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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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作戦開始

 ガルク達の話し合い及び作業は朝まで続いた。ソフィア達は眠り、俺は使い魔による状況確認を行う。


『――うむ、まとまったな。では、これで仕込みは完了だ』


 最後にガルクがまとめ、ようやく話が終わる。既に討伐隊を観察する使い魔からは、動き出していると報告がある。


「ガルク、いけるか?」

『魔法陣の対策についてはどうにかな』


 精霊達が色々と動き回っていたので、対策というのはそれかな。


「ガルク、今回実験をするということだが、それが魔王の魔法に対する手法として確立できるのか?」

『魔族と魔王では根本的に性質が違うという考えもあるとは思うが、構築した手法がきちんと起動するかということを含めての実験だ。加え、これ以降も検証はする。そう心配する必要はないぞ』

「わかったよ……ちなみにだが――」

『無論、我らが介入していることはわからんようにはするさ』


 俺の言葉を予想するようにガルクはいう。


『魔法陣が土地の魔力と反発しあい、自然消滅したように装う』

「それなら大丈夫かな……で、俺達はどう動けば?」

『罠に関する対策はこちらで行ったため、あとは討伐隊の援護だが……洞窟の中もある程度把握できている。説明するか?』

「ああ、頼むよ」


 ――話によると、洞窟は結構奥行きがあるらしい。討伐隊が来た時点で魔族は顔を出すのか、それとも罠に頼り奥に潜んだままなのかは今のところわからない。


「ガルク、魔物の詳細はわかるのか? 外にいる魔物は俺にも確認できたけど」


 さらに情報交換を行う。魔族と共にいる魔物は、レベル的にソフィア達なら十分対応できる。


『魔物の数を考慮すると、ルオン殿達でも応じられる気がするぞ』

「俺達だけでも、か……これについては相談しないといけないな」


 そこまで言った時、仲間達が起床。ガルク達の対策が終了し、なおかつ俺達だけで戦いがどうにかなるとまで説明した後、クウザは言った。


「あとは、私達が討伐隊とどう接するかが問題か」

「ああ。討伐隊の実力を全部把握しているわけじゃないから、今回戦う魔族や魔物に応じられるのかはわからない。アレーテさんくらいは、対抗できそうな気がするけど……どうする?」

「私が決めていいのか?」

「討伐隊と一番関わりがあるのはクウザだからな。罠の対策をガルク達に任せたことである程度融通がきくようになっている。どうするかは、任せるよ」

「なら、そうだな……まず、討伐隊にいる内通者を探し出して成敗しないとまずいだろう。とはいえ彼以外にも内通者がいる可能性を考慮すると――」

『ああ、それについてだが一つ意見がある』


 ガルクが突如話に割り込んだ。


『討伐隊を罠にはめるために魔法陣を仕込んでいるわけだが、このままだと当然マリオン自身も巻き込まれる。そうならないようにするためのやり方は二通りあって、予め魔法陣の攻撃範囲を察し発動時点で食らわないようにするか、あるいは特殊な防具などを用いて魔法陣の効果を受けないようにする』

「魔法を避けるというのは難しいだろうな」


 俺はガルクの言葉を頭の中で整理しつつ、述べる。


「マリオンという人物はアレーテさんと同様隊長なんだろ? となれば討伐隊でも重要な位置にいるはずだ。ただの兵士なら自分の立ち位置を変えるのはそう難しくないと思うけど、隊長はそうもいかないだろ」

『ならば、魔法の道具などを所持し攻撃を受けないようになっているか、だな。魔族が構成した魔法陣だ。その影響を受けないようするための道具などは容易に作成できるだろう』

