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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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神霊と精霊の策

 仲間達が休んで数時間後、とうとう俺は魔族の拠点を突き止めることに成功する。

 場所は山の岸壁――地上に存在する洞窟。森に囲まれ周囲から観察することは難しく、見つかり辛い。


「こんなところ、国の人間はよく見つけたな……と、待てよ」


 魔族自身が洞窟にいるという情報をわざと流し、討伐隊を迎え撃つ――それ自体が計略だという可能性も。


「最初から仕組まれていた可能性もあるな……ともかく、移動だ」


 ソフィア達には悪いけど……俺は仲間達を起こし、一路魔族の拠点近くへ移動することになった。






 やや迂回して進んだ結果、離れた場所ではあるが、位置的に森の横手に到着した。洞窟を中心にするなら俺達は西側にいる。討伐隊はおそらく南側から森を突っ切るように攻め込むことになるはずだ。


 周囲は森林地帯らしく、身を隠す場所はいくらでもあった。この場所に向かう途中ガルクやレーフィンが逐次魔族の気配を確認していたが、ついぞ確認できなかったところを見ると、洞窟に引きこもっているのは間違いなさそうだった。


「討伐隊も使い魔を用いて偵察しているはず……討伐隊の内通者と連絡をとる存在以外が洞窟内に潜伏しているのは、できるだけ情報を渡さないためだろうな」


 クウザが言う。彼の言う通り俺のものとは違う使い魔の存在も確認できた。そっちについてもレーフィンが事前に発見したため見つからないよう動けた。


『森の中には魔物が満ちている。これらは罠ではなく討伐隊を迎撃するためのものだろう』


 俺の右肩に乗るガルクが発言。なら――


「ガルク、確認だけど俺達は気付かれていないな?」

『ああ。こちらを警戒している様子はない』

「この場所から、魔物の配置や、何か怪しいところは確認できるか?」

『うむ、それについてだが……分身であっても感じられる罠が存在する』

「罠?」

『ああ。だが詳細は――』


 ガルクはソフィアへ視線を投げる。


『ノームに任せた方がいいだろう。地に眠る魔力の特性を考えれば、この場所で解析もできるはずだ』

「……ロクト」


 ソフィアの言葉と共にノームのロクトが姿を現した。


『ロクト、詳細はわかるか?』

「少々調べなければなりませんが……魔族に勘付かれる可能性も」

『それについては我がフォローしよう』


 ガルクが明言。よって神霊と精霊が手を組み、魔族の住処を把握するために動き出す。

 ついでにレーフィンもそれに参加。加え面白そうだとでも思ったのか、アマリアまで出てきた。

『うむ、ロクトの力を利用すれば、洞窟内部も把握できそうだな』

「はい。洞窟の外にいるのはレーフィン様とガルク様で解明できそうですね」

「こうして連携することはあまりありませんでしたが、やり方次第で敵を丸裸にできるというのは非常に良いです」


 会話を重ねる精霊達――というか、精霊の中でも高位に位置する精霊に加え、分身とはいえ神霊がいる。できて当然とすら思える。


「例えば、魔族の居城について把握することはできるのかい?」


 ふいにシルヴィが問い掛けた。それに応じたのは、アマリア。


「今回は敵が潜伏しているのが自然洞窟であること。さらに大地へ上手く干渉できるから解析できるという面が強いわね。同じことを魔族の拠点でやろうとしても、難しいんじゃないかしら」

「それに、露見する可能性もありますし」


 レーフィンがアマリアに続いて述べる。


「今回のケースはこちらの動きが露見しない手法が構築できるからこそ、と考えてください。解析はできても露見してしまえば、魔族に襲撃され危険です」

「今回は都合が良かったということだな。ま、頼り切るのもまずいだろうし、それでいいか」


 俺が応じた時、ロクトが「できました」と声を発した。


「どうやら敵は、森全体に魔法を構築しているようです」

「魔法? それは侵入してきた人間を撃破するって魔法か?」


 俺の質問に、ロクトは小さく頷いた。


「しかし森を焦土と化すような魔法の場合は、さすがに討伐隊の方々も気付くはずです。今回は地中深くに魔法陣を形成し、魔物などが瘴気を発することで巧妙に隠されている。効果についてはさすがにわかりませんが、動きを止めるか多少なりとも手傷を負わせるような魔法ではないかと」

