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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王との決戦

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主力部隊

 俺の声に、レスベイルは即応する。こちらへ迷わず向かってくる空の悪魔に対し、大剣を振りかぶるように構え――悪魔が間合いに入った瞬間、豪快に一閃した。


 横薙ぎが平然と悪魔の体を両断する。しかも単なる斬撃ではなく、俺が槍を薙いだ時発した風の刃が生じ、後続の悪魔も一気に消し飛ばす。


『うむ、戦力として申し分ないな』


 ガルクが感想を述べる。風の刃が届かなかった悪魔に対しては俺が『ホーリーランス』を撃ち込んでカバーに入る。

 これで迎撃に成功……今度は地上から接近してくる魔物を槍で吹き飛ばす。


 魔法や技を駆使しつつ、最初に襲い掛かって来た部隊についてはほぼ壊滅。後続の軍が迫ってくるが、まだ多少距離がある。


『動きとしては、まだ本気を出しているようには見えんな』


 ふいにガルクが発言。理由を問おうとした時、解説が入る。


『まだ我らに策があると考え、地中を調べているのも本腰を入れない理由の一つみたいだが……自分達が攻め滅ぼされるとは露程も思っていないようだ。油断だろうか?』

「まあ、魔族からすれば相手は人間一人だ。結構な力を持っているというのは理解できたはずだが、いずれ体力も魔力も尽きると思っているんだろ」


 とはいえ、隊を失うのは痛手のはず。手を変えてくる可能性は十分あるが……考える間にも敵が近づく。まだ全軍で攻撃を仕掛けない以上、こっちとしては数を減らす好機。

 俺は再度氷の雨を降らせ、魔物を撃破していく。ついでに地形をさらに変え、進路を塞ぐ。


 ここで、上空にいる使い魔から報告が。さらに軍を動かすらしい。しかもそれは、シェルダットがいる後方にいる部隊。


「お、精鋭みたいだな」


 どうやら後方に主力を控えさせていたらしい。オーガを始めとする耐久力の高い魔物を始め、攻撃力の高い悪魔の群れなど、殺傷能力においては明らかに今までよりも上の部隊。


「さすがにこのままではまずいと思ったのかな?」

『かもしれんな』


 ガルクと会話をする間も槍と魔法で魔物を撃破する――と、ここで俺は新たな魔族の姿を捉えた。


「そこまでにしてもらうぞ」


 黒い皮膚と鎧を身にまとう魔族。顔も目だけは真紅で見て取れるが、口も鼻も存在していない。

 その魔族は魔力を噴出し威嚇しながら俺へと向かう――『威嚇をしている』という時点で俺の能力が本質的に理解できていない証。とはいえ油断せず槍を構える。


 刹那、魔族は飛ぶように駆けた。シェルダットのような転移能力はないようだが、一瞬で間合いを詰めてくる。

 そいつの武器は拳らしく、右手を振りかぶり――次の瞬間、その拳が突如膨れ上がった。


『巨大化させて威力を高める能力か』


 ガルクの冷静な声が頭の中に響く。さて、俺はどうすべきか。


 真正面から受け切ることもおそらくできるが――ここは回避を選択。横へ素早く逃れた瞬間、自分が立っていた場所に拳が撃ち込まれた。

 地響きすら生じる一撃。しかし攻撃は外れ魔族は俺へ視線を移し――こちらは反撃を行う。


 魔導技下級技の『疾風槍』――風に包みこまれた刺突は平然と魔族の防御を破り、鎖骨辺りを刺し貫く。そればかりではなく風が炸裂し、胸部に大穴を開けた。


「が、あ――!」


 声を発し、魔族が崩れ落ちる。その間に俺はさらなる魔法を使用し、近づこうとしている魔物達を撃破する。


 繰り返し『エルデフォース』を使用したことで、ずいぶんと地形がいびつなものになっている。ここに来て迂回することも段々難しくなっており、確実に進軍が遅くなっている。


