
そう推察し、俺は周辺にいた魔物を『ルーンサイクロン』で吹き飛ばす。遠慮のいらない上級魔法による攻撃は、確実に魔物を消滅させていく。
このまま軍の中央付近を荒らし、魔王軍の動きを大きく鈍らせる……と考えた時、リチャルの魔物達が敵を勢いよく撃破を始める。彼の使役する面々は敵よりも強いらしい。
俺は続けざまに魔法で敵を倒しつつ……と、ここで上空の使い魔から報告が。ソフィア達が交戦している魔族達の動きが変わった。
「方針を切り替えたか……仕方ない。一度そちらに行くか」
俺は即座にソフィア達の所に向かおうとする。だがそこへ、魔物達が一斉に飛び掛かって来た。
「――邪魔だ」
言葉と共に『デュランダル』を発動し、一閃。攻撃しようとした者達をまとめて滅した。
次いで、移動を開始。目標は敵味方が入り乱れる戦場の中核。その中で使い魔を通し、ソフィア達に加えフィリ達冒険者へ魔物が突き進んでいるとわかる。
ソフィアは護衛のエイナやシルヴィと共に迎撃を行っている。どうも魔族側は彼女やフィリ達に戦力を集中させようとしている様子。その結果他の場所がやや手薄となっているが、魔物達の動きは変わらない。
「させるか――!」
どういう策なのかを理解し、声と共に魔法を使用。強引に敵の中を突破していく……俺が出現したことにより、やり方を完全に切り替えたようだ。魔族達も勝ち負けは度外視し、重要人物を撃破することに目的を絞った様子。
なら俺も相応の動きをするまで――途端、動きに気付いた魔物達が攻め寄せるが、当然俺は一蹴する。
このまま逆走し、合流しよう……そう決断し、道中にいる魔族達を倒しつつ戦場を駆け抜ける。
味方がいる近くに到達しようとした時、一番最初に目に入ったのはフィリ達だった。
「――おい!」
声を発しつつ近寄っていく。初めに気付いたのはフィリの近くにいたアルトだったのだが――たぶん問答無用で魔物を瞬殺している光景を見たからなのだろう。俺を見てぎょっとなった。
「お、おい!? 大丈夫なのか!?」
返答する前に、背後から魔物。振り返れば悪魔が同時に三体突撃する光景。
即座に『デュランダル』を発動し、横薙ぎを決める。結果、いとも容易く両断し、消滅に至った。
その後、フィリ達へ近づく。フィリの仲間やラディとネストル。さらにアルト達もいて、冒険者勢は連携して対処していたのがわかる。
「大丈夫か?」
俺が尋ねると、アルトとフィリが互いに顔を見合わせ――
「……ああ、まあな」
と、アルトが応じる。なんだか呆然として俺の後方に目を向けているのだが……あ、レスベイルが大剣を振り回し容赦なく魔物を滅しているからか。
「アルト達は問題ないみたいだな」
ひとまず怪我もない様子を見て、俺は言う。
ここで上空にいる使い魔が状況を報告。ソフィア達を狙っていた魔物や魔族達は、カナンの援護もあって撃破に成功。連携で上手く対処できたようだ。
「行く必要がなくなったかな?」
「おい、一体どういう状況――」
アルトが俺に問い掛けた時、魔物の雄叫びがこだました。使い魔によれば、リチャルが使役する魔物達が敵を押し返しているような状況。
そして、後続の魔物達が怒涛の如く押し寄せてくる。ふむ、まとめて消し飛ばすのは難しいか。それなら――
俺は詠唱を開始。次いで発動させたのは『エルデフォース』。地面が隆起し、前線にいた魔物達が串刺しとなる。
西部で見せた時は、まだ全力を出していない状態だった。しかし、今なら――
加減なしに放った魔法は、俺の真正面だけでなく左右にも広がり、魔物達の進路を大きく妨げる。魔法は出力を上げることで威力や攻撃範囲などを高めることができるわけだが……範囲を重視した結果、俺も内心驚くほど広範囲に発動した。