「討伐隊が来ることを見越して準備していたということか。魔物が魔法陣を隠すために配置されているとしたら、そちらが本命だろうな」

「どうしますか?」


 ロクトが問う。俺はガルクに視線を送り、


「魔法陣……魔族が形成したものだとすると、さすがに人間の俺達で対処は難しいな」

『……うむ、ここらで実証実験を行ってもいいかもしれん』


 ガルクが唐突に言い出す。実証実験?


「何をするつもりだ?」

『説明をする前に……ロクト、魔族が放つ魔力についてはわかるか?』

「五大魔族と呼ばれる存在と比べれば非常に簡単ですよ。ましてや今回は魔族単独による魔法陣。いけるかと」


 ロクトはガルクが何をするのかわかっているらしい。疑問を口にしようとした時、ガルクから解説が入った。


『魔王が放つであろう強大な魔法……それの対抗策だが、理論通り起こるかどうか検証しなければならなかった。無論、実験などは精霊達と協力してやるつもりだったが、一度は魔族の放つ魔力に通用するか確認をしたかった』

「つまり、今からやるのは魔王に対する策がきちんと発動するか、ということか?」

『そうだ……魔王の魔法に対するやり方だが、いくつかの手段の複合だ』


 ――魔王に関することなので、俺を含めた仲間達は固唾を飲んで聞いている。


『まず大地に眠る魔力との連携をさせないようにする。魔王の魔法はルオン殿の説明によれば大地に侵食した五大魔族の魔力を利用して発動する。ならば魔王がそれらの魔力を引き上げることができなければ魔法は発動せず、防ぐことができるという考えだ』

「ただ、この手法だけに頼るのは重大なリスクがあります」


 レーフィンがガルクに続いて発言する。


「魔王の力に押しきられてしまうかもしれません……もしそうなったら、大陸は崩壊します」

『そういうことだ。だからこそ、魔法発動を阻害しつつ魔力を相殺し威力を抑える』

「それは主に私達の役目ですね」


 補足するようにレーフィンが述べた後、ガルクは続ける。


『相殺、と一口に言ってもやり方は様々だ。例えば大地に眠る五大魔族の力に神霊や精霊の力を埋め込んでおき、魔法が発動した際に魔力同士で喧嘩させる』

「喧嘩……?」

『精霊達の魔力を用いて魔族の魔力を操作する。魔力量が多いため全てを操ることはできないが、寝返った魔力とそうでないものとを衝突させ威力を殺すというわけだ』

「他にも、色々な手法があります……一つのやり方で完全に対応できるというわけではないため、ガルク様が仰ったように複合策を用いています」


 ガルクに次いで語ったレーフィンは、ここで難しい顔をする。


「どれほどの魔力が眠っているかは分析しているので、きちんと策が発動すれば理論的には抑えられると思いますが……いくつもの手段を複合しているため、それら全てが想定通りに機能するか、疑問もありました」

『だからこそ、ここで魔族相手に一度検証しようというわけだ』

 ガルクは言うと、俺達を一瞥した。

『無論、罠が発動しないよう他にも魔法を封じる策は立てておく。ここは任せてもらえないか?』


 ――神霊や精霊が言う以上、俺達としては頷く以外にない。ただ俺には疑問が。


「罠に関する対策はガルク達に任せる……けど、俺達はどう動けば?」

『それらも含めて、考える』


 つまり今回、作戦はガルク達が立案するということか――果たしてどうなるのか。


「よろしくお願いします」


 レーフィンも言う。結果として俺達は了承し……ひとまず休むことになった。


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