「……ガルク、近くに行けば道具を所持しているか確認することは可能か?」

『おそらくは』

「わかった。なら――」


 俺は、仲間達に告げる。


「俺が討伐隊の内通者を探してみる。俺一人なら魔法を使って気配を殺し近づくことができるから。もし状況がわかれば、報告するよ」






 というわけで、俺は一人で気配を消しつつ討伐隊が行軍する場所へ向かう。


「とはいえ、気配を消す魔法なんて討伐隊も警戒しているから、あんまり近づくのも危ないかな?」

「おそらく大丈夫だと思いますよ」


 レーフィンの声。俺が仲間に提案した後、彼女も同行すると言い出したため、こうして一緒に行動している。


「ルオン様が使用するその魔法は、精霊でも勘付かれにくいほどのものになっていますから」

「そっか。ま、できる限り注意しよう」


 返答した時、俺の視界に討伐隊が見えた。先頭は見知らぬ騎士二人だが、その後ろにアレーテとマリオンがいる。

「……ガルク、レーフィン。この距離でマリオンから怪しい気配は感じられるか?」

「私は感じません」

『我もだ……討伐隊の面々は常日頃魔力と関わる者達である以上、魔族側も露見せぬよう道具を作ったのかもしれん』


 道具があるとしても、ガルクやレーフィンも接近しなければわからないくらいの物……精霊の女王や分身とはいえ神霊すらも感じ取れないほどとなると、相当精巧に作られているのか?


『……む?』


 ふいにガルクが声を発する。その間に討伐隊は俺達に近づいてくるわけだが……とりあえず、こっちのことはバレていないようだ。


「なるほど、そういうことですか」


 レーフィンが言う。先ほどガルクが反応した以上、双方怪しい人物に目星をつけることができたのだろう。

 討伐隊が茂みに隠れる俺の横を通り過ぎる。俺としてはマリオンすら怪しい気配を感じ取ることはできないのだが――


『ルオン殿、結論から言おう』


 ガルクから声が。


『読み通り、何かしら道具を所持しているのは間違いない。もっともそれは罠に対するものか、他の用途があるのかは判断できないな』

「……で、肝心の人物は?」

『マリオンという人物と、もう一人先頭を歩いていた騎士の片方が所持している』

「私も同じように感じました」


 レーフィンとガルクが言うのだから間違いないだろう。つまり――


「騎士と魔法使い、それぞれに内通者を用意したということか」

『そのようだな。他に怪しい人物はいなかった』

「道具を持っていないから確実にセーフというわけじゃないと思うけど……ま、ひとまず狙うべき相手は見つかった。仲間達と話をして対応しよう」

『どうする気だ?』

「こればっかりは、相手の出方次第だな。とはいえ、裏切り者がいる場所から考えると、ある程度想像もつく……ひとまず戻って、仲間達と最後の打ち合わせをしようか」


 そう言った後、俺は元来た道を逆走し仲間達のところへ戻った。


「――というわけで、マリオンともう一人の騎士をどうにかするべく俺達は動くことにする」


 ソフィア達へ最後の段取りを説明する。


「魔族の罠に対する策はガルク達が遂行した。そして裏切り者がどういう動きをするか……ソフィア達も予想できるはず」

「アレーテなど指揮する人間を、倒すということか」


 クウザが険しい顔で言及。俺は「そうだ」と返事をして頷いた。


「魔族の狙いは討伐隊の壊滅。つまり魔物などによって逃げられないようにした上で、マリオン達が背後からでもアレーテさん達を狙うと」

「とすると、ルオンは近くで動向を観察するのか?」


 シルヴィが問う。俺はそれに再度頷いた。


「ああ……俺達の存在はまだバレていないみたいだから、隠れて様子を窺うことにする。それで、ソフィア達だが――」

「それについては、私に考えがある」


 クウザが手を上げた。


「レーフィンさん達と協議し、動くということでいいか?」

「わかった。ソフィアやシルヴィはクウザと共に行動してくれ」


「いいだろう」

「わかりました」


 二人の返事を聞いた後――俺は、改めて告げた。


「作戦開始というわけだが――正直、状況によって二転三転するのは間違いない。これは俺も流れを知らない戦いだからアドバイスもできないが……ソフィア達なら、自分達で判断できるはず。頼むぞ」


 一同頷き――作戦が、始まった。


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