「……あ、しまった。街道も近いしまずかったかな」
「いや……そんなこと気にしている場合じゃないだろ」
呆然と声を上げたのはラディ。同じ魔法使いだからこそ、俺が放った魔法がどれほどの効力なのかを理解しているのだろう。
「――ルオン様!」
ここで、ソフィア達が俺の所へとやってくる。視線を転じると、護衛のエイナとシルヴィ、さらに傍にクウザやカナンまでもいた。
「ソフィアか。怪我は?」
「ありません。進路を塞いだのですか?」
「そのつもりだったんだけど、予想以上に範囲が大きくなった……カナン王。これ、大丈夫でしょうか?」
「無茶苦茶だな」
クウザが苦笑。それに俺が肩をすくめた後、カナンがこちらに質問した。
「さらに魔法を使用し、進路を塞ぐことは?」
その言葉に俺は即座に頷き、魔法を発動する。前線で味方と敵とを分断するくらいの勢い……一気に攻め込みたい魔王軍からすれば、迷惑極まりないだろう。
「ルオン殿、まだ戦えるか?」
「ええ。そのつもりで来ましたから」
カナンの問いに俺は深く頷いた。
「使い魔を用いて戦況は把握しています。どうしますか?」
「……ルオン殿は、何か案はあるのか?」
質問に――俺は、カナンと目を合わせる。
「できる限り、犠牲の少ない方向で動こうとは思っています」
「そうなると、貴殿に相当働いてもらう必要があるぞ」
「構いませんよ」
「わかった。ならば前線に立ち魔物の撃破を。私や騎士バルザードが援護する。ソフィア様も同行する」
「しかし、敵は――」
「私達を狙っている、だろう? そうなれば他の場所の被害が少なくなる」
自ら率先して動くことで、他を守るということなのか。
「それに、ルオン殿の力があれば対処はそう難しくない、だろ?」
王の言葉に俺は苦笑する……ただそのやり方が一番犠牲の少ないのは間違いない。
「わかりました。その方法で」
「よし。もしさらに敵の動きが変化したなら都度対応しよう。ならば――」
カナンは、フィリ達に目を向けた。
「あなた方は――」
「当然、ついて行きます」
フィリの返答。カナンは力強く頷くと、俺に述べた。
「ルオン殿の魔法で敵の進路はかなり限定された。直線的に襲い掛かってくるのではなく、迂回する必要がある……左右に展開している魔物達から考えると、進路変更するだけでも厄介だろう。これに乗じて一気に敵を叩く」
「わかりました。俺が前に出て魔物を倒し、他の面々が倒し損ねた敵を撃破、という感じでいいんですか?」
「すまないな、ルオン殿」
「俺は平気ですし、王の作戦に同意しますよ」
返事をした後、ソフィアを見る。連戦続きなのを察してか、大丈夫なのかと問い掛けたい雰囲気が見て取れたが、何も言わなかった。
「では、早速いきましょう。他の軍は?」
「防戦にするよう指示を出している」
「わかりました」
「――その様子だと、王様なんかは事情を知っているのか?」
アルトの質問。目を向けると、どこか憮然顔。
「なんだか取り残された気分なんだが」
「……話は、戦いが終わった後に」
「きちんと説明はあるんだろうな」
……話す範囲をどこまで広げるか。まあ魔王に俺の実力が露見している以上、誰に話しても問題はなさそうだけど。
「その辺りのことを含め、戦いが終わった後にしよう」
俺はそう応じ、前線に目を移す。レスベイルが周囲の魔物を倒し尽くし、大剣を握り仁王立ちしている光景が目に入った。
「……それじゃあ、行くとするか」
俺は小さく声を発した後、駆け出す。それに続き、ソフィアやカナン。フィリを始めとした冒険者勢が、呼応するように動き出した。