 先ほど槍を受けた魔族が消滅する。魔物は暴走する気配を見せず、地形の変わった戦場を無理矢理突破して俺へ近づいてくる。


「――風よ」


 そんな相手に俺は風属性中級魔法『ドラゴンクロー』で応じた。少々アレンジを加えており、普通の魔法使いが使用するものと比べ攻撃範囲が広い。

 魔物はそれに触れ――あっさりと消滅。だが後続からどんどんやってくる。物量で押し潰す気なのか。


「なら……そうだな」


 どんな魔法を使うか決め、詠唱を始める。その間に空から悪魔やグリフォンが近づき、地上ではコボルトなどの兵卒が襲い掛かってくる。


「――滅べ」


 だが俺の方が早い――使用したのは風属性上級魔法『ルーンサイクロン』。本来は地面を起点として地上から空へ伸びる竜巻を引き起こす魔法なのだが、今回は応用版。横へ向け放った。


 その結果、俺の真正面に豪風が生まれる。竜巻を構成する風一つ一つが全て強靭な刃であり、悪魔や地上の魔物は避ける暇もなく魔法を受け次々と消滅していく。

 風によりさらに地形が乱れ、魔物達の動きが一層鈍くなる――それでも魔法は続き、後続から迫ろうとしていた悪魔全てを等しく滅することに成功した。


「……ここまでやったら、さすがに警戒されるかな?」


 使い魔を用い状況を探る……と、ここで俺達へ迫ろうとしていた第二部隊が後退を始めた。

 その代わりに近づいてくるのは魔族側の主力部隊……下手な戦力では対応できないという判断らしい。


「さて、そろそろ本腰入れてきそうだな」

『その可能性は高そうだが――』


 ガルクの頭の声が響いた矢先、隆起した地面に降り立つ魔族が。


「ずいぶんとまあ、荒らしてくれたね」


 シェルダットの姿。俺は黙って相手を見据えていると、彼は続けた。


「うん、どうやら前線にいるような魔物や魔族で対応できないことはわかった」

「今度はお前が相手してくれるのか?」

「そうしたいんだけど、一応僕は総司令官だからね。申し訳ないが、主力部隊で我慢してくれ」


 ……ここでシェルダットを倒すという選択肢もあるが、総司令官ということは下手に倒せば魔物達が暴走する危険性も。四方にバラバラになってしまうと撃破も大変だし、まだ倒すべきじゃないか。


「ま、主力が来るんだったら待っているよ」

「余裕だね。それがどこまで続くかな」


 笑みを見せるシェルダット。余裕の表情は崩していないが、内心はどう思っているんだろうな。俺の能力を本質的に理解していればもっと動きを変えると思うけど――


 上空にいる使い魔が、いよいよオーガを始めとした主力が近づいてくると警告する。ただ、障害物の多くなった戦場は、図体のデカイ魔物は通れない。どうするのか――と思っていたら、岩を砕く音が聞こえた。


 どうやら魔物達は障害物を排除し始めた。破壊して無理矢理道を作るのか。力があるからこそできる所業だな。


「彼らは、後詰めの部隊として用意したものだ」


 シェルダットがさらに語り出す。


「本来、人間の軍勢相手にここまで出す必要はないと思うんだけどね……ま、こっちとしても人間達にきっちり示さないといけないからね。僕らに反抗することがどういう意味を持つのか」


 ――その言葉の瞬間、俺は思わず笑ってしまった。途端、シェルダットは訝しげな表情を見せる。


「どうしたんだい?」

「――いや、なんでもない」


 そう答え、俺はオーガ達に目を向ける。力任せの軍勢……確かにこういう方が人間側にとって脅威だろう。


「……こうした部隊が前に出たということは、それなりに評価されたと思っていいのか?」

「ああ、そういうことだよ。僕らに刃向ったこと、後悔させてあげるよ」

「そうか」


 返事をした後、槍を構える。同時――先陣を切るように、三メートルはあろうかというオーガが俺へ向け突撃してきた。